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3話『俺の役割』

【本作の表記】

名前「セリフ」 →登場人物の会話

???「セリフ」 →正体不明の人物の会話

「セリフ」 →主人公の会話

3話『俺の役割』


[ギルド]


戦いの準備を終え、これからギルドを出ようと言う

タイミングで、トントンと誰かに肩を叩かれる。


ゆきな「ねぇ君」


振り向くと、

そこには少しだけ年上に見えるお姉さんがいた

「はい?……えっと、どなた…ですか?」

アイリス「?…ゆきなさん?」


ゆきな「やっほーアイリスちゃん!」


「あの…え?アイリスさんの…知り合いですか?」

アイリス「えぇ…このギルドで一番強い人の…」


ゆきな「自称No.2のゆきなさんでーす」

無邪気にピースでポーズを取る。

……お姉さんが…?


アイリス「…酔ってます?」

「えっ」

ゆきな「よってらいよ」

とぼけた顔をしている。



でも…

このお姉さんが例の一番強い人の仲間なのか、

しかしそんな人が何でわざわざ俺なんかに…

「……その…No.2?の人が俺達に何か…?」


ゆきな「いやぁ君からは他と違う匂いを感じたからね」

こちらの目を、じっと見つめてくる

「……え」

まさか…また気付かれたのか?!


アイリス「…?私と同じ石鹸のはずですが」

ゆきな「そう言う事じゃないんだよアイリスちゃん」


ゆきな「……え?!」

あーそうだよな…そりゃ

「まぁ…そう言うリアクションになりますよね」

普通に考えて…

出会ってすぐに家に…とか異常だもんな普通。

切羽詰まりすぎて考えてなかったけど…

異世界基準でもおかしいことだよな。そうだよな。


……でもゆきなさんの言う匂いって何だ?…まさか本当に転生者だとバレたのか?……いっそ…もっと情報をオープンにした方が…


ゆきな「アイリスちゃん……のこれは、

いつもの事か!私達もたまにお世話になるし」


ゆきな「残念だったね君!アイリスちゃんは無理だよ!」

アイリス「ゆきなさん?」

「いや…まぁはい。」


アイリス「…結局用件はなんですか?」

ゆきな「いやぁ…ちょっとお願いがあってね」

「お願い?」


ゆきな「一緒にさ、ゴブリン倒してくれない?…実は軍からうちのリーダーに依頼があってさ…」

一番強い人は直接依頼があるのか

ゆきな「何やかんやで私がやることになったんだけど…一人じゃ寂しくて」


ゆきな「だからお願い!!報酬は倍出すから一緒に…」

アイリス「良いですよ。丁度チビゴブリンの討伐に行くところでしたから」


ゆきな「!!やったー!!」


[町の広場]


ゆきなさんが必要な物を用意している間、

アイリスと二人で広場で待つことになった。


ゆきなさんの事で気になる事をアイリスに聞いてみた

「ゆきなさんの…さっきのあれって」

アイリス「?」


「あーいや、匂いがどうっての…もしかしてゆきなさんにも気付かれたのかな?…転生者って」

アイリス「…どうだろうね」


「…いっそ転生者ってことを明かす方が」

アイリス「それは、よした方が良いと思うよ」


「…なんでだ?」

まぁ…確かに、リスクは…あるのか

アイリス「誰に聞かれてるかも分からないですし」


アイリス「私以外には黙っておくべきです」

「わかった。そうするよ」

今はまだ困ってないんだ。素直に忠告を聞いておこう。行方不明の転生者の話もあるんだ、リスクは警戒して当然だ……

ん?…じゃあ…さっきアイリスが同じ石鹸がどうのって言ったのって…もしかしてわざと話をそらそうとしたのか?

[平原 ゴブリン発生報告地]


町からしばらく歩いた先、廃村を中心に平野が広がっている。

一部には切り立った丘があって、

ここのエリアがゴブリン討伐依頼における

主要な拠点になっているそうだ。

俺たちはその廃村からは少し離れた場所に来た。


ゆきなさんが軍から任された今回の任務は、

急増したゴブリンの討伐と原因の究明だ。

原因…ゴブリンにボスでもいるのだろうか?

