第二十七話 「この世界の魔術師の定義」
堕ちたかな?
遠乃に落雷が落ちる直前だが、この世界の魔術師の定義について説明する。
この世界の魔術師は弱い。
なぜなら、魔術を使用する際に詠唱が発生する為である。
以前ひでが使用していた土属性汎用呪文程度であれば
魔術名のみで発生するが、戦闘において敵に致命傷をあたえるような魔術は、
セリフ3つ分ぐらいの詠唱が必要である。
また、魔術の属性は生まれた時にすでに決定しており、その属性以外は使用できない。
結果、得手不得手が絶対に存在してしまうことも魔術師が弱いと言われる要因となっている。
だが、キングボスと遠乃はそこから一歩進んだ境地にいた。
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落雷が遠乃に向かって落ちた。
冷蔵庫を閉めた時のような大破音と共に地面を抉った時のような砂埃が舞った。
「堕ちたな」
キングボスはそう呟いた。
事前に仕込んでおいた雷雲を利用した落雷。
雷雲の制御と共に、標的に確実に落雷させる超技術。
この技術によってボスの中のボスにまでのし上がった男。
しかし、砂埃が薄くなってきた時、キングボスは驚愕した。
遠乃がニコニコしながら普通に立っていた。
「お、堕ちろ!!」
ありえない事態に驚きを隠せないキングボスはさらに落雷を遠乃に向かって落とした。
そして目の当たりにした。遠乃の超技術。
遠乃は小指を天井へ向け、自分の頭上に水球を発生させた。
水球で落雷を受け止めた瞬間、弧を描くように地面へアースし、落雷を無傷でいなしていた。
砂埃と思われたものはその際に発生した水蒸気のようだ。
「詠唱なしで落雷させるってことは落雷自体は魔術じゃないんですね?」
遠乃はキングボスに問いかけた。
詠唱無しで魔術を使用することは出来ない。
『堕ちろ』が魔術名の可能性は微レ存だが、それにしては威力が高すぎる。
従って、雷雲が魔術であり、雷雲から自然発生する落雷の落下地点を操作していると仮定し、
よって、キングボスの属性は【雷】ではなく【水】であると遠乃は判断した。
また、キングボスも遠乃が落雷を防いだ水球を使用した時点で【水】属性の使い手と判断した。
「ということは雲が邪魔ですね。温度をあげてあげればいいんでしたっけ?」
遠乃はポツリと呟くと、詠唱を始めた。
「見たければ、見せることはやぶさかではない。
天も地も声も震えよ。そして、身溶け、黄泉溶けよ」
「極大焼却呪文・ミロヨ=ミロヨ!」
遠乃は火属性の魔術を使用し、雷雲をかき消した。
この事実にキングボスは驚愕した。
それはそうであろう。水属性と火属性の2属性を使用したのだ。
通常ならばありえない。魔術師の根底を覆す行為だ。
「うっそだろ!お前!!」
その後もキングボスは水属性の魔術を駆使し、遠乃へ攻撃を繰り返した。
しかし、同じ水属性で相殺され、火によって蒸発され、
さらには土属性で精製した壁に防がれる等、ことごとく無効化された。
さらにキングボスが驚愕したのは詠唱から魔術発生までのタイムラグが、
あまりにも不可解だった。まるで詠唱していないかのように。
「あ、言い忘れてましたけど、私 詠唱をストックできるんです」
遠乃は両手の指、十指に一つずつ詠唱後の魔術をストックできるという、
生まれもってのチート能力をもっていた。
そして全ての属性も使用することが出来るという、クソ舐めプチート娘だった。
戦闘中にひたすら詠唱をストックしながら連続で極大魔術を使用する戦闘方法。
その際に発生する詠唱の声と魔術音が、
アアン↑アンッアン↓アンアンッアアン↑アアン↑アンッアンアアン↓
アアン↑アンッアン↑アンアンッアアン↑ア↑オッ↓ア↑オッ↓アッ↑オッ↓(高音)
と、あまりに幻想的な音だった。
魔術師で在りながら、勇者、戦士、剣士と互角以上で争える存在。
その為、遠乃についた二つ名が、 『世界レベル』。
「お前ぇ、マジシャンみてぇだな」
圧倒的な魔術師としての差にキングボスは冷や汗を流しながらそう呟いた。
それに対し遠乃は威風堂々とした立ち姿で言い返した。
「手品師じゃありません。魔術師です」
世界レベルはニコニコしながらそういった。
わたしはまてない




