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37話『エルフと人間』

37話『エルフと人間』





[商店街]


夢双病事件からまだ一ヶ月も待たずして

街は随分と活気を取り戻している。

慌ただしく街を駆ける軍人こそ今日は目立つけれど

市民は至って平和に日常を謳歌している。


そんな街のメインストリートを

深く、フードを被った少女が町を歩いている


顔はよく見えない


フードを深く深く被っている



少女の正体は



アカネ(…ノリで来ちまったが……さてどうすっかな)


実に丸2日、魔王城から徒歩でこの町まで歩いてきた様だ。


グラルトとアルピスが数日かけて馬で休み休み走った道を

たったの2日で………

エルフの森を通過し最短ルートを昼夜問わずノンストップで

走破しなくては本来あり得ない距離だが、彼女にとっては

散歩の様な距離だったのかもしれない。


幾年ぶりに町を歩く彼女は逸る思いとは裏腹に

その正体を悟られぬよう、耳を隠すために、

フードを被っている。


アカネ(…人間の町って…今はこんな感じなんだな)


アカネ(…月の女神は…マヤは何処だ?)


アカネ(あの2人の足跡を追ってここまで来たんだが街の辺りから足跡が無くなっちまってた。ちゃんとバレねぇ様にしてんだな)


アカネ(あー……ウチも行きてぇなぁ…異世界…)


アカネ(ワンチャン狙いでここまで来たのに…迷子になっちまった)



ダッダッダッダタダ

後ろから誰かの足音が近付いてくる


アカネ(…?)

振り向いた先に視界いっぱいに知らない顔がデカデカと現れる


???「こんにちはぁぁぁ!!!」

アカネの主観で何となくアホそうな顔をした男が至近距離で喋ってくる


アカネ「……あ?」


???「挨拶しろよ」


アカネ「おまえがしろよ」


???「…したぞ?」


アカネ「…??」


???「……??」


???「……名前…名乗れよ」


アカネ「…アカネだよ」


???「おう。アカネ。俺はレイジだ」


アカネ「…ほーん…」


レイジ「……挨拶……しろよ」


アカネ「………おはよう…?」



レイジ「!!!!!」


レイジ「おはよう!!!」


アカネ(……何なんだ??コイツ)


レイジ「満足した!!じゃあな!!エルフの姉ちゃん!!」


満足したレイジが走り去ってしまう


アカネ「ん」


アカネ「……」


アカネ「ん?」


アカネ(ウチ…耳見えてたか?…今?)


[ギルド正面玄関]


この街でも一二を争うほど大きな建物の前にやってきた


アカネ(デッケェ…なんだこの建物…)


アカネ(入ってみてぇな……)



サッサッ

誰かが入り口の前で掃き掃除をしている


受付嬢「♪」


アカネ(げ…入り辛ぇな…これ)


アカネ(まぁいいや…後で来よう)



[河原]


河原に座り、川を眺めている。



アカネ「………」


アカネ(水は落ち着くな…)


アカネ(………帰ろうかな)


アカネ(…ユカ姉…心配してるかな…)


アカネ「はぁ……」




[街の何気ない道]


アカネが町を歩いていると後ろから誰かに呼び止められる


??「少しよろしいでしょうか」


アカネ「?」


??「お忙しい所申し訳ございません。私。軍所属の

ミキと申します」


振り返った先には

身軽そうな格好をした軍所属を名乗る無愛想な女が立ている

髪の隙間からは不自然に欠けた耳が見えている


アカネ「…?…うっす」


ミキ「実は今、訳あって職務質問強化キャンペーンをしておりまして」


ミキ「見ないお顔でしたのでお声がけさせて頂きました。旅のお方ですか?」


アカネ「……」


アカネ「なんだその変なキャンペーン」


アカネ(…不自然に欠けた耳……)


アカネ(コイツ…もしかしてエルフか?)


ミキ「もしよろしければ…フードを取って頂けませんか?」


ミキ「顔を…見せて頂きたいのですが」


アカネ「………………良いよ」


アカネが…ゆっくりとフードを捲る


少しずつ


少しずつ


……長く尖った特徴的な耳が姿を表す


ミキ「……ありがとうございます」


ミキ「………拘束魔法」


瞬間。地面が光輝き、縄の様な物が伸び、アカネに迫る


これは


アカネ(…!!ドレイン系拘束魔法!!姉貴の得意技!!)


アカネ「んにゃ?!」

拘束魔法がアカネの手足を瞬時に拘束する

本来であればこの不意打ちは明確な詰み…


だがしかし


ミキ「その特徴的な魔力。探知が苦手な私でもすぐに分かりました。

何故エルフがこの街にいるのですか?」


拘束成功で完全に勝利を確信したミキが、尋問の為アカネに近づく。


だがこれは…愚かにも先入観が齎した誤った判断。

エルフだと言う認識が…あらゆる可能性を見逃す。


アカネ「……ニヤッ」


ミキ「!!」


アカネ「着火!!!!」


アカネの射程内にミキが踏み込んだ瞬間、

バコォォォォォォン!!!と地面の爆破。これは足元の石欠の爆破だ。

これにより拘束魔法の起点だった地面が抉れその結果

ミキ自身は爆風に弾かれ


拘束魔法が…崩壊する


ブチィィィィィッッ

緩んだ隙を逃さずマヤの様に力技で拘束の解除を行い、

アカネは有利位置を獲得する。

当然すぐに接近戦には持ち込まず、確実にカウンターを行える

ベストポジションを維持する



弾かれたミキも必死にこの状況を立て直す

ミキ「っっっっ!!!!」

ミキ(コイツが月の女神だったのか?!!!!クソっ)

ミキ(だが何故?!何故爆破魔法が使えた?!月の女神は剛腕だけで突破すると言う話…拘束中に魔法が使える訳じゃないはず!…いや違う…そもそもの前提が異なるんだ!!…拘束中に使ったんじゃない…使っていた!!つまり事前予約の時間差発動!!)


ミキのこの読みは当たらずとも遠からず、アカネの正体こそ見誤っているが

そこから導かれた結論は正答している。


アカネは、ユカリとの模擬戦を繰り返す内に

拘束魔法魔法の特性を把握していた。


アカネが導き出した

ドレイン系拘束魔法の突破方は二つ


時限爆弾による土台の破壊

そして…

魔力を完全に吸われる前に引きちぎる

脳筋戦法


アカネは今

その二つを経験則で意図的に実践した


だがもう一つ、ミキはおろかアカネ自身も気づかない

要素が絡み、この脱出を手助けしていた。


それは、この爆破魔法が通常の魔法体系とは異なると言う事実。

女神伝承魔法のみが持つ特異な魔法体系故のイレギュラー。

その特性が、拘束中に関わらずほんの一瞬着火程度の魔法使用を可能とした


街の真ん中


舞い上がる土煙の中


花の女神を冠するエルフの女が姿を表す


森のエルフと軍の耳欠けのエルフが…土煙の中で睨み合う


アカネ「何でエルフが居るか?だって?…はっ」


アカネ「それはこっちの台詞だね!!」


アカネ「…なんでエルフが人間の町で軍人やってんだよ」


ミキ「私は……」


アカネ「?」


ミキ「人間だ!!!!!」


アカネ「??…あぁそう言う」


アカネ「つまんねぇ価値観だな」


アカネ「耳切りエルフ!!!」


ミキ「貴様っ!」


白昼堂々。二人のエルフが激突する


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