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30話『風のゆくえ、自由の女神』

30話『風のゆくえ、自由の女神』





[魔王城]


絶景の景色。370年の時を超えてこの地に君臨する

王の名は、ユーリウルトか、あるいは魔王か


生きとし生きる全ての者達が最初に交わる始まりの国

グラルト国ウルト城その最上階には今

世界の巨悪と疑われた魔王と呼ばれる奇妙な女と囚われた勇敢な姫。


外を眺めていた魔王がニヤリと笑い、ゆきなの方を見る。

部屋の中をゆっくりと歩き回る魔王に対し、ゆきなはじっと座って魔王を目で追っている。


魔王「……来たか…ついに」


ゆきな「…..?」


魔王「もうまもなく、この城内に、グラルトウルトが到着する」


ゆきな「!!」


ゆきな(やっぱり…来てくれた…!)


魔王「…彼らはまだエルフの森かな」


魔王が足を止め、ゆきなの前に立つ。


魔王「座学をしようか。ゆきなちゃん。」


魔王「花鳥風月の名を冠する特別な女神が居るんだ」


ゆきな「…へー…それが?」


魔王「爆発の花、空を飛ぶ鳥、自由な風、重力の月」


魔王「彼女たちを分かりやすく表すならこうなる」


ゆきな「さっきから何の話?」


魔王「この四人とオールーリス…メモルヴァメモリー、そして後2つ。」


魔王「8つのピースが揃えば世界の創造主になれるんだって」


ゆきな「…それが…魔王の目的?!」


魔王「いいや………」


魔王「……女神の狙いさ」




[グラルト国 廃墟]


エルフの森を抜けた翌の夜、ついにグラルトとアルピスが

グラルト国へやってくる。


今や魔王城の城下町と化したこの街は

かつてこの地に存在した栄華は見る影もなく廃墟だけが立ち並ぶ。


アルピス「ここが…魔王の…最初の被害国!!」


グラルト「あぁ…まぁ何百年も前の話だ…よくこんなに建物の原型が残ってたものだな」


魔王の掌の上とも言えるこの場所で無駄な時間を取る事を避けるべく

即座に魔王城へ乗り込む準備に取り掛かる


グラルト「馬を置いたら乗り込むぞ。」


アルピス「えぇ…いきましょうか…」



グラルト(グローリーウルトの手記と、その他歴史書の整合性で導き出した

魔王がゴブリンをこの町に発生させたと言う仮説の元でこの街まで辿り着いた訳だが)


グラルト(俺の違和感が正しけりゃ…俺の仮説には重大な欠点がある可能性が高い。)


グラルト(俺の仮説はゆきなが言ってた女神とやらを全く考慮しない説だ。…この仮説に誤りがあるなら…それは間違いなく女神関連だ)


グラルト(女神は完全に別件か…それとも関連があるのか、魔王自身が女神か…)



[旧ウルト城 魔王城]


崩落した外壁から建物内部へ侵入し、長い廊下を歩く


アルピス「…しかしこの町に本当に魔王は今も居るのでしょうか」


グラルト「ここに来るまでは俺もそれを危惧していたが、ここに来て確信した」


グラルト「少なくともゆきなはここにいる」


アルピス「え…もしかして魔力探知の類ですか?」


グラルト「俺も使えたらもっと楽なんだがなぁ、まぁ俺は俺の得意でいく」



アルピス「良くわかりませんが、貴方を信じます…」


アルピス「流石に城内は広すぎて探索はしんどい気もしますけど、位置も把握出来てるんですか?」


グラルト「流石にそれはまだだ」


アルピス「え」


グラルト「だからこれを使う」


グラルトがポケットから小さな小袋を取り出し、手のひらに乗せる


グラルト「「「オールーリス」」」


アルピス「!!」


グラルトが手に持った小袋が、独りでに動き出す

それはまるで、この城のどこかにいるゆきなの場所に

二人を案内するかのように。


アルピス「ゆきなさんの位置をマーキング?でもしてたんですか?」


グラルト「まぁそんなとこだな」


グラルト「おら、行くぞ」



[ウルト城 大階段]


グラルト「俺達の主目的はあくまでもゆきなの討伐、次に情報収集。魔王討伐はサブだ」


グラルト「足に爆弾抱えた奴と、下手に技を乱発出来ない俺。まぁ戦闘が長引けば負けるのは俺たちだ」


アルピス「えぇ。力の全てがわからない相手ですから…最優先は救出と逃走です」




[魔王城   魔王の間]