まだ見てもない怪物の事は想像もつかないな。


歩きながら、ゴブリンを探す。

ゆきなさんが喋り始める


ゆきな「いやぁ今日は特に冒険者が多かったねぇ」

「?廃村にいた人達ですか?」


アイリス「討伐系ってほんとはあんまり人気無いんだよ。」

ゆきな「そ、報酬は高くても命懸けだし、ましてゴブリンなんて女性冒険者にはリスクの塊だし」

アイリス「……」


「?やっぱりゴブリンって強いんですか?」

ゆきな「うーん…単体は結構弱くて脆いんだけど…いかんせん数がね、物量で押されたら私でも厳しいかな」

アイリス「…ゴブリンが一番恐ろしいのは習性の方です」

「?」


アイリス「ゴブリンは、女性を優先的に狙う。」

「…」

女性を優先的に……?…そう言う習性って理解だけで終えて良い話なのか?これは


ゆきな「…その話は、後でまた今度しよっか」



ゆきな「今は先に…」

ゆきなさんが指を差す


アイリス「!!」

「あれは…..!」

指を指した先からは


チビゴブリンが3匹、真っ直ぐ向かってくる


同時にゆきなさんとアイリスが武器を手に取り

戦闘体勢に入る

ゆきな「さぁ構えてね~!!私とアイリスちゃんが惹き付けるから、君がトドメ役ね」


「え?!ちょっと!」

有無を言わさぬ命令に気を取られ、

俺はまだ剣を抜けていない


アイリス「胴体を切り離せば奴らは死ぬから。大丈夫。結構脆いですよ」

「え、アイリスも初陣だよな?」

アイリス「うん。私も初めてです」

 

そう言うと

アイリスがゆきなと共に一気に走り出す


一直線に、ゴブリンの進行方向

ゴブリンを見つめる俺の背後の方角へ

向かってくるゴブリンから背を向けながら

真っ直ぐに走る。


「え、え、え、え?!俺どうしたら」

何の説明もされていない…パッと見二人の動きは

敵に背を向ける敵前逃亡。

しかし、そんなことをするとは思えない。


半分パニックになりながら、必死に頭を回す


ゴブリンがこちらに走ってくる。良く見ると石器のようなものを持っている。

俺の真後ろに走っていった二人を追っているのか、それとも俺の方に走っているのか、ゴブリンが向かってくる


ゆきな「君はそこで!!思いっきり!!剣を振るって!!!」

背後から叫ぶ声がする

ゴブリンから目を離せないので、振り向くことは出来ない。

「えぇ?!」


んな…んな単純な話なのか?!

あーでも…もう来ちまう…!!


「剣…剣!」

必死に剣を片手で握る。しかし、

異様に重い。あまり気にしていなかったが

この剣、素人が握るには案外重たかった!!


くっそ


どうにでも……なれ!!!


咄嗟に、剣のグリップを両手で握る

構え方なんて知らない


正面から向かってくる物を、

両手で構えた長物で咄嗟に攻撃するなら!!


現代人はこうなるだろ!!!

「うりゃぁぁあぁぁぁぁ!!!」


向かってくる腰丈くらいのゴブリンの胴体をめがけ

まるでバットでも振るかのように剣を振り被る!!


腰の入ったフルスイング!!!


腹のど真ん中、ゴブリンに命中!


「!!!」

プリンを掬うかのような柔らかさで

ゴブリンの胴体を切り離す


「?!うっそ…まじで…こんなんで?!」

だが、残り二体、こちらへ向かってくる


しかし、体勢が悪い。確実に取り逃す

ゴブリンは…俺を見ていない!!!

「まずいっ二人の方に!!」


後ろから…気配


ゆきな「上出来…!」


ゆきなとアイリスが

俺の背後から飛び出す


ゆきな「切断魔法!!」


アイリス「ッッ!!」


ゆきなさんは魔法で

アイリスは刃物で

ゴブリンを斬り伏せる


「す、…すげぇ」

今…俺達は…倒したのか?…ゴブリンを…

何か思ったよりも呆気ないと言うか…

怪物とはいえ、ヒト型の生き物を殺したのに…

正直あまり実感が


ゆきな「いやはや、君も良くやった!!ナイス!」

アイリス「お疲れ様です」

まぁ…仲間と戦う感じは悪くない…かも



「所で…ゴブリンってこれが正攻法なんですか?」

ゆきな「あーいやぁ」

明らかに歯切れが悪い


アイリス「…もっと楽なやり方があります」


ゆきな「君でも倒せるやり方、これしか思い付かなくてさ」

まさか…

この人達俺に倒させる為にわざわざ危険なやり方選んだんじゃ……


ゆきな「私達が囮になれば、君だって剣振るだけで倒せるかなぁって」

でも…こんなので俺は本当に良いのか?

今日1日、ずっとこのやり方で戦うのか?

……冗談だろ……だったら!!


「…教えてください」

ゆきな「?」


「俺にも…戦い方を教えて下さい!!」

頭を下げ、懇願する


今のままで、助けられながらゴブリンを倒してるようじゃ、

魔王なんて一生無理だろ!!

俺にはありふれたチート能力もないんだ

こうやって地道に強くなるしかねぇだろ!!


今しかないはずだ…今がチャンスなんだ!!

初陣でも強いアイリスと、ギルドで二番目に強いらしいゆきなさんが居る今が

最初のチャンスなんだ!!


