自殺講座その八
狛下・6月30日12時15分
ケリーは華滝の名前の齟齬について調べる必要があると考えたらしく。一度華滝のことを『司ちゃん』 と呼んだ生徒の元へ行くと言い出した。1人で行くとい言っていたが、僕もこの事件には興味が出てきたのでついていくことにした。
そして現在、ケリーと共に田園風景の広がる田舎道を共に歩いている。
共に歩いていると言っても、実際はケリーの後ろについて行っているだけで隣を歩けているわけではない。仕方ない、こんな美しさの隣にいたら存在がかき消されてしまう。
従って、必然的に彼女の後姿を見ることになる。そのおかげでケリーの美しさに再度気づかされる。
この美しさは人の言葉では形容できない様な、いや人外の美しさというべきか。
女神の様な、人の上の存在の様な、そんな美しさをケリーは持っている。そんな風に感じた。
それにしても、彼女の歳はどれくらいなのだろう。まだ10代でもおかしくない様な雰囲気が出ている。でも、FBIに居るってことはそんなに若くはないのだろう。
んー、そう考えると歳を聞いてみたくなってきた。先程から沈黙が続いているのでいい話のタネにもなるはずだ。しかし、失礼なことだとも思う。悩ましい、すごく悩ましい。
「ねぇ透君、お父さんは居る?」
「え?」ケリーの年について考えている時に不意打ちをくらう。
「ほら、あの家にお父さんがいる様な生活感がなかったから」
「え、あぁ。さすがFBI、わかるものなんですね。ええその通りです。父は僕が子供の頃失踪しました」
父は僕が10歳の頃突然消えた。偶然なのかわからないが、僕の記憶があるのもこの頃からだ。
父になにがあったのか、母に一度聞いたことがある。その時母は「父さんはね天空の城を探しに旅に出たのよ」なんて訳のわからないことで誤魔化されたので、(あっ、これは聞いてはいけないことだ)と察した。
「失踪した?失踪って原因は?」昔のことを思い出していると、ケリーが効いてきた。
「原因はよくわかりませんが、母が言うにはラプタを探しに行ったらしいです」
「え?ラプタ?」
「あ、いえ冗談です」少し場を和らげようと冗談を言ってみたが、冗談の解説という一番寒いことをさせられそうになってしまった。
「うーん、そう。嫌なことを聞いてしまったわね。ごめんなさい」
「いえいえ、そんなに気にしていませんから」
母にラプタを探しに行ったなんて言わせる様な人なんだからきっとどこかで生きているのだろう。そんな気がする。
「じゃあ、もう一つだけ、あなたのことを学校から聞き出した時に苗字を見たのだけれどこれはなんて読むの?」と僕の名前の苗字が書かれた紙をさしながら聞いてきた。




