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モテないと騒ぐ君が好き。  作者: かたたな


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知らない好意

 

 後退りながら、彼の様子を窺った。気持ち悪くても公爵家の人間。そうそう無下にもできない。


「上書きなんて…結構です!」

「なんで?公爵家の人間からこう言われるのは光栄なことでしょう?」

「…それを、望んでいないと言っているのです!」



 わざと声を大きくして周囲の生徒の気を引いた。何か不穏な状況だと察してくれている気がする。この学園は表向きは立場が平等とされる場。多少の不敬は見逃されるだろうか…

 そう考え、逃げようと彼に背を向ければ、手をガッシリと掴まれてしまう。



「っ!!」

「逃げないで、やっと邪魔されない場を整えたのに。照れなくていいんだよ?」



 ハッとして彼を見ると、絶対に離さないという意思をその強く握られた手から感じる。その様子に、周囲にちらほらいた生徒達が悲鳴混じりに私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


 しかし、相手は公爵家の人間だ。


 ざっと周囲を見ても助けに入れそうな人物はいない。



「誰か…誰か呼んで来て下さい!」



 この場の生徒に助けを求めるのは酷な話だ。だからその生徒達に近くにいるであろう警備の騎士なり、家格の高い誰かを呼ぶように頼んだ。


 私の必死な叫びに、顔色を悪くしながらも、見ていた生徒達は全員助けを求めて走り出してくれる。


 しかし、その状況を彼は別の解釈をしたらしい。



「やっぱり!やっぱり僕と2人きりが良いんだね。裏庭で2人きり…静かにキスをするなんて、とてもロマンチックだね」


「離して下さい!気持ち悪い!アルト様以外とキスするなんてあり得ません」


「…!!」



 そうハッキリと言えば、相手は視線を鋭くする。



「アイツは殿下の側近とはいえ伯爵家の三男だ。君に相応しくないじゃないか。アイツに唇を奪われてしまった手前…後に引けないんだろう?」


「そうではありません!」


「そうに決まってる。僕が上書きしてあげると言っているじゃない。光栄に思っていい。傷物の君の婿になってもいいって言ってるんだから」



 口論の末に相手に掴まれた腕を手繰り寄せられ、抱き寄せられる。それはどんなに抵抗しても離れない苦しいほどの力だった。



「素直になって。」

「私が好きなのはずっとアルト様です!片思いがやっと成就したというのに…貴方が入る隙なんてこれっぽっちもありません!!」

「片思い?あんなモテないとうるさいヤツに、ははっ、片思い??」



 どんなに抵抗しても離れる気配はない。それどころか腕に食い込むほど強い力で掴まれる。


 気持ち悪い…


 早く、誰か



「——そこ!何してるんすか!?」



 恐怖で体が震えた時。

 背後から、低く冷えた声が落ちてきた。


 振り返ると、アルト様が立っていた。


 いつもの柔らかな表情ではない。

 荒い息を整えながら、汗を拭う彼。眉間に皺を寄せ、目が据わっている。その背後には助けを呼びに出てくれた生徒が心配そうにこちらを見ている。まさか学園にアルト様が来ていたなんて。



「アルト様!?……公務は」

「こんな大事件…のんびり公務に励んでる場合じゃないんで。ラインハルト殿下もすぐにここへ来ます。」



 殿下の名前が出た次の瞬間、男子生徒はパッと両手を上げるように手を離した。やっと自由になった体なのに数歩後ずさるとへたりと地面に座り込んでしまう。


 さっきまでの恐怖と気持ち悪さに、思わず口元を押さえた。



「ぼ、僕は何もしてない!ただ楽しく彼女と話をしていただけだ」


「数人の生徒が、学園中で助けを求め走る事態を『楽しく話しているだけ』って言えるんですか?殿下と共に、やっと学園に来れたと思えば…。ああ、あれっすよね?殿下が最近忙しくて、学園に来れないのを良いことに自分がここの王様にでもなった気分で気が大きくなっていたんでしょう?自分が何かやっても止められる人間がいないと」


「は、な…僕は…公爵家の人間だぞ!伯爵家の…しかも三男のお前に、何か言われる権利はない!!不敬だぞ!」



 そう顔を真っ赤にして後退る彼に、アルト様は私と彼の間に入るように立った。



「俺は殿下の側近だ。俺が見たこと聞いた事を報告する義務がある。それを判断するのは殿下だ」

「くっ…」


 

 「もう安心だ」と確信できた。

 まだ震える体を労りながら、頼もしい彼の背中を眺めた。





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