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鳥人戯画  作者: 吾子 要
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おでん缶と自殺とプロローグ

石が混じる地べたを見れば蟻がいる


雲が混じる空を見上げれば鳥がいる


どちらが醜くてどちらが劣っているものなんてことはないはずなんだ



狛中第一高校・6月29日11時32分


梅雨が明けそうで明けない、そんな6月下旬。高校生活にも慣れてきて、毎日同じ通学路にも飽きてくる頃合い。クラスの雰囲気も柔らかくなって、スクールライフが楽しくなってくる頃合いでもある。


そんな中、3時間目の体育授業の後にどうにも喉が渇いたので一階の食堂の自動販売機の前に立ち、上からラインナップを見ているのだが


「クール爽快、レッツクールビズ‼︎四ツ矢サイダー」


「暑さを凌ぐこの一本‼︎オロナミナミンC」


「スポーツのお供に‼︎アクアリアス」


「うーん暑いもう一本‼︎おでん‼︎」


おかしい。見間違いだろうか?一本だけとても爽やかとは思えないものがある。

いやいや、まさかこんな季節におでん缶を置く自動販売機あるわけないだろう。

もう一度ラインナップを、今度は下から見ていくことにした。


「コクのブラック、ミニマムコーヒー」


「おでん‼︎」


「おでん‼︎」


「Hey‼︎Tea‼︎」


二本に増えた⁉︎おでん缶があるだけでもおかしいというのに。

どうしておでん缶なんだ。何をどう考えたらこの季節におでん缶なんだ。

おかしいと思っている人が僕以外にもいるはずだ。そう思い辺りを見回す。




何故だ…




なんで流行っているんだ⁈どうしてみんなおでん缶を片手に楽しそうに会話しているんだ⁈


「ねぇねぇ、ハヤテ君がこの前〜」


「この間さ〜、いい感じの喫茶店見つけたんだよね〜」


女子がおでん缶を片手に会話をしている⁉︎違和感がないのか?そんなにフィットしちゃったのか?「会話のお供におでん缶」なんて聞いた事もない。

やれやれ世も末かと思っていると、突然鳥が羽ばたくような音がした。

おでん缶ブームという未知との遭遇をしていたら突然、鳥が羽ばたく様な音がした。そして聞こえたと思っているのもつかの間に、

「やめて‼︎『司』ちゃん、そこから降りて‼︎」

そんな女子の悲鳴に近い声が校庭の方から聞こえてきた、何事だ何事だと生徒が校庭にみんな出て行く。それに従って僕も校庭に出てみると、みんな屋上を見上げていた。


雲ひとつなかったので、太陽光がとても眩しく、初めは全然見えなかったが、そのうちに目が太陽光の眩しさに慣れてきたのか、ぼんやりとした影が屋上に立っていて青空に映えているのが見えた。

屋上を見上げているみんなは声をかけるだけで、それ以外は何もできずにいた。死を覚悟しているのか、女子生徒は僕らのことを無視していた。

そんな彼女を救おうと必死に声をかけ続ける。聞き入れてもらえないと分かりながらも、周りの生徒達は叫び続けていた。

まだ死ぬべきじゃない。

降りてきて。

嫌だ飛ばないで。

色々な声が聞こえてきた。こんなに救おうと叫び続けてくれる友達がいるのになぜ、なぜ彼女は自殺しようとしているのか。わからない。


そして


校舎の高い壁に反響し続ける叫び声も虚しく


女子生徒は翔んだ


文字通り鳥が翔ぶ様に女子生徒が翔んだ様に見えた。しかし、墜落した。それもそのはず、鳥が空を飛べるのは翼を持っているから、彼女はその翼を持っていなかった。

「ッッッア゛ァァァァ」声にもならない悲鳴が響く。死ぬ人の前では無力であることを知ってしまった学生達。

そして堕ちた子の見るも無惨な姿

周りがどよめいている

そんな中ちらりと屋上を見上げるとまたひとつ影が青空に映えていた気がした。




石が混じる地べたを見れば蟻がいる


雲が混じる空を見上げれば鳥がいる


どちらが劣っている優れているなんてことはないはずなんだ


だって一番滑稽で最も下劣なものはどちらにもいようとした人間なのだから


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