ゆきなの頭に手をかざす魔王。

魔王がゆきなに何かをすると、ゆきなはその場で倒れ

その瞬間ついに勇者達が到着する


ゆきな「………」


魔王「「「「メモルヴァメモリー」」」」


バンッッッと扉を蹴り壊す音が鳴り響く


音のする方を振り向いた魔王の視線の先には


二人の勇者が並び立つ。


魔王「……早かったね…ずいぶんと」


アルピス「…!!!ゆきなさん!!」


ゆきなが地に倒れている


魔王「彼女には…悪いけど眠って貰ってる。」


魔王「もちろん害は無い。ただ、全ての記憶を閉じた。

今はもう体の動かし方さえ忘れているだろう」


魔王「…せっかくなんだ、お話ししようか」


魔王「「「メモルヴ「「「「オールーリス」」」


不意をつこうとした魔王に対し、グラルトが攻撃を仕掛ける


グラルトが用意していた複数の武器が魔王目掛けて飛んでゆく


魔王、瞬時に攻撃を捌く

しかし全てを弾ききれず、何本かは

カスったようで、頬や手足から血を流している


魔王「あはっ…対話は無理な感じ?!短気だね」


グラルト「…!!」


グラルトの追撃、しかしなぜか

魔王に攻撃が飛び掛かる直前に宙を浮いていた武器が地に落ちる。

原因不明のイレギュラーによってグラルトに致命的な隙が生まれ、

魔王が一気に攻めにかかる。


アルピス「?!」


グラルト「くっそッ!!!」


魔王「短期決戦だ!!!!メモルヴァメモリー!!!」


魔王がグラルトに飛び掛かり、頭に手を伸ばす。

記憶封印による戦意喪失を狙った攻撃、

しかしこの時、魔王自身も致命的な誤りをしていた。

この隙を、風の騎士は逃さない


一見非戦闘員に見える松葉杖の騎士に対し、魔王の警戒は1割にも満たない。

それ故にグラルトへの意識が最大になったこの瞬間、アルピスの攻撃は刺さる。


アルピス「着火!!!」


バフッッッッ

投てき式魔道具から放たれる


アルピスの得意技

爆風攻撃


魔王はメモルヴァメモリー発動直前に弾き飛ばされる


魔王「ちぇっ」



すぐに体勢を整え、魔王がすかさず間合いを取る


アルピス「大丈夫ですか?!」


グラルト「大丈夫…じゃねぇな…」


グラルト「あいつ…知ってやがるな」


アルピス「?」


魔王「…♪」



グラルト「…理屈はわからねぇ…だが確実なのは」


グラルト「奴は俺の弱点を看破してやがる」



アルピス「?!!…まさか」


グラルト「俺は今………オールーリスが使えねぇ」


アルピス「どうして?!」


グラルトは、この異常な状態を原因と共に理解し、仮説を立てている。

だがそんな事を悠長に語れない程、状況は最悪な方面へ加速する。


グラルト「くるぞ…さっきアイツに飛ばした攻撃…!!くっそ、アイツわざとカスりやがったな!!」


アルピス「因果応報の……反撃?!」


魔王「捌ききれるかな?!今の君に!!!」


無数の攻撃が、グラルトに牙を向く


殺意で放った攻撃が


操縦権を失い暴走する


グラルト、自力で捌こうと動く


数撃を剣で弾く


しかし、不利な屋内での予測不能の攻撃に対し、

対応し切ることは難しく、到底一本の剣では回避のしようがない

攻撃がグラルトの命を狙う


グラルト「くっそっ!!」


アルピス「着火!!!」


バフッッッッ

大きなダメージを覚悟したグラルトの危機に

アルピスが爆風で武器を弾く事で対応。

再び、盤上がリセットされる。


魔王「やるじゃん」


グラルト「俺が…ただの能力頼りで生きてたら死んでたぜ」


グラルト「あいにく俺には自力と…仲間が居るんでね」


魔王「……いい」


魔王「凄く良い!!!」


魔王「守られるだけの"女神"じゃないって事だね!!」


魔王「あははははっ…何て…ロマンチック…!!」


グラルト「…?女神?」


グラルト(やはりコイツも…なにかを知っている)


グラルト(…正直あまり気にしていなかったが、魔王は明らかに女だ。魔王が女神って線は元より強くなったか?)


アルピス「…女神って言うのは…結局何なんです?」


魔王「??????」


魔王「何で君が知らないのさ」


魔王「あー…あぁ…そう言う…事ね」


魔王「…身分を知らないもの同士の関係ってのも凄く良い!!」


魔王「むしろそっちの方が刺さるというか」


魔王「最強の男とボーイッシュな戦士!!更にその正体は互いに壮大で壮絶な…己の運命も知らぬまま、寄り添って…」


魔王「…興奮するじゃないか」


急に一人ではしゃぎ始めた魔王に対し、唖然とする二人。

明らかな隙ではあったが、あまりの光景に行動が遅れる


グラルト(…もしかしてコイツゆきなと同類か?)


アルピス「…教える気が無いなら…!!口を割らせるまでです!」


アルピスが剣を抜く

ルナ戦の怪我は癒えていない。

片足はまだ不自由なままだ

だがそれは


この自由な騎士が止まる理由にはならない


グラルト「…知ってる事全部割らせる。ゆきなも助ける。

……勝負はこれからだろ」


最強の能力を封じられた丸腰の勇者は

風の騎士と並び立つ


そして


魔王は


真実を口にする



魔王「花鳥風月……美しい物の名を冠した女神が一人」



魔王「…ここにいるよ」



アルピス「!!」



魔王「風の女神…最後の一人」


魔王「自由な風の少女…」


魔王「アルピスちゃん?」






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