私から、ぶちまける愛の言葉
へらへらしながら話していると、背中をトントンと優しいリズムで叩いてくれた。こんなに甘やかされてしまえば、私はどんどん際限なく甘えてしまいそうだ。
ずっと、こうしていたい。
「へへっ、好き…」
「……………何が、です?」
「…好き、大好き…なのにっ、…ぅう…」
「…」
そう呟くと、私の背中に触れる優しい手は止まってしまう。
「………主語が無いと、勘違いしそうなんすけど…。…手遅れとも言えますが」
「…うっ、ぐすん、っ、、…が…好き」
「ああ、また涙が…重要な所が聞こえない」
アルト様は困ったように小さく息を吐き、私の肩を軽く抱き寄せた。けれどその腕はどこか力なく、ただ寄りかからせるだけ。その仕草が、私に呆れているように思えて不安が増してしまう。
彼との距離があまりに近すぎて…それなのに見えない心の距離がもどかしい。
「アルト様は、私の事を、ぅっ、何とも思ってないんです…ただの仕事、なんです」
「そんな事、言ってないじゃないですか…。」
「言ってるようなものです…ダンスに誘っても、お手紙書いても事務的なお返事ばかり…」
「それは…純粋に協力者が欲しいものだとばかり…。俺は殿下に侯爵令嬢を助けるよう、任せられた立場なんすよ?」
私は泣きながら、その言葉にムカムカと湧き上がる気持ちをぶつけたくなった。
「それ!それですよ!ちゃんと私のことを見てくれていないんです。仕事中毒…出世と、ラインハルト殿下と不特定多数からモテることしか頭にないんです」
「しかって言う割に、項目が多い…」
「じゃあ『殿下中毒』だけにしておきます」
「殿下とは長い付き合いですから…そりゃあ詳しいですが中毒までは…」
殿下中毒と言われるのは不服らしい。彼から苦笑いする声が聞こえる。
「私なんて…殿下の爪の先程も気にならないんです!!殿下の爪が伸びていたらすぐに気づきそうですが…私の身長が伸びた所で気づかないでしょう!?今年で私は三センチ伸びたんですよ!」
「爪と身長を同等に考えては困りますって。爪は少しでも伸びれば邪魔ですが、身長は俺だって伸びてる訳ですし…。比較対象を同じく爪にして下さいよ」
「でも、私の爪など興味ないでしょう?すなわち、私に興味がないのでしょう!いいえ、興味があるのは侯爵家というブランドなんです」
「極端な…そんなことありませんって。」
「それに、…いつもモテたいと言ってましたもの…私がこんなにも、こんなにもぉ…」
たくさんアピールしたのにいいいい!!と気持ちが溢れ出す。私の頑張りを無いものとされることがなかなか胸に来ていたようだ。
「モテたいと言っていたのは…いろいろあるんすよ。ああして話しかける敷居を低くしておけば、色んな情報が入ってくるんです。他にも良いことがあるんです」
「………」
「信じてないっすね?いいですか?」
コホンと、それは先生のように説明を始める。
「俺がモテないと騒げば、伝統と血統でプライドが高い公爵家からは縁談が無くなるんですよ?『モテない婿なんて嫌よ!我が家に相応しくないわ!』って。」
アルト様は、誰か知らない公爵令嬢の真似をするように、仕草を交えて話してくれる。それが少し可愛らしい。
「これでも次期国王陛下となるラインハルト殿下の側近候補です。断りづらい上にプライドばかり高い家と縁談が来たら困ると…想定してのことです」
「でも実際、モテたいのでしょう?」
そう聞けば、つらつらと作戦を述べていたよく動くお口が止まる。そして気まずそうに声が漏れた。
「そりぁ…一度は…モテてみたいものじゃないっすか…」
「今、分かりました。アルト様の眼中に私は入らないんだと」
「そんなこと…」
「あります、おおありですもの…」
「そんなの、どう証明すればいいんすかぁ……。」
気持ちの証明が難しいなんて私だってよく知っている。それでも今は、出てしまう言葉を止めるのが難しかった。だから部屋を出てほしいとお願いしたのに…。
情けなくてまた涙が溢れてきた。
少しの沈黙の後、アルト様が何かを思い出したように動き出した。
「そうだ、これ。これで証明できますから」
私の背中に添えられていた手がゆっくりと離れる。代わりに彼の上着のポケットを探ると目の前に小さな小箱が差し出された。
「……これ。本当は、もっと適切な状況で渡す予定だったんです。貴女への贈りものです」
「お、くりもの…私に?」
贈り物。
そんなものが貰えるなんて…私には予想ができなかった。
…本当に?あの…アルト様が!?
つい、その差し出された小箱と、彼を交互に眺めてしまった。
明日から、1日2話投稿していきます。(16時頃・21時頃、予約投稿か手動で1・2分ずらすかもしれません)最終回まで後少し。よろしくお願いします!




