表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モテないと騒ぐ君が好き。  作者: かたたな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/80

工房へ


 管理室を出た私たちは、情報を整理しながら石畳の道を進む。抜ける風が、私の頬を冷やし少し心地いい。しかし、空へ視線を向けると日が沈み、ほんのり赤が残る程度。


 そろそろ門限になってしまう。


 今日中に見つけて来いと言われたわけではない。それでも、発見が遅くなり、聖女にされてしまったら…と思うと不安が襲ってくる。すると、少し前を歩いていたアルト様が振り返った。突然こちらを見るものだから、表情を取り繕うのに遅れたのかも知れない。


 アルト様は私の目をまっすぐ見て、安心させるような明るい口調で声をかけてくれる。



「街の工房。時間帯。あそこに居合わせ、種を拾った女の子――。それだけで、調査の対象は万単位の市民から、数人にまで絞り込めます。大丈夫っすよ。絶対見つけますから」

「…はい」


 私は、不安が滲んでいたであろう目に力を込めた。すると、少し表情が緩むアルト様の顔が見える。



「どうかしましたか?」

「あぁ、えっと…意地を張ったのではなく、本当に殿下と結婚が嫌なんだな…って思って。」

「最初からそう言ってます」

「そうっすね。よく理解しました。俺にもチャンスが残ってるんだって」



 その言葉を聞いて思わず立ち止まる。



「アルト様は…したいのですか?私と…結婚」

「当たり前じゃないっすか!」



 思ってたよりまっすぐ、その気持ちを向けられてドキリとする。



 しかし…



「侯爵令嬢のエレオノーラ様に認められるってすっごい事ですからね。俺にとって。」



 その向けられた気持ちは、恋とも言えない…ブランド扱い?な雰囲気に素直に喜べなかった。



「そう仰っていただけるのは、とても光栄なことですわ…。」



 自分の口から出た言葉なのに、どこか他人事のような言葉が出てしまった。実際、今の侯爵領はお父様の力により安定している。私は代わりに王都での社交を担っているくらい。


 今ある評価は、お父様が築いたもの…


 私自身の功績ではない。



「ノーラ様?」

「…行きましょう、手がかりになる記憶が薄れないうちに…」

「そうっすね!」



 そのまま、足早に目的地へ向かう。目的地は、石畳の路地が入り組む職人街。


 入り口に掲げられた古びた歯車の看板が、ギィ、と風に鳴って歴史を感じる。ちょうど、店を閉じようとしていた職人の姿が目に入った。慌てて声をかけると「協力料を支払うからお願いします!」と頼み込み、店内へ通してもらった。



「この日、寮母が落とした種を拾ってくれた『女の子』を探しています。心当たりはございませんか?」

「女の子…それしか分からないのかい?」



 その日の帳簿を開き工房の職人は難しい顔をした。



「この帳簿に『女の子』なんて呼べるような依頼人には居ないね…。寮母と、街の飲食店の爺さんと、パン屋の息子…後は騎士達がぞろぞろとやってきてね。忙しくて人の行動まで見てなかったな。依頼人の付き添いって可能性もあるのか。…それとも店に世間話に来た誰かだろうが…」

「そうですか…」



 確かな情報を掴んだと思ったが、なかなか絞り込むのが難しいようだった。だから、私は別の聞き方をする事にした。



「このお店に訪れた方の中で、何か…普通の人とは違う、特技や人徳のある女性はいませんでしたか?」

「人と違う。特技や人徳??」



 職人は腕を組み深く考え込む。



「あー…ただ『普通の人間と違う』ってだけなら、変な女の子が居るよ、近くに。」



 私達は顔を見合わせる。変な…女の子??



 「ほら、あそこ」



 するとカウンターから出てきた職人さんは、街の大通りまで一緒に出てきてくれる。そして大勢の人々が行き交う中で、1人の女の子を指差した。


 そこには何もない所を見あげ、ボーッとする少女がいる。そしてその少女が歩き出したかと思うと、何も無いのに何かを避けるようにフラフラと歩き出した。


 それは聖女…と言うより不気味な少女だ。8歳くらいだろうか?


 その様子を見たアルト様は。「『熟女聖女』疑惑の次は『幼女聖女』疑惑…殿下の婚期が遅れる…」と呟いて胃のあたりを擦った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