自殺講座その一
とある郊外のアパート・6月30日7時28分
外の国道を走る車の音で目を覚ます。どうやらテレビの前で机に突っ伏す体勢で寝てたらしい、腕が痺れている。また、どうにも瞼が重い、二度寝をしたいという衝動に打ち勝つために顔を洗いに行く。
昨日は放送されていた映画を見ながら寝てしまったらしい、テレビの電源が点いたままだ。
「……び降り…模様で…」
意識が朦朧としているのか、プツリプツリとしか音が聞こえてこない。それも顔を洗えば聞こえてくるだろうと思い洗面台へゾンビの如く千鳥足で歩いていく。ゾンビ千鳥歩法を実践すること30秒後にようやく洗面台についた。そこで顔を洗うついでに歯を磨いていると、先ほどまでプツリプツリとしか聞こえなかったニュースがようやく聞こえてきた。
どうやらどこかの高校で人間が飛び降り自殺をしたようだ。嫌なニュースである。なぜこうもマスコミは人が死んだやら自殺がありましたやら、人が死ぬと喜んで報道するのだろう。
「群馬の奥地に潜入‼︎筋肉ミルク祭りの謎‼︎」とか
「今上天皇がリオデジャネイロでサンバを披露なさいました」
なんてニュースの方が絶対に興味を惹くと思う。いや引かれるかな
歯を磨いて口をゆすいで朝ごはんでも食べようと思い今度は台所へ歩いていく。その途中テレビの画面の自殺の起きた学校が目に入る
それは知っている学校だった。 起きたばかりで関節がバキバキと鳴る体に鞭打って急いで支度を始める。 フライパンに卵を落とし、食パンをトースターにセットする。トーストが出来上がるまでの時間、タンスから着れるきれいな服を選んでその上にパーカーを羽織る。チンッ‼︎とトーストが出来上がったようで、トーストに目玉焼きを乗せる。
「いただきます」
トーストをなるべく急いで且つ丁寧に食べる。
「ごちそうさま」
なかなかの速さだ。最高記録ではないか?7秒フラット。
そんなことを考えながら玄関のドアを開けて、走り出す。
私にはどうしてもその学校に行かないといけない使命がある
狛中第一高校・6月29日11時41分
強い日差しが赤色にキラキラと反射し目に入ってくる。熱い風に鉄のような生臭さが鼻元へ運ばれてくる。
飛び出した女子生徒の遺体は見るも無残なものだった。しかし、なぜだか僕が受けたショックは周りが受けているものほど大きいものではなかった。辺りを見回せば、遺体を見て嘔吐する者。茫然自失している者。泣いている者。
「地獄絵図」、そんな言葉が似合う場所に成り果てていた。
冷静に救急車を呼べる人はいそうになかった。
しかし、そんな惨状に僕の担任の山口が駆けつけてきた。いいタイミングに来てくれた。さすがだと思う。
この山口という男は全校生徒からの信頼がとても厚く、生徒の憧れだ。そんな山口が来てくれたので、皆少し落ち着いた。
「おいお前達何があった‼︎」結構強い口調で訪ねてきた。周りの人の中でまともに答えられそうな人は僕くらいだった。
事の終始全てを話した。
話の途中、遺体の方を見て一瞬顔が歪んだが、持ち堪えて救急車を呼んだ。
そして、山口はだんだんと落ち着いてきた周りの人にも話を聞き始めた。その内容を少し聞いていると、どうやら女子生徒は高二の華滝『紗江』というらしく、とくにいじめなどがあったわけではないようだった。
ずっと泣いている華滝『紗江』の友人の生徒もなぜ自殺したかわからないと言っていたし、きっと個人的に友人にも相談できないような問題があったのだろう。しかし、それについて考えるのは今やることではない気がした。そうしているうちに騒ぎを聞きつけた教師達がぞろぞろとやってきた。
やってきた教師達は皆遺体を少し動揺した後、生徒達に事情を聞いて回っていた。




