ジャクの話
アマノから「ルイのことが好き。告白したい」と言われた。
アマノとは幼馴染、若林はアマノのことがずっと好きだった。正直、ルイに告白したいと聞かされた時はショックで頭が真っ白になった。
アマノは何でも相談してくれる。
何て答えたら良いのだろうと悩んでいると、ふと鬼切神社のことが頭に浮かんだ。あそこの御御籤は当たると評判だ。引いてみようと思った。
下校途中に神社に寄って御御籤を引いた。
恋愛運を見る。
――好きならばとめろ。
と書いてあった。告白させるなという意味だろう。
その夜、アマノから電話があった。
「鬼切神社で御御籤を引いたんだけど――」とアマノは御御籤の結果が悪かったと落ち込んでいる様子だった。
何時も陽気なアマノだ。ぐじぐじと悩んでいる姿は見たくない。迷っていたが、心は決まった。
「御御籤は、自分の気持ちを確かめるものだと思う。気持ちを確かめる為に御御籤のお告げを読むんだ。自分の気持ちを信じることだよ」とアマノを励ました。
アマノは喜んで電話を切った。
「良かった・・・」と呟きながら、若林は涙が溢れて来るのを止めることが出来なかった。
数日後、アマノから告白が上手く行かなかったと聞かされた。
正直、ほっとしたが、傷ついたアマノを前に嬉しそうな顔など出来ない。「残念だったね」と悲しそうな顔をして見せた。
「ジャク、あんた、良いやつだよね。親身になって、私のこと、心配してくれる」
「だって、アマノは放っておくと、暴走してしまいそうだから」
「それ、気に入った。暴走ガール・アマノって呼んで」
「ダメだよ。堅実に生きて行かなきゃあ」
「堅実ボーイ・若林だね~」
「なんか嫌な感じ」
「はは」とアマノは口を開けて笑った。
若林は大学生になった。
アマノは高校を出て働き始めた。社会人と大学生だ。仕事で忙しそうで、会って話をする暇がなかった。若林は、アマノとどんどん疎遠になって行くのを感じていた。
そんなある日、アマノから携帯電話にメッセージがあった。
――友人が古着屋を開くので出資して欲しいって言われている。どうしたら良い?
メッセージを呼んだ瞬間、
――これは危ない。
と思った。個人で起業しようとすると、店を開いた段階で資金が尽きてしまい、運転資金に事欠いて潰れてしまう場合が多い。その辺のこと、アマノの友人はちゃんと考えているのか心配になった。
帰宅途中に神社に寄って御御籤を引いた。
恋愛運に、
――好きならばとめろ。
と書いてあった。
――そうだよな~やっぱ、止めないと。
と思って家に帰ったのだが、いざ電話をする段階になって、
――もし、アマノが出資を断ったら、友人との仲が壊れてしまわないか?
と気になった。アマノはもう若林とは違う世界で生きている。若林は知らないが、大切な友人なのかもしれない。
「好きと売れるは違う。古着を仕入れたのは良いけど、在庫が溜まって、現金が回らなくなって倒産というケースが多いようだ。出資するなら、相手をよく見て見極める必要がある」という曖昧な言い方になってしまった。
話している内に、アマノの背中を押すような話になってしまった。
最後にアマノが言った。「ジャクは何時も背中を押してくれる。だからジャクのこと好き」
ドキっとした。
アマノに好きだと言われて、若林は舞い上がってしまった。その後のことは、何も覚えていなかった。
アマノの言葉が気になって、気になって仕方なかった。
言葉の意味を確かめたいと思ったが、その勇気が出なかった。二人は仲の良い幼馴染だ。その関係を壊してしまうかもしれないからだ。
また鬼切神社に足を運んだ。
御御籤を引いた。
――どうせ聞かないだろうが、素直になれば道は開ける。
と恋愛運に書いてあった。
確かに、御御籤のお告げに逆らってばかりだった。今度、アマノと会ったら、聞いてみよう。言葉の意味を――と思って、顔を上げると、目の前をアマノが歩いていた。
「アマノ!」
思わず声をかけてしまった。
アマノが振り向いた。
「古着の件、悪かったね」
「ジャクのせいじゃないよ。あれから連絡があったんだ。ちゃんとお金は返すからって」
「それは良かった」
「ねえ、アマノ」
「ねえ、ジャク」
二人の言葉が重なった。
「ジャクから言いなよ」
「そう。アマノ、この前、僕のこと好きだって言ったよね。僕もアマノのこと好きなんだ。ずっとずっと、子供の頃から、アマノのことが好きなんだ」
意外にすらすらと言葉に出来た。御御籤のお陰かもしれない。
「ありがとう」
「子供だね。好き、好きって言いっぱなしで」
「ううん。こんな私でいいの?」
「アマノがいいんだ」
「嬉しい・・・かもね」
アマノが笑う。二人は並んで歩き始めた。
御御籤に逆らってばかりの二人だったが、ようやく幸せを手に入れたようだ。




