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モテないと騒ぐ君が好き。  作者: かたたな


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卒業式と結婚式



 卒業式の朝。


 鏡の前に立つ私は、かつてない高揚感に包まれていた。

 今日という日でこの学園ともお別れ。そして、ついに私は愛するアルト様と正式な「夫婦」になるのだ。


 早くその瞬間が訪れないかな…と、つい早めに準備を終えてしまう。


 学園の講堂は、春の柔らかな光に満ちていた。

 壇上で祝辞を述べるのは、国が認めた新たな聖女、マレーナ様。


 そのお姿は、探偵事務所にいた頃の妖艶でカッコいい姿ではない。聖女そのものを具現化したような清らかさがあった。


 聞けば、彼女は子供たちの母親として威厳を保つ為に無理をして化粧を濃くしていたそうだ。そんな彼女もカッコよく素敵だったけれど、今の彼女も美しい。しかし、その肌を極力見せない服装に殿下の独占欲を感じる。


 聖女様の清らかな声が響き渡る中、私は隣に座るアルト様の横顔をそっと盗み見た。


 眉間に深い皺を刻み、時折、壇上のラインハルト殿下と視線を交わしている。殿下も殿下で、時折アルト様に「不敵な笑み」を向けているような気がした。


(きっと、卒業式が順調に進むのを確認しているのね)


 私は彼らの責任の重さを改めて理解した気分になる。





「はぁ…終わったー!」


 親友のサティはグッと伸びをして私を見る。


「ノーラのお陰で楽しかった。もう少ししたら私達は義姉妹よ?」

「楽しみだわ」



 サティはアルト様の兄、伯爵家次男と順調に婚約が進んでいるそうだ。次男とサティで伯爵家を継ぐそう。長男がエリザさんの監視役だから仕方ない。次男は無口だけれど、サティほど口が達者な人物が隣にいれば問題ない。そう思える。


 そうして卒業式を終えた私はサティと別れ、他の友人達にも別れの言葉を交わす。その後にやっとアルト様を探す事ができた。アルト様も私の姿を見つけると駆け寄ってきてくれる。


 今や、私を見ると駆け寄ってくれる彼。今まで彼が駆け寄る人物なんて殿下くらいだったから。それが密かに嬉しい。



「行きましょうか」

「はい!」



 私達は、その足で両家両親と共に王宮へと向かった。

 父の体の負担を考え、婚礼は最小限の、けれど最も格調高い「王前婚約承認」の形式で行われる。


 久々の面会となったアルト様のお父様…伯爵様は「良かった…無事に婚姻が結ばれて…」と少し痩せたように見えた。伯爵夫人も「良かったわね、伯爵家は安泰ね」と泣いている。


 そんな2人にお父様は「伯爵家へ最大の敬意を払うことを誓う。素晴らしいご子息を婿に迎えられて感謝する」と、声をかけていた。


 そうして豪奢な謁見の間。


 そこには国王陛下と証人として立つラインハルト殿下。私達の後方には涙を浮かべて見守るお父様とお母様。


 両親に後ろから見守られながら私たちは跪いた。


 国王陛下の重厚な声が、静まり返った広間に響き渡る。


「………両名の婚姻を、王の名においてここに承認する。」



 たったそれだけ。


 しかし、その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじわりと熱くなった。

 もう、遠くから背中を追いかけるだけの関係ではない。これからは名実ともに、この人の「妻」なのだ。



「アルト様。……私、世界で一番幸せですわ」



 立ち上がったアルト様の耳元でそう囁くと、彼は私の手を取り、その指先に口づけを落としてくれる。



「俺もです、ノーラ様。……生涯をかけて、貴女を、そして貴女の背負う全てを守ります」



 世界で一番頼もしい存在。

 あの日、夜会で私を救ってくれた時のままの、真っ直ぐな瞳。




 ……ああ、やっぱりこの人が大好き。たまらなく愛おしい。



 …



 儀式を終え、侯爵邸へと向かう馬車の中。



 二人きりになった車内には、式の余韻と、かすかな緊張が漂っていた。



「あっさり終わりましたわね、これでもう夫婦だなんて。少し実感がわきません」

「そう、ですね」

「でも、きっと夜をむかえれば夫婦としての実感も持てるのでしょうね」

「へ!?」



 アルト様は驚いたような仕草をする。



「まさか…、アルト様は……しないおつもりで…」

「いいや!!絶対します!!やらないなんてあり得ないです!」

「良かった」



 ふふっ、と笑うとアルト様は膝の上の手を握ったり開いたりと動かしていた。



 そうして私達は侯爵家の別邸に着くと、両親への挨拶もそこそこに侍女達に肌を綺麗に磨き上げられる。


 侍女達は、私の願いが叶った事を自分のことのように喜びアレコレ徹底的に世話をやいてくれた。





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