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34話『閉じる力。与える力』

34話『閉じる力。与える力』


魔王からこの世界の謎に関わる重大な情報を得なくてはならない。



だが魔王の記憶はメモルヴァメモリーの閉じる力と与える力副作用で

情報源を始めとするいくつもの記憶が無くなった上に

存在しない記憶に侵されてると来た。これじゃ

現状魔王から得られる情報には全くの正確性がないと言うことだ。


当然、魔王から得られる情報を諦められる程状況は甘くはない。


現状唯一の突破突破方法は


俺の持つ魔王のツガイの能力


メモルヴァメモリーの

開く力と奪う力で魔王の記憶を開く事。


魔王自身は俺の力で本来の自分を取り戻す事を目指して

今日まで暗躍しそしてその見返りに自らの有する全ての情報を開示すると言った。


だが俺は、魔王の記憶を開いた瞬間能力の副作用で

全ての記憶を失う…かも知れない。


間違いなく…魔王の記憶は開くべきだ。


それが魔王自身の救いにも、謎の究明にもなるんだ


だが俺は…俺には……そんな自己犠牲が出来るのか?


…因果応報のペナルティが、どう作用するか分からないんだぞ


魔王の記憶を開かない限りリスクの詳細を知る事が出来ない。

だが開けば俺は不可逆の記憶喪失のリスクを踏む事になる。


詳細不明のリスクを踏める程…俺はまだ馬鹿にはなれねぇ……



[ウルト城 会議室]


魔王のススメが会議室の空気を変えた。

ため息さえ漏らせない程頭を抱えた俺に

皆が気を使ってくれている。


マヤ「悩む事ないよ。……こんな事間違ってる」


魔王「私も、私欲込みでおすすめしない。」


グラルト「惜しいっちゃ惜しいがリスクがデカすぎる」


アルピス「君ばかりが背負う必要は無いですよ」


ゆきな「無理…しないでね」


「あはは…ありがとうございます…」


「……」


「ちょっと…町見てきます」


埒が明かない問題に真正面から向き合っても仕方がない


悩むなら有意義に悩め


冷静に天秤にかけろ


何か無いか…リスクを踏まず利益を得られる


もう一つの選択肢は…!!



[グラルト国 廃墟]


ルナさんの記憶で見た街の現在の姿を、今度は自分の目で見ている。

棒立ちで遠くの方を眺めていると、視界の隅からルナさんがやってきた。

隣に立って、同じ方向から街を見てくれている。


ルナ「!!…こんなところに来て…どうしたんですか?」


「あ…見つかっちゃいましたか」


「…せっかくだから見に来たんです…」


ルナ「そう…ですか」


ルナ「…今じゃこんなですけど、昔は栄えた町だったんですよ!」


ルナ「観光客も沢山来て、お酒で有名で、外国の王様なんて皆虜にしてたんですから!!」


「良い町ですね」


ルナ「……何か…ありましたか?」


「…いえ、別に…特に何もなかったですよ」


「一旦休憩中なんです」


ルナ「…無理はしちゃ駄目ですよ」


あぁ…気を遣わせちまったのか…


思えば…ルナさんは俺なんか比べ物にならないくらい

多くの苦悩を乗り越えてきて、今日ようやくこの街に帰ってきたんだ。


俺も最初は…きっと同じ事を夢見ていたはずなんだ。


ありふれた毎日を、ただ誰かと過ごせる日常と

その当たり前をくれた誰かに礼を伝えたいが為に

俺は自分の世界に帰る為に魔王討伐を夢見ていた。


今じゃもう、友達の名前も、住んでいた街も

…自分の名前さえ忘れてしまった。

メモルヴァメモリーを使う度に俺の中から記憶が消えている。


分かってるんだ、この力は使えば使うだけ自分の記憶を失う事になる。

…因果応報の副作用は…正しかった。俺が一番理解しているはずだ。


大事だった物を、大事だって感覚ごと失うと、喪失感すら感じられねぇ。


本当にルナさんは強いな。


故郷を失って、それでも強く生きて、

一時は拠り所だった思い出すら失って人を襲うヴァンパイアになってしまったけど

今はこうやって誰かを励ませるほど前を向いている。


魔王だってそうだ、会う前は魔王だって先入観で

悪魔のような存在だと思ってたけど、実際会ってみたら

結構愉快な人で…あんなだけど本人はすでに自分を見失って

それに苦しんで、ようやく自分を取り戻す方法が目の前にあるのに

それでも私欲に溺れず俺に忠告している。


二人は…確かに結果的に悪とも言える行動に出たけれど、その根底には

きっと悪意はなかった。その人が持っていた善意や欲がその形でしか

出力出来なかった。それだけだ…行動の善悪は裁けても心の真意までは

他人には測れない事を知ってしまった。


二人が夢双病で街を襲った事だって…振り返れば

今日この場所に俺が来る為には不可欠な物だった。


過ちがなきゃ…この結果はなかった。


それに罪があるなら俺だって同じだ。

魔王に記憶を閉じられて命令されていたとはいえ

俺は街を襲ったルナさんをヴァルキリー元帥を欺いてまで

自分のエゴを貫いて結果的にルナさんの記憶を開いて奪った。


……記憶を…開く……??


