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31話『花鳥風月』

31話『花鳥風月』


花の様に鮮やかに


鳥の様に優雅に


風まかせも心地よく


月明かりに照らされて


最も美しい物の名を冠した四人の女神と4つの力が揃っていたのも今は昔。


花は枯れ

鳥は絶滅し

風も月も雲隠れ


造花ばかりが世を彩る美しさを失った世界を憂い、人々は

また再びこの世界に女神を求めた。


美しい物を求める時、その心は美しくあれるのだろうか?



[魔王の間]


四つ指数えて四人の女神

花鳥風月の一角、風の女神に指を刺す魔王。


その先には自らの正体にまるで無自覚な

風の騎士が立っている。



アルピス「風の…女神??」


グラルト「はっ、女神だと?アルピスはまず女じゃ…」


グラルトがアルピスの方へ視線をやると

少し目を伏せるアルピス。目が全く合わない


アルピス「……」


アルピスがゆっくりと首を振る


グラルト「………まじか」


中性的な見た目をしている上にアルピス本人も

騎士として男に見える様に振る舞っていた事もあり

誤認そのものには慣れて居たが、この旅の中で

グラルトの前では鎧を脱いで珍しく薄着で過ごしたり

本人的には年頃の少女として振る舞っていた事もあり、

ちょっとしたショックと恥ずかしさで目を伏せている。


魔王「………グラルト…君ってやつはどこまでも最高だな」


嬉しそうに魔王が笑っている。だがその笑顔とは裏腹に

魔王は既に次の攻撃への準備を開始している


魔王「さぁ、第二ラウンドだ」


魔王「姫を助けに来たんだろう?」


魔王「せっかくだ、私が勝ったら君達ともお茶がしたい」


魔王「アルピスちゃんも自分の事もっと知りたいでしょ?」


アルピス「自分の正体なんて興味ない…!!僕が知りたいのは…もっと大きなことだ!!」


グラルト「…知ってる事、全部吐かせてやる」


これから行われるのは、

能力を封じた上ただの物理戦か?



全てはイレギュラーによって進行する



魔王「メモルヴァメモリー……ゆきなちゃんには閉じて与えた」


魔王「一言。たった一言…それを言うだけで…私は勝つ」


グラルト「!!!まさか!!」


アルピス「……?」


アルピス「!!!」


グラルトがアルピスを抱え部屋の外へ飛び出す。


アルピス「わっ」


グラルト「変なとこ触っても怒るんじゃねぇぞ!!」


グラルト(くそっ…!!最悪だ)


何故グラルトは魔王への攻撃を控えていたのか?

彼であれば例えオールーリスが封じられようと

物理戦闘を行う事が可能だ。だからこそアルピスは

ずっと疑問に思っていた。何故魔王に斬りかからない?

そもそも何故オールーリスを使わないのか?

因果応報があるとは言え、自力で回避出来る範囲での

使用なら可能では無いのか?


グラルトはあらゆる疑問に対し自身の仮説で答えを有していた。

全ては…この瞬間を恐れて



ゆきな「「「………オールー…リス」」」


グラルト「…バケモンが…!!」


魔王によって命令の記憶を書き込まれたゆきなが

能力を行使する

その瞬間部屋中に散らばった武器が宙へ浮く


同時に、逃亡していた

グラルト、アルピスの動きも強制的に静止し


一切の抵抗手段を持たないグラルト達の周囲を刃が囲む


体はまるで動かない

衣服ごと固定されている


魔王がゆっくりとやってくる


足音を鳴らしながら躙り寄る

魔王「君もこの手を使えば私に初手で勝てたんじゃない?」


グラルト「…」


魔王「色々警戒してたんだろうけど、判断を誤ったね。」


アルピス「貴様!!」


魔王「大丈夫安心して。殺さないし傷付けもしないから」


グラルト「信用ならねぇな、俺の力を奪っておいて」


魔王「あるべき場所に返しただけだよ」


魔王「オールーリスは元々ゆきなちゃんの力だろう?」


アルピス「?!」


魔王「彼女の身に余る危険な力だった、だから君が因果応報のリスクごと力を引き受けた。」


魔王「とは言え、完全譲渡ではなく、例えるなら能力へのアクセス権を与えられた?って方が近いのかな。だからゆきなちゃんが死んだり、ゆきなちゃん自身が使用を制限すれば与えられた権利はそのまま失効される」


