7話『瞑想夢双』
【本作の表記】
名前「セリフ」 →登場人物の会話
???「セリフ」 →正体不明の人物の会話
「セリフ」 →主人公の会話
7話『瞑想夢双』
早いもので、洞窟の一件からもう2週間が経った。
異世界生活にもずいぶんと慣れてきて、
生きる事以外に目を向ける余裕も生まれてきた。
まぁそんなこんなでこの世界の事を色々調べてるんだが、いくつか分かってきた事がある。
座学的な知識に関して、特に
魔力の事や生態系の事は大体理解できた。
魔力ってのは草木から放出されていて、例えるならもう一つの酸素のようなエネルギーらしい…
興味深いのが、この世界の生態系は魔力を中心に出来ているという事だ…
魔力を貯める花だとか、それを吸う虫に、魔力で動く動物なんかもいるらしい。
だから森なんかは魔力が濃くて、変わった植物や動物…もとい魔物がいるんだと。
勿論現代的な生き物や植物も存在していて水や酸素なんかは当たり前に生命の要だ。
洞窟で聞いた引火がどうって話、あれもようやく輪郭が見えてきた。
火を出す系の魔法何かは魔力を燃やしているらしく、だから魔力が濃い場所で
発火魔法でも使おう物なら一気に燃えるらしい。
どうやら魔法ってのは魔力を他の物に変換する技術なんだと
まぁ…‥ここまでは良い。ただの座学だ。
問題は…
一番気になる魔王の情報が曖昧すぎるんだよな。
{突如現れた魔王とその配下によって生存圏を奪われた。}
以上の情報が何処にもない。
誰も魔王の所在や昔の町の事を覚えていないのか?
………でも気になるんだよなぁキチガイマンが言ってたこと。
あの人は魔王城の事とかも詳しく知ってそうな感じがしたんだけど、
なんでかあの日以降全く見かけないんだよな……
[ギルド2階 図書館]
珍しく静かなギルド内で、一際静かな図書館エリア
ここにはいくつもの本が所蔵されており、冒険者であれば
自由に持ち出し可能だ。この2週間は暇さえあれば
ここに通って色々と勉強していた。
この場所は良い、異世界なんて事忘れて一人の時間を作ることができる。
だがしかしそんな楽園も長くは続かない
レイジ「おい!挨拶しろよ!なぁ」
本を漁っていると、
珍しい奴に声をかけられてしまった。
転生初日、早々に俺の前に現れた奇妙な男。
巷じゃ旅行客全員の前に現れる挨拶怪人だの
挨拶王だの言われているレイジだ。
「何でお前がこんなとこに居るんだよ」
レイジ「だから挨拶しろよ」
「はい。おはよう。で、何でこんなとこに?」
レイジ「いやぁ面白いもんがあるってんで来たんだが、俺には本なんかさっぱりで、何が面白いのかわかんねぇんだよな」
「なんだそりゃ。まぁ俺も本は好きじゃないけど、勉強はしたいからな」
レイジ「勉強つったって、俺字あんま読めねぇしなぁ…」
本を開き、ぶつぶつとなにかを言っている
レイジ「あぁ……っと、なるほどなるほど。つまり
水の国は飯がうめぇのか」
「?読めてんじゃねぇか」
レイジが読んでいる本を覗き込む
「………なんだ…?この文字…」
この世界の本はどれも日本語で書かれてて、
どうやら本当に同じ言語体系だった事が
分かったが………ここに来て再び未知の言語に
出会った…古代語に続いて2回目だ
レイジが読んでいた本を手に取りペラペラと
ページを捲っていると、近くにアイリスがやってきた
アイリス「あ、やっぱり居た」
「!アイリス!用事はもう良いのか?」
アイリス「もう終わりました。所で君は今日もまた本を読んでるんですか?」
「あぁ、まだ調べたいことがあってさ、あ、そうだアイリス。この字読めるか?」
さっきの本を見せる。
アイリス「?………なにこの文字?また例の奴?私読めないですって」
「え、あれおかしいな」
「レイジが読んでたからてっきり異世界の独自語だと思ったんだが…これも例の古代語の類いだったのか」
アイリス「ギルドにこんな本があったなんて」
古代語だとしたら…これは何かのヒントに……って
「あれ?レイジはどこ行った」
アイリス「そう言えばそうですね。さっきまで居たんですけど」
「くっっそ間が悪い奴だなぁ!」
キチガイマンと言い何なんだ?!異世界人は皆こうなのか?!
