エリザの誕生日パーティー
何故か呼ばれたエリザさんの無駄に盛大な誕生日パーティー。
行く義理なんて、勿論これっぽっちも無い。
しかし、伯爵家長男がここでエリザさんとの婚約を正式に発表すると私は知っている。私をわざわざ招待した時点で、何か盛大な「やらかし」をしてくれるのではないか?と期待してノコノコやってきました。
今までのエリザさんも不敬だけれど、じゃあその不敬でどれほど商家をゆすれるか?となると謝罪や賠償金で終わりだろう。こうして婚約に成功したのだから長男に恩を売れただろうけど…。
もう一声、決定的な「やらかし」が欲しい所!
なんて欲張りながら周囲を伺うけれど、招待客はどの人物も何かしら光るものがある。これらの人物と交流の機会を持てた事だけでも成果と言えそうだ。
その招待客の中には伯爵家当主や兄弟である次男もいた。何故かアルト様の姿は見当たらなかったけれど、もしかするとラインハルト殿下の色々で忙しいのかも知れない。
伯爵家当主には軽く挨拶をすれば汗をダラダラと流していた。まさか私が招待されているなど思わなかっただろう。長男を私に勧めた手前、婚約発表をするこの場に私がいるのは気まずいのだと思う。でも自業自得である。
そして次男には、私の親友であるサティとどこまで進んだのか聞けば、ポッと頬を赤らめさせていた。お、これは婚約?などと思えば「この前、デートの約束が出来ました」と言われ「まだデートの約束段階!?」と心の中で叫んだ。
それでも幸せそうなサティを知っているからいいのだけど。
そうして次男をからかった後に、招待客の皆さんと談笑に入った。貴族ばかりの社交界には出てこない人物もいて充実した時間が持てていたと思う。
そう思っていたら、エリザさんの挨拶と長男との婚約発表がされた。
会場は祝福の声でいっぱいになる。
そんな祝福で溢れた瞬間。
想定より大きな盛り上がりが私を待っていた。その盛り上がりの発端は勿論彼女。エリザさんの言葉から始まった。
「皆様、聞いてください……。私は、この幸せを掴むまでに、とても恐ろしい目に遭いましたの」
エリザさんは急に顔を覆い、シクシクと泣き真似をしながら長男の胸にしなだれかかった。長男も何があったのか?ととても心配しているように見える。その様子から、長男すらも何を言い出すのか知らなかったのだろう。
会場が水を打ったように静まり返る。
「……エレオノーラ様。貴女に嫉妬されるのは覚悟しておりました。でも、あんな恐ろしい鳥を使って私を害そうとするなんて!」
エリザさんがそう言うと、薄汚いオッサンが大きな鳥籠を出してきた。オッサンが突き出した籠の中で、鳥が不気味に羽ばたく。それは、以前事件が起こった際に私とアルト様が協力して捕まえた大きな鳥。
その鳥は警備兵に調査するように渡したはず…何故エリザさんと知らないオッサンと共にいるのか。
しかも…
「そこの女性にこの鳥を売ったんだ、間違いない!」
そう主張すると、見知らぬオッサンが私を指差す。
さっきまで、楽しく互いの利益になる話をしていた招待客もさっと距離が空いた。
会場の視線が突き刺さる。
「エリザさん、突然何をおっしゃるのか…。私には身に覚えがございません。」
本当に身に覚えが無さすぎて、素直にそう言ってしまった。鳥は元気そうで良かったけれど。
「証人もいると言うのに白々しい。貴方は、私に嫉妬したのでしょう?彼へ打診していたのに、選ばれなかったから。だからこの鳥を使い、私の美しい顔に傷をつけようとしたのよ。自分が選ばれる為に」
なんという事実無根の作り話…
こんな盛大な「やらかし」に、頬が緩みそうになるのを必死で堪えた。
ただ、問題もある。
私の無実は調査をすれば証明できるだろう…。しかし、証明されるまでにどんな噂が流れることか。証明された後に取り返しがつくものなのか?と考えを巡らせる。
今すぐここで無実を証明する事は出来ない。ただ、ここでは焦らず絶対に違うと態度で示すのみ。
「私は無実です。しっかりと調査がされれば証明されます」
「ふふっ、調査などしても侯爵家の力で隠蔽するに決まっているわ。だから私は、そうなる前にここで告発いたしましたの」
ザワザワとざわめく会場。私が出来るのは毅然とした態度で無実を主張することだけ。
その時。
「――お言葉ですが、エリザさん。その主張は、あまりにも事実や学園生活の実態、そして侯爵家の現状を無視している。貴方の妄想に過ぎません」
アルト様の声が響いた。




