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鬼切神社の御御籤  作者: 西季幽司
悪霊退散
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16/17

憑かれた男

――ヤバイ! 悪霊に憑りつかれてしまった。


 とんでもない事態になった。

 ほんのちょっとした遊び心だった。

 町外れに有名な心霊スポットがあった。週末の夜、ドライブを兼ねて友人二人と、その心霊スポットに向かった。

 山の中を走る国道から脇道に逸れ、暫く走ると、トンネルがあった。老朽化により崩落の危険があると言うことで、入り口に板が打ち付けてあり、立ち入り禁止となっていた。

 夜中に、このトンネルに歩くと、背後から人の足音が聞こえる。振り向かずに歩いて行けば良いのだが、足音の正体を確かめようと振り返ったり、背後から「もしもし」という声がするので返事をしたりしてしまうと、幽霊に祟られるという怪談話があった。

 肝試しでトンネルを潜ろうとするものが後を絶たないようで、入り口を封鎖してある板柵の一部が破壊されていて、人一人、なんとか通り抜けることが出来た。

 板柵を潜る。

 止せば良いのに、俺たちはトンネルに入った。

 長いトンネルではない。百メートル程度の長さだ。昔はトンネルの先にあった村への近道だったようだ。過疎化により、村が廃村となり、トンネルは役目を終えた。

 昼間であれば、入り口から出口が見えるはずだ。

 俺たちは携帯電話の灯りを点けて、真っ暗闇のトンネルを歩いた。不気味だ。途中、来るんじゃなかったと後悔したが、もう遅い。一旦、歩き始めると、振り返ってはいけないのだ。トンネルを抜けて、もう一度、戻って来なくてはならない。

 行きは大丈夫だった。

 トンネルの出口にも柵が設けられてあったが、こちらは廃村に続く道になっている廃道なので柵はいい加減なものだった。申し訳程度に板を張り渡してあるだけだ。板と板との間に、かなり大きなすき間が出来ている。身を屈めて一番下の板を跨げば、簡単にトンネルから出ることが出来た。

「何もなかったな」

「良かった」

「もう一回、トンネルを潜らなければならない」

「ああ、嫌になる」

「怖いのか?」

「真っ暗で歩きづらいからだよ。靴が汚れる」

「気にするような靴じゃないだろう」

「それでも嫌だ」

 そんな会話を交わした。

 暫く、愚図愚図とトンネルの前で時間を潰した。だが、夜明けまで、ここで待つ訳には行かない。誰かが「行こうか」と言ったのを合図に、俺たちは再び板柵を潜った。

 再び、真っ暗闇のトンネルを歩いて行く。

「あれっ⁉ 俺の携帯、充電が足りない。ライトを消すからな」

 一人がそう言った。

「ああっ! 俺の携帯も充電が無くなっている」

 たっぷり充電してあったのに、バッテリー残量が一桁になっていた。片道、トンネルでライトを点けっぱなしにしていただけで、バッテリーが一気に減ってしまったようだった。

「俺の携帯も危ない」

 最後に残った友人が言った。

 その瞬間、ライトが消えた。

「うわあああ~!」

 俺たちは悲鳴を上げた。

 灯りが消えたトンネルの中は、漆黒の闇が支配した。隣の友人の顔さえ見えなかった。

「おいっ、急いでトンネルを抜けるぞ!」

 誰かが叫ぶ。

 走り出したかったが、どちらが前なのか、それさえ自信が持てなかった。

 俺たちは歩き始めた。

 後、どれくらい歩けば良いのか、さっぱり分からなかった。

 俺たちが歩き始めると直ぐに、


――ひたひた。


 と背後から足音が聞こえて来た。

「おい、誰か遅れているのか⁉ 急げよ」と俺が言うと、「俺はここだ」、「お前こそ急げ」と前方から返事が帰って来た。


――出た!


 と思った。噂通りだ。


――振り向くな。絶対に振り向くなよ。


 そう自分に言い聞かせた。

 早足で出口、いや入り口か。トンネルの入り口を目指した。友人たちも背後から忍び寄る足音に気がついているようだ。

 やがて、


――もしもし・・・


 と声がする。恐怖のあまり卒倒しそうだった。


――無視しろ! 返事をすると祟られるぞ。


 随分、長く感じた。永遠に暗闇を歩き続けなければならないのかと思った。

 前方から「出口だ!」と友人の声がした。


――やっと着いた。トンネルを出ることが出来る。


 このまま前へ進むだけだ。

 トンネルの入り口は板で塞がれているが、一部、板が破壊されている。

「早く来い!」

 板柵をくぐった友人が叫んだ。

「分かっている」

 俺は体をかがめると、板柵の隙間を潜った。


――やった! トンネルから脱出成功だ。


 と思った瞬間、着ていた服の一部が板のささくれに引っかかってしまった。俺は引っ張られる形になった。

「あっ!」と思った、その瞬間、反射的に振り向いてしまった。


 俺は見てしまった。


 トンネル奥の暗闇に、二つの目が浮かんでいたことを。

 二つの目は真っ赤だった。

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