「俺は…今のままじゃ駄目なんです。ずっと助けられて勝ってたら…本当に必要な時に何も出来ずに終わってしまう気がして…」

「今は…今だけはって仲間の強さに甘えて生きたくないんです。出来るならすぐに!!」


頭は下げたまま…返事を待つ

ゆきな「あはは…そんなに焦らなくてもいつか強くなれるよ」


断られた…!?


唇を噛む

「でも…!」

ゆきな「でも、その心意気!嫌いじゃないな」  


「!!」

ゆっくりと…頭を上げると

清々しい笑顔でこちらを見つめる

ゆきなさんの姿があった


ゆきな「良いよ!!教えてあげる!」

 

ゆきなさんがアイリスの方に体を向ける

ゆきな「もちろんアイリスちゃんも」


アイリス「私も?」

ゆきな「アイリスちゃん、イメトレとかはしてたみたいだけど、実戦経験が浅いからね。」


ゆきな「二人まとめて教えて上げる」



[数時間後]


ゆきなさんに基礎を叩き込まれながら

度々やってくるゴブリンを相手に戦った


最初は全くうまく行かなかったが

少しずつ要領を得てきたみたいで

まだまだ格好いい剣の振り方は出来ないけど


一人でも少しずつ戦えるようになってきた


正面からゴブリンが4匹、

ゆきなさんが3匹の相手をし、

俺とアイリスで1匹を相手にする


連携を取って二人で一匹を難なく討伐。

しかしゆきなさんが相手をしていたゴブリンが

一匹、ターゲットを切り替え走り出す



ゆきな「ヤバっごめん!!取りこぼした!!」


ゆきな「アイリスちゃん!!後ろ!!」


アイリスの死角にゴブリンが飛び付く


アイリスが気が付く。しかし反撃が間に合わない。


だから…!!!


俺がアイリスの死角から!!


ゴブリンを!!


叩く!!


チビゴブリン「ウギャァァァァァァ」

咄嗟の攻撃、だがそれは確実にゴブリンを射止めた。

これが俺の、初めて一人で倒した敵で

そして初めて誰かを守った瞬間だった。


「!!!」

ゴブリンは女性に引き寄せられる

理由は知らない。だが俺に寄らないってんなら

俺の役割はただ一つ


2人のサポートだ!!


「ふぅ……」

アイリス「ありがとう…たすかりました」

ゆきな「ごめん!!…でもすごいね、咄嗟だったのに」


「何となく、自分の役割が見えてきたような気がして」

テクニックなんか何もないし、今までエイジ達と

のバッティングだとか遊びの経験をフル動員して

何とか乗りきってるだけだけど……

今までの日常経験が…無駄じゃないことを実感できて、無性に嬉しさを感じる。


ゆきな「いやぁ頼りになりますなぁ」

アイリス「ですね」


照れ臭くて、少し顔が赤くなるのを夕日に隠す。


アイリス「これからも、背中は任せましたよ」

アイリスがニヤリと笑い、

拳を突きだし


「!!おう!!」

俺はそれに応えた。





ゆきなさん曰く、今回の依頼は増えすぎたゴブリンの討伐と原因の究明……

しかし、ゴブリンの数は話よりも少なく、ハッキリとした情報は得られなかった。



だからこれは



完全にイレギュラーだ



ある程度の戦いを終え、日が落ち始めたので

一度町に帰ろうと廃村に立ち寄った時


ドカァァァァァァァァン

と爆音が鳴り響く。 

廃墟を中心に突風が吹き荒れる


何かが降ってきて、建物が崩落したらしい


あの…影は



[廃村]


「なんだ?!」


冒険者A「逃げろ!!早く逃げろ!!」


冒険者達が爆音の方から逃げてくる


ゆきな「どうしたの?」 

逃げてきた冒険者を呼び止める

冒険者B「ゆきなさんも早く逃げて下さい!!」

皆がパニックになっている


ゆきな「いや!だから!何が!」

アイリス「!!あれは…」

指を差すアイリス。


アイリスが指差す方角には砂煙が視界を塞ぐ

ドスン ドスンと足音が近づき、大きな影が姿を現す


ゆきな「嘘でしょ…」

アイリス「………」


「ゴブリン?!!」

5mはあるであろう巨体で、右手には刀を持った

ゴブリンが姿を表した


ゆきな「と、…とりあえず全員高台に!!」

咄嗟の指示、しかしその瞬間。

あり得ない現実が俺達の常識を覆す。



ゴブリン「我…」


ゆきな「…え?」

アイリス「!!!」



ゴブリン「我、ゴブリンの王なり」



そのゴブリンは自らを王と名乗り

…自らの知性を見せつけた


[現在公開可能な情報No3]


『ゴブリン』

小学生くらいの背丈の人型の怪物。

知性は感じられず、女性を優先的に

襲う習性がある。胴体を切り離す事で

簡単に絶命する

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