「はぁ…でもまぁ収穫はあった訳だし…帰るか」
[ギルド2階 図書館前通路]
図書館を出て吹き抜けた通路を歩く。
ここはギルドの2階で、吹き抜けの柵の向こうには
1階の受付や酒場の様子がよく見える。
しかし当初に比べてギルド内が少し寂しく感じる。
アイリス「そう言えば最近のギルド、やけに人が少ないですね」
「あ、やっぱりそう思う?俺も最初気になったけど、意外と普段はこんななのかなって思ってスルーしてたわ」
アイリス「もちろん日によってまばらではありますけど、何日も続けてこの静かさ…ちょっと気になりますね」
「何かあったのかなぁ…わかんねぇや」
あぁでもキチガイマンも最近見ないし…なんと無く町も静かな気がする…
最初来たときはもっと賑やかな印象だったんだが
アイリス「受付で聞いてみよっか」
・
・
・
[ギルド 受付]
受付嬢「私たちも詳細は知らないのですが…
どうやら数日前から謎の病が流行ってるらしくて、皆さん療養されている様です」
アイリス「流行り病?私、噂すら聞いたことないんですけど」
「アイリスが知らないなら俺も知らないよ」
受付嬢「どうやら軍が厳しく情報統制を行ってるらしく、理由は分かりませんが多くの患者が軍に預けられているそうです」
「軍が?」
そんな情報、わざわざ隠して何になるんだ?…キチガイマンの話といい、軍には何かありそうな気がしてならないんだよな…今回も本当にただの病ならむしろ予防を呼び掛けるべきでは?
アイリス「それで、彼、えっとキチガイマンも
流行病で居ないんですか?」
受付嬢「おそらくは…正直私としても彼が風邪を引くイメージがわかないので、
何処か遠征に出ている可能性もありますが」
受付の前で三人で唸りながら首を傾げていると、
いきなりドンッッと入り口の扉が勢い良く開く。
アルピス「軍の機密情報を安売りされては困りますね。受付のお姉さん」
軍の騎士、アルピスがズカズカと入ってくる
「あ!あんたたしか!」
アルピス「失礼。お久しぶりです勇敢な人よ。そして、アイリスさん。」
アイリス「………」
受付嬢「すみませんアルピスさん…」
アルピス「いえ、構いませんよさっきのは軍人としての建前です。」
アルピス「私はどちらかと言うともっと自由な風の騎士ですから。細かいことはどうでも良いです」
…案外適当な人なのか?
受付嬢「は、はぁ」
アルピス「今回来たのは他でもない、その流行り病の情報を公にするためです。」
「!!」
やはり…本当に軍は情報統制を
アルピス「軍の手に負えないペースで蔓延していて居るため、やむを得ず各自自衛に努めて貰おうと
ヴァルキリー元帥の指示です」
アイリス「…結局。流行り病って何なんですか?」
アルピス「?あぁ、二人は知らないですもんね」
「?」
何か引っ掛かる言い方だな……
アルピス「流行り病の正式な名前は『夢双病』
症状は、とてもシンプル。ただ眠り続けるだけです。」
アルピス「どうやら夢を見ているそうですが具体的な事は未だ解明されていません」
受付嬢「え、それって」
アイリス「夢双病……!」
「え、何?知らないの俺だけ?む、夢遊病なら知ってるよ?」
何だ?無双病?…強そうな名前だな…異世界的と言うか…なんと言うか…
アルピス「私の目的は皆さんに夢双病にならないよう自衛して貰うことです。察しの通り、この町の住人は既に3割が夢双病を煩い、冒険者に至ってはまもなく7割を越える見込みです。実に不味いです」
もうそんなに…だからギルドは静かだったのか…
でも
「自衛?……これは流行病なんだろ?予防したってなる時はなるんじゃないか?」
アイリス「違います。夢双病は予防出来ないんです。」
「え、じゃあどうしたら」
アイリス「自衛です」
「自衛って…」
まるで何かから戦って守るみたいな言い方を……
「…まさか!!」
受付嬢「夢双病。別名吸血病とも言われる病で」
アイリス「吸血鬼に血を吸われた人間を半永久的に保存の利く生の血液タンクとして利用するために吸血鬼自身が身につけた力です」
アルピス「つまりこの病の唯一の予防策は」
「吸血鬼からの…自衛」
[現在公開可能な情報No7]
『古代語の本』
洞窟の玉座で見つかった本。
誰も読めない古代の言葉で書かれており
詳細は不明。後に似た言語の本が
ギルドの図書館でも見つかったが、
何故かレイジが読めていた…