そうだ。ルナさんは確か、吸血鬼化の余波で記憶が歪まないように、魔王が記憶を閉じていた……


閉じなかった記憶は歪んで、暁のヴァンパイアの恨みとして増長されたけど、閉じていた思い出だけは守られていた………


もしかして…

閉じた記憶は…干渉を受けないのか?


だと…すれば…!!


[ウルト城 会議室]



グラルト「それで?…魔王さんよ…あんたホントに記憶が曖昧になってるのか?」


アルピス「惚けてるだけなら…それだけの事ですよ」


ゆきな「…確証があるわけじゃないけど…嘘だとも思えないな…私は」


グラルト「………」


マヤ「……」


バタンッッ

扉を力強く開ける


魔王「おや」


マヤ「!!」


グラルト「おぉ、お帰り!」


アルピス「気は休まりましたか?」



「えぇ。とっておきのアイデアが浮かびました」


「魔王を救った上で!必要な情報も全て引き出す」


「リスクを潰して利益を得るアイデアです」



魔王「!!………ははっ…聞かせてくれ」



「俺が魔王の記憶を開く前に」


「魔王が俺の記憶を閉ざす」


魔王「!」


マヤ「それって……ルナさんにしていた事を…」


「そのまま俺がする!!」


グラルト「なるほど…確かにそれなら…あり得るのか?」


アルピス「…??…あ、そういう」


ゆきな「…考えたね」



魔王「……確かに…君の記憶を閉じた後に、君に命令を与えれば私の記憶をノーリスクで開くことが出来るだろう」


魔王「しかし…それでは君自身の記憶は誰が開く?」


グラルト「…自分で開ければ良いんじゃないか?」


魔王「残念だが。無理だ」


グラルト「……?」


マヤ「…もしかして…自分に能力を直接付与できないの?」


ゆきな「…オールーリスには…そういう制約無かったけど

…メモルヴァメモリーにはあるの?」


グラルト「いや…オールーリスはあくまでも物を動かすだけだ……そもそも人間には付与できねぇ」


グラルト「…ともすりゃ…あり得るのか?」


アルピス「……!!じゃあ閉じた記憶をそのまま付与とかは!!」


魔王「…可能だが…それは私が覗き見た彼の記憶を再現コピーすると言うことだよ。それは本当に彼と言えるのかい?」


アルピス「……?」


ゆきな「…テセウスの船的な?」


マヤ「イメージはそうだね」


目的があったとは言え…

ルナさんの記憶の時にわざわざ回りくどいやり方を選んでんだ。

閉じて付与する魔王だけで完結できるやり方に

リスクがある可能性は考慮していた。


だから…俺が本当に聞きたいのは



「…閉じた記憶は…きっかけがあれば開くんじゃないか?」


マヤ「!!」


「人の記憶ってさ、忘れててもきっかけ一つで急に思い出したりするだろ?……もし…メモルヴァメモリーで閉じた記憶も…自然に開く可能性があるとしたら…どうだ?」


「無茶苦茶だが根拠は二つある…!」


「一つ。メモルヴァメモリーは相手の記憶を見る時、

自分と関連のある記憶を鮮明に覗き見ることが出来る。

これって関連性ってのが鍵になって記憶に入れてるんじゃないか?」


「そして二つ…根拠は薄いが可能性はある説だ」


「魔王…あんたは、自分の記憶が開く可能性に賭けて

、日本人を探してたんじゃないのか?同じ転生者しか持たない現世の記憶をトリガーに記憶を開けようとした…」


「…どうだ?」


ゆきな「…恐ろしいほど…筋が通っている」


魔王「………そうだ。…そして確かに。私の記憶の一部は…それで開いた」


「なら決まりだ」


「マヤ」


マヤ「?」


「例の約束。忘れてないよな?」


マヤ「………?」


「忘れてんじゃねぇか」



ポケットに手を突っ込み

くしゃくしゃのメモ紙を取り出す

  

皆に見えるように

メモを広げる


マヤ「…!!それは!」


今もこの約束が有効なのかとか

そもそもそんな手段あるのかとか

そんな事今はどうだって良い


何一つ手立ての無い回答不可能の難問に対し


俺は俺の持ち得る全てで可能性を叩き出す



力強く机に叩き出されたメモには


こう記されている



『『『異世界にて魔王討伐!!!

      報酬は現世への帰還!!』』』



魔王「……ほう」


ゆきな「!!」


グラルト「わお」


アルピス「…!」


マヤ「?!」


マヤ「まさか」



「今から俺は魔王を倒す」


「勿論、殺したりはしない」


「ルナさんで一度やった事を…そのままする」



「魔王は俺の記憶を閉ざす!!」


「俺は魔王の記憶を開く!!」



「そして俺の記憶は……」



「現世で開く!!!!!」














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