まずは知識から
美しいレースがあしらわれた夜着を身に着け、自分の姿を確認する。布は薄く…少し動けばヒラリと揺れる。
「とても可愛らしい夜着なのね。」
「特別な夜でございますから。ストールも用意いたしましょう」
受け取ったストールを身につけると、それは先ほど見た聖女様の衣装のように美しい装いとなった。
「私に…このような装いが似合うかしら」
心配になり、侍女に聞くと満面の笑みで「とてもお似合いでございます」と迷いのない返事をくれる。私はその侍女から勇気を貰い寝室のベッドの上で彼の訪れを待った。
コンコンッ
暫くすると部屋にアルト様がやって来た。
静かに開いたその扉から、ゆっくり顔を覗かせる彼。その様子は部屋にオバケがいないか確認する子供のようで少し可愛らしい。しかしそのお姿は上質なガウンに身をつつみ大人びた雰囲気があった。
「今の装いもとてもお似合いですね、アルト様」
「ありがとうございます…ノーラ様も、かわ…美しいです」
アルト様はコホンと咳払いをする。
「ノーラ様…まずは説明するとお約束しましたから、医学書通りに話しますね。」
「はい」
医学書を手に隣へやってきた彼にハッキリ返事をすると、アルト様はふにゃりと笑った。
「なんか…雰囲気が…」
「学びにきていますから」
両手に力を込めて、ぎゅっと握ると彼の腕に包まれた。それはとても温かくて安心できるのに、ドキドキとしてしまい居心地が悪い。でも、幸せ。
そう考えていると耳元で彼が言う。
「学びに来ているのはいい姿勢ですが…これは実践なんすよねぇ。互いに学びながら進める事になりますが」
「それは、とても私達らしいです」
そうしてベッドの上に優しく寝かされると、アルト様が上から覆いかぶさるような体勢を取る。
視線が絡み合い、逃げ場のない沈黙が流れる。その、ほんの少しの沈黙にも照れてしまい、つい笑ってしまう。
「ふふっ、照れますね」
「俺は……もう、限界かもしれません。自分に、こんな幸せな日が来るなんて……」
彼からの返事は、何もごまかすことのない本心のように聞こえた。つぶやくような静かな言葉が、私をドキドキとさせる。
その後の私達は、ゆっくりと医学書通りに確認を終え。彼の手が私の頬を、髪を、壊れ物を扱うような手つきでなぞっていく。
その指先が触れるたび、ずっと彼に求めていた愛を感じ、私の心は甘く溶かされてゆく。
傍らにあったはずの医学書が床へ滑り落ちる音すら、耳には届かず。ただ愛しい人に夢中になった。
彼の呼ぶ声と、私を求める熱でいっぱいになる世界。
私は、こんなにも甘く、胸が苦しくなるほどの幸せがあるのだと知った。
これまでの人生で、初めて知る「幸せの欠片」を見つけた夜だった。
色々と削ってしまい文章が少なくて申し訳ないです。




