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モテないと騒ぐ君が好き。  作者: かたたな


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29/80

おごり



 私達が料理を半分ほど食べた頃。



 勤務時間となって「戻らなければ…」と悲しそうに言う次男。しかし、勇気を振り絞った次男はサティに「手紙を書きます。必ず。」と言葉にした。


 その瞬間、二人の溶けるような笑顔を見ることが出来た。次男は男気を見せ「会計は俺に任せてください。失礼致します」と言う。そしてチラッとアルト様に視線を向けてから、このテーブルの会計を全て支払い去っていった。


 アルト様は、その兄からの視線にニヤッと笑っていて実に男兄弟らしいやり取りをしていた。



「お手紙の便箋と封筒買わなきゃ!とびっきりいいやつ!!」



 次に動き出したのはサティだった。

 急ぎ、残りのケーキをパクパク食べ、店を出て行く準備を始める。


「……放っておいて正解だったでしょう?」


 満足げに頷くアルト様の横顔を見ながら、私は恋の成就を確信した。


「本当ですね…」


 そう言ってアルト様に微笑んだ瞬間。


「じゃあねノーラ!デート、楽しんで!」


 とだけ言い残してパタパタと去っていった。彼女のサッパリさが戻ってきて何よりだ。

 私は「はいはい」と友人へ手を緩く振り応える。



「大成功のようで安心しました。ありがとう御座いました…アルト様。」



 ふふっ、と親友の嬉しそうな姿を微笑ましく思いながらアルト様を見ると、食べかけの肉を口に運ぼうとした状態で固まっていた。


 ん?…デジャヴ?


 彼に何が起こったのか、さっきまでそこにいた次男のように固まる。



「アルト様?」

「へ!?は、はい!!」

「急に、どうされましたか?」



 私が顔を覗き込むと、先ほど詰めた席の近さからかとても顔が近くなる。すると、アルト様は肉の刺さったフォークをお皿の上に落とし、みるみる顔を赤くした。



「いや、その…『デート』を否定しないのだな…と、思いまして。」

「デートでは嫌なのですか?」

「まさか!とても光栄です!!」



 ガタッ!と椅子が動くほど、勢いよく返ってきた返事。それに心の底から嬉しくなる。


 (デートはしても良いと思ってくださっているのね。)


 そう考えると嬉しくて、サンドイッチをパクリと食べた。すると、さっきまでの勢いがあった彼が、次第にしおしおとしていく。



「兄の奢りで…デートしてしまった」



 アルト様は、ポツリとそう呟いた。そしてそれはとても悔しそうだ。



「コレを…現状をデートとするなら、あまりに不甲斐ない。」

「それなら、デートとは言わずに『お兄様に付き添っただけ』とお考えになっては?」

「いえ、でも…デートは、…デートはしたい、です」


 可愛い。

 私の瞳が、彼の照れる仕草を少しでも多く記録しようと必死になっている。

 

「それなら、これがデートでも良いではありませんか。初めから完璧に上手くいくデートもそうそうないと思いますよ?」



 私はそう言ってからサンドイッチを口にする。彼の不完全なデートは、初めてのデートを獲得した者しか得られない特権。そう思うと、何でも愛しいものだ。そうしてデートに興味がある彼にホッコリしていると。



「ノーラ様」

「はい?」


 何やら真剣な声が聞こえる。

 ご飯デートをアルト様との思い出として胸に刻みながら、彼の声に耳を傾ける。



「今や、兄達は想い人を見つけました。そうなると、俺が侯爵家との縁を結ぶチャンスが来たと思っていいのですよね?」

「っ!!」



 その言葉に、人生で一番心臓が飛び跳ねたと思う。


 急に何を言い出すのか!!とアルト様をみれば極めて真剣な眼差し。デートで照れていたアルト様が、私にこんな真面目に縁談の行方について話している。


 彼の恥ずかしがりポイントがよく分からなくなった。


 だって…内容は『俺達結婚しましょう』と言っているのと同じことだ。彼にとっては事実確認という極めて仕事に近いソレとして聞いているのだろうか。


 今度は私のほうが少し狼狽えながら真剣に答える。


「チャンスも何も…アルト様は侯爵家からの打診内容を知ってらっしゃいますか?一番最初のやり取りを」

「打診の内容?いえ、父上と兄上だけで話が進んでいるので…こちらまで情報は来ていません」



 だよね。

 そうだよね。



「最初のやり取りの内容を、ぜひ御自身の目で確認してみて下さい。私の狙いはそこにあります」

「ノーラ様の、狙い。」



 私がいくら口で「最初から貴方を求めてた」と言っても「兄達に恋人ができたから仕方なくそう言ってる」なんて思われたくない。


 だから、彼の目でしっかり確認して欲しかった。


 それから間もなくして、私達は食事を終える。アルト様が寮まで送ってくれた。その時間は、交わす言葉は少なく、サティと次男に負けないほどの甘い空間だったと思う。


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