魔王「だからもし、私がゆきなちゃんの意識を奪って君のアクセス権を制限すれば、

君は一切のオールーリスの使用が不可能になる」


魔王「だろう?グラルト君」


グラルト「……誰も知らねぇはずだぞ」


本来自分とゆきなしか知り得ない情報を自分達以上に把握している

魔王に対し、ただならぬ不気味さを感じるグラルトと

今はただ黙って話を聞き、打開策を考えるアルピス。


魔王は動けない二人の前で嬉しそうに喋り続ける


魔王「記憶を見たのさ、単純な理由だろう?」


魔王「正直驚いたけどね、ゆきなちゃんの魔道具とオールーリス…あれは私が唯一信頼できる女神様から貰ってたみたいだ」


魔王「世界ってのは本当に狭いね」


魔王「私は調べ事が大好きでね、もちろん君の先祖の事も大体見当がついているさ」


グラルト「ペラペラとよく喋る口だな。お茶がしたいんだろ?なら俺の質問にも答えろ…結局お前は何がしたいんだ?」


魔王「はっはっは!!こんな状況でも汗ひとつかかないね!」


魔王「私の目的はね、救済だよ。全員を救うんだ」


アルピス「…魔王が?」


魔王「そうさ!!冒険者も含め全員を…女神から救う」


魔王「だから協力しないか?」


アルピス「…女神が狙いなら…僕も殺すんですか?」


魔王「まさか…君も被害者じゃないか」


グラルト「仲間使ってこんなことされて…お前を信じろと?」


魔王「信頼はいらない。事実だけを信じれば良い」


魔王「この世の厄災は全て女神がもたらしている」


魔王「4人の女神と4つの力。これさえ女神から奪えれば私は何だってかまわない」


魔王「…恩人のためなら、私は魔王と呼ばれることさえ厭わない」



グラルト「へー…そりゃずいぶんと大層な理想だこと」


アルピス「…」


魔王「風の女神アルピス。そしてグラルトウルト、ゆきな」


魔王「君達は私が守るべき存在であり」


魔王「風の女神とオールーリスは…この世界の鍵だ」



魔王「…そもそもこの状況で…君達に選択肢があるのかい?」


グラルトとアルピスは今、オールーリスにより拘束状態にある

当然太刀打ちする術は無い。

一切の身動きが取れない以上、ゆきなの意識でも戻らない限り

勝機は訪れない事を二人は既に理解している


魔王「まぁ、結論は急がないさ」


魔王「一度眠って良く考えてくれ」


二人の頭に向けて両腕を伸ばす

魔王「「「メモルヴァメモリー」」」


能力が発動されるその直前


???「させねぇよ!!!」


魔王の背後、脆くなった外壁を突き破り

何者かがド派手に城内に侵入する。


城の最上階では到底あり得ない経路での侵入に魔王は

一瞬驚くが、瞬時に理解する。


破られた壁の向こうからさす月明かりが侵入者を照らし


その姿を露わにする。


風が花びらを運び


???「着火!!!」


その花びらは……爆発する


魔王「!!!!!!」


アカネ「乱れ花火!!!」


バババババババババ


乱れ花火によって

グラルト達を取り囲む刃物が弾け飛び

その火花は魔王の四方を囲み、一切の行動を封じて自由を奪う。


魔王「あはっ!」


空からのド派手なエルフの奇襲。

本来あり得ないこの異常事態を


さらに掻き乱す。



「「「「メモルヴァメモリー!!」」」


「ゆきなさん…今…開けましたよ」


アカネが暴れていた隙にゆきなの側へ近づき記憶閉ざされた記憶の解錠を行う


これにより

オールーリスの解除に成功。二人が再び自由を取り戻す


グラルト「!!」


アルピス「あの…影は…」


解放された風の女神、アルピスが崩落した外壁から見上げたのは


月を背にまるで鳥の様に空を舞う


悪魔の翼


アルピス「暁のヴァンパイア?!」


ルナを見て咄嗟に戦闘態勢に入るアルピス


魔王「!!!」

乱れ花火の隙を見つけ、一か八かの脱出を試みる…しかし


マヤ「「「ルミナス・グラビティ!!」」」


魔王「うっっ!!これはっ」

重力強化で魔王が地に伏せる


ユカリ「拘束魔法!!」


ユカリ「ごめんなさい。魔王様。あんなに良くして貰ったのに…後で…事情は話しますから…今はお許しください」


乱れ花火、ルミナス・グラビティ、ドレイン系拘束魔法による3段階の連携技により。魔王はあらゆる抵抗手段を失う


暁のヴァンパイアが花の女神と魔王のツガイを最上階へと導く事によって奇襲に成功

遅れて地上から階段を駆け上がったマヤとユカリの合流した。


グラルトとアルピスがこの場所にいる事は愚か、城内の何処にいるのかさえ

一切の情報を持たなかったはずの彼らが、迅速にこの行動に打って出られたのは

ルナ、マヤ、ユカリの魔力探知による索敵と、アカネの猪突猛進、

そして彼の奇策によって生まれた絶対的な必然性。


「ルナさんとエルフ達のお陰で最短ルートでウルト城…魔王城まで来ることができた」


「そして……やっと会えたな…魔王!!」


「俺はお前を倒して現世に帰る!!つもりだったが……」


魔王「……君が…君がそうなのか!!」


魔王「やっと見つけた…私のツガイ」


地に伏せる魔王の前に、

全ての仲間を背にした男が

力強く立っている。


男は現世への未練とある願いの為に


女は女神への恨みと恩人の為に


転生者と魔王


開く力と閉ざす力


奪う力と与える力


出会うべくしてこの二人は

運命の赴くままにこの地で出会う


マヤ「捕まってるのに…良くしゃべるね」


グラルト「…状況が…わけわかんねぇ…知ってる顔が一人しかいねぇ」


アカネ「……誰が誰だ?」


ユカリ「……」


アルピス「?????」


ルナ「…ここが………」



魔王「……ついに……女神が揃った…力も…後2つ……」


マヤ「…やっぱ知ってるんだね…」



魔王「……爆発の花の女神」

アカネ「んあ?」


魔王「空を舞う…羽の生えた女神…」

ルナ「??」


魔王「自由に流れる風の女神…!」

アルピス「……」


魔王「重力を操る…月の女神!!」

マヤ「…何処まで知ってるのやら」




魔王「オールーリスも…メモルヴァメモリーもここにある!!」


魔王「妥当女神まで後2つ!!!」


魔王「力を合わせて女神に立ち向かおうじゃないか!!」



世界の求める美しさは、この荒れた大地に蘇る。


花鳥風月。


最も美しい物の名を冠した女神達が集結する










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