第24話:吹雪のあとの残光と、皇帝の降伏
「――これで、すべての魔力ラインの結合および最適化が完了いたしました」
天界の大魔力炉から立ち上る眩い純白の復旧光が、それまで世界を閉ざしていた暗黒の吹雪を一瞬にして薙ぎ払い、無限の青空を天界の最奥へと取り戻していく。
冥府の国へ押し寄せていた黒い寒波も完全に霧散し、領内には史上最高のホワイトな平穏が再起動された。
私がペンの先端を収めると同時に、私の身体は、背後から伸びてきたアルカイド陛下の逞しい両腕によって、骨が軋むほどの強さで深く、深く抱きすくめられた。
「ヒラリー……、ヒラリー……!」
陛下は私の首筋にその美しい銀色の髪を深く埋め、壊れそうな至宝を繋ぎ止めるように、何度も私の名前を低く掠れた声で呼び続けた。
普段の氷のような絶対零度のポーカーフェイスは完全に消え去り、サファイアブルーの瞳には、私を失うかもしれないというガチの恐怖からようやく生還した一人の男の、狂おしいほどの安堵と愛おしさが波打っている。
「陛下、世界は無事にデバッグされました。もう寒波のノイズも不法なアクセスも存在しません」
「世界などどうでもいいと言ったはずだ」
アルカイド陛下は私の両肩を掴んで自分の方へと向き直らせると、私の左手をそっと両手で包み込んだ。サファイアブルーの瞳はまだ微かに潤んでおり、そこには国家指導者としての防壁など一ミリも残っていない。
「お前の身体が凍りついていくのを見た瞬間、私の胸の奥は恐怖で完全にフリーズしていた。これまでの『戦略的防寒措置』だの『安全管理』だのといったすべての言い訳のプロトコルは、今この瞬間を以て完全に消滅した。私はただ、お前という存在なしでは一秒も理性を保てないほど、お前に精神的に完全敗北しているのだから」
絶対零度と言われた世界最強の男が、私の知性と存在の前に、公然の独占欲として本音の甘えをすべて剥き出しにした瞬間だった。
「これ以上、私以外のものにお前の美しい知性を使わせるな。お前の時間は、髪の一本にいたるまで、すべて私の生涯最高の特等席で独占し、甘やかし尽くすとここに誓う」
「ふふ、陛下。そんな熱いプロポーズの仕様書、私の心に永久保存されてしまいますわ」
そう言って私が彼の服の袖をそっと引き、いたずらっぽく微笑むと、アルカイド陛下は一瞬ではっと目を見張り、次の瞬間には耳の裏まで真っ赤に染め上げた。
彼は私の腰を二度と離さないと言わんばかりに抱きしめ直すと、嬉そうに私の薬指の指輪にそっと口づけを落とした。
前世の孤独なオフィスでは、どれほど必死に会社を守っても正当な労いすらなく、都合のいい歯車としてただ暗闇に摩耗させられるだけだった。
なのにこの世界で最強の男は、私のわずかな限界の姿に理性を狂わせ、世界が救われた美しい奇跡の中で、ただ私に愛されることだけを全力で渇望してくれている。
胸の奥が、これ以上ないほど甘い安心感と、二度と侵されない絶対的な聖域の温かさで満たされていく。
「さあ、私たちの国へ帰りましょう、陛下。帰国後のタスクも山積みですわ」
「あぁ。まずは我が国を挙げた『お前の歓迎式(結婚披露宴)』の最適化からだな。これ以上の最優先タスクはない」
私が微笑んで彼の胸元にそっと両手を回すと、アルカイド陛下は満足そうに目を細めた。
吹雪が去った天界の祭壇に満ち溢れる、どこまでも温かく穏やかな純白の残光の中、私たちはしっかりと手を繋ぎ合い、最高のホワイト職場の仲間たちが待つ冥府の国への帰路につくのだった――。
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