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BLゲームのモブですが、前世を思い出したら成り行きで悪役令息と「ざまぁ」することになりました。  作者: ぷかり


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26/31

<26>地獄から一転

 あまりの情けなさに肩を落としかけたその時、


「嬉しい」


 ポツリとエバンがそう溢すのが聞こえた。


 幻聴かと思い己の耳を疑うも、続く第二声の破壊力に胸を射抜かれれば、さすがに現実だとわかる。


「私もジェームズが好きだ」


 素直で率直な愛の言葉だった。

 それを告げる彼の顔はどこまでも穏やかで、温かい。まさに本物の天使のよう。


「私と恋仲になってくれる、ってことで合っているだろうか?」


 さやけき月の光が彼を照らす。

 そのあまりの美しさに息を呑んでいると、エバンが照れたように小首をかしげた。


「君さえ良ければ。俺の恋人になってほしい」


 地獄から一転。モブが悪役令息を射止める結末もあるらしい。


「断るわけないじゃないか。ここまでしてもらって好きにならない方がおかしい」


 夢見心地での申し出にコクンと頷かれたのが了承の合図だ。


「これからよろしく」


 まるでビジネスパートナーがするような握手を求められたが、今日からは恋人同士。

 その事実だけでも愛おしさが一層募り、彼の手を取って引き寄せると、そのまま抱きしめてしまっていた。


「ジェ、ジェームズ」


 エバンの耳が赤くなっている。つられて鼓動が速くなるのを感じた。


 ふと侍女の話を思い出し、目の前で揺れるプラチナブロンドに指を通してみる。

 少しの引っ掛かりもなく、指の間をサラサラと零れていくのが気持ちよくて、何度も繰り返しているうちに、エバンの限界がきたらしい。


「勘弁してくれ」


 首まで真っ赤にして、ぷるぷると震えている。これだけでも免疫がないことがわかる。

 どうやら第一王子に嫉妬する必要はなさそうだ。


「あんまり嬉しかったから」

 

 腕から解放する直前、徐々に慣らしていこうと耳元で囁くと、


「お手柔らかに頼むよ」


 エバンがくったりともたれかかってきた。


 頬の柔らかな曲線が胸のあたりに押しつけられる。いつも余裕なエバンのいじらしい一面にとくんと胸が高鳴った。

 名残惜しさが残る中そっと離れれば、途端に少し寒いような心地になる。それなのに、火照った肌を撫でていくそよ風は気持ちいい。


「本当はもっとロマンチックなところで言うつもりだった」


 想いが通じて甘えが生じたのだろうか、漁火をぼんやり眺めていると、ふと拗ねたような反省の言葉が零れた。

 完璧な彼に完璧な告白を。そう思って用意周到に準備していたのに台無しだ。

 こんな格好のつかないシチュエーションで彼は本当に満足してくれているのか。


 チラリと横目で窺うと、


「じゃあ、プロポーズの時はそうしておくれ」


 エバンがクスクス笑っていた。


「私はジェームズの気取っていないところが好ましいんだけどね」


 可愛い。


 彼の幸せそうな表情を浮かべてくれるのなら、体裁とか見栄とか、もう何だっていいのかもしれない。


「それは結婚してくれるってこと?」

「さては君、意外と野暮だな。わかってる癖に」


 冗談めかした応酬に将来の可能性を感じると、自然と不甲斐なさは気にならなくなった。

 もとより俺は格下。必死に愛を乞うている方が合っている。

 せいぜい捨てられないように彼を大切にするだけだ。


「愛してる」


 肩を抱き寄せ、天を見上げる。

 瞬く星と丸い月だけが二人を見守っていたはずだった。

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