第二十一話「サッー!(血の気)」
あ ら す じ
やじうせんぱいの さくりゃくで きむらーと にくまるが なかまわれ!
うちが精製し、肉丸へ渡した憤怒剣 イーラ……。
怒りをそのまま切れ味と強度に変える剣だ。
しかしデメリットとして、強制的にバーサク状態になってしまう。
これを絶賛激おこ中だった肉丸に渡し、あわよくばキム・ラーと削り合いしてもらって、
漁夫の利!!という魂胆だったんだけど……。
あれ?肉丸強くね??
うちの予想では多少苦戦しつつもキム・ラーが普通に勝つイメージだったんだけど…。
鮮やかな剣線を描く肉丸の武器術。その剣捌きには美しささえ感じる。
キム・ラーは一手目に武器破壊を目論んでいたようだが、
怒り強化されている憤怒剣は折れなかったようだ。
「シンデホシイ」
「えっ何」
「スグニ、シンデホシイ」
「死なないですよ。なんで死ぬ必要があるんですか」
防戦一方になりつつあるキム・ラー。
そのうえ、避けきれない攻撃も数十発に一度程あるようだ。
このままいけば消耗戦でキム・ラーは敗北するだろう。うちの作戦完璧じゃね?
そう思っていた矢先、キム・ラーがバランスを崩し倒れた。
肉丸は倒れたキム・ラーの太ももに憤怒剣を突きつけていた。
「あっぐぅア!」
「動けないようにするだけ。殺さないでそのままにしといてあげます」
「えっ(困惑)」
「動けない君の前でヤ・ジウさんをめちゃめちゃに犯してあげますよ」
「やめてくれよ……」
肉丸はキム・ラーを追い詰めた段階でにちゃっとした笑みを張り付かせながら、そう告げた。
いやいやいやいや、うちも言っていい?やめてくれよ…。
え?うん。やばいね。遠乃風に言うなら、まーずいですよ!!
このままじゃ本当に犯されちゃう。ヤバイヤバイ。
この瞬間に悪魔的な閃きっ……!
うちの残り16本の剣の中に逆転の兆しっ……!(3回目)
ただ今の肉丸はかなりヤバイ。作戦が成功するかどうかはうちの魅力次第だな。
てか、うち以外のやつが使ったらうちの精製武器ってこんなに強いんかよ…。
そもそも無い自信が余計なくなるわ。
うちはあくまで怯えるフリをする。とりあえず精製を成功させねば。
「やぁ、あ、ちょっと!まってくださいよぉ!」
腰を抜かしたようにへたり込み、後ずさりをしながら、にじり寄る肉丸に向かって叫ぶ。
これは演技。びびってないよ。ほんとだよ。
怯えた表情を保ちつつ、精製作業に入る。数秒のうちに剣の精製は完了した。
「よくないよ!来るなよ!!(逆114514)」
うちは新たに精製した剣を肉丸へと投げつける。
肉丸はその図体からは考えられないほど機敏な動作でそれをかわした。
後ずさりを続けた結果、壁際へ追い詰められた。
うちの背中は、壁の冷たさと冷や汗が相まって、風呂上りのビールのように冷えていく。
「冷や汗が出てますよ。冷や汗が」
眼前まで迫った肉丸がまるで先輩がエロビデオに出演していた時の様に、
確認するような、それでいて問い詰めるような声で言う。
冷や汗止まらない。てか肉丸君近すぎ。なんかくさい(特大ブーメラン)
そう思った瞬間、肉丸がうちのおでこの冷や汗を吸い取るように舐めた。
「ひぃう!慌てんな!慌てんなよ!!」
サッー!(迫真)っと血の気が引いていく。
アイスティーに不思議な粉を入れるときのような効果音と共に。
「な?な?慌てんなって!」
うちは必死に「ひっ、ひっ」となる喉を押さえながら叫ぶ。
逆転劇までもう数秒だ。うちは耐えられる。耐えろ。耐えるんだ。
ペロペロが侵攻を深めて来ている中。その時がきた。
肉丸が横薙ぎに錐揉みしながら吹っ飛ぶ。
そこにはうちがさっき肉丸に向かって投げ、避けられた、
『嫉妬剣 インヴィディア』を持ったキム・ラーが立っていた。
キム・ラーは肉丸が着地したのを確認すると、嫉妬剣の切っ先を肉丸へ向けた。
「よぉ、ゲスの兄ちゃん。もう終わりか?」
キム・ラーはクッソイケメンなポージングで肉丸を挑発した。
肉丸は憤怒剣を拾い、構えた。
お互いがうちの精製剣を持った状態。
再び、肉丸とキム・ラーの戦いが始まる……。
サッー!を使いたかっただけ。後悔はしていない。




