2話『アイリス』
【本作の表記】
名前「セリフ」 →登場人物の会話
???「セリフ」 →正体不明の人物の会話
「セリフ」 →主人公の会話
2話『アイリス』
魔王を倒して現世に帰る
それが今の俺の目的だ。
にしても……
[異世界 商店街]
マジで異世界なんだな…ここ
映画のセット?なわけねぇか
生活感を感じる
この町は確かに生きてるんだ
ここは…商店街か?
野菜?だとか果物が売ってるな
いや知らねぇ通貨ァ!
…円は使えねぇもんな
金はどうすっかな…
さっきからあそこで風船配ってる着ぐるみ…
あぁ言う仕事ってどこにでもあるんだな
本当に…異世界なんだな……
現状整理をしよう
持ち物はそのままだ…
まぁ財布とスマホだけだけどさ
…日頃から鞄は持ち歩くべきだったな
もう少し役に立つもんがあれば…まぁ仕方ない。
財布は無用の長物で…スマホは…使えそうだけど充電が切れちまうから、今は封印だ
・
・
・
あれ……?
「俺……手ぶら??」
あの…マヤさん!!
…チートじゃなくても良いので何か武器を……!!
はぁぁぁぁ…
まずいな…これ、魔王倒す所じゃないぞ、
明日生きてる保証すら無いんじゃ…
仕方ない…こうなりゃ情報だけが武器になる
この世界の事を調べよう
[商店街]
とりあえず、道なりに沿って歩くことにした。
しかし、情報収集をしようにも言葉が分からないんじゃ話にならないよな…
とは言え、見知らぬ世界で人に話しかけるのは
勇気がいるな…
言葉が通じるなら問題ないが
それすら分からない。もし日本語のアクセントが
この世界の侮辱とかなら処されるリスクとか
あるんじゃ…いや、慎重になりすぎても
事は進まないんだ。今はとにかく情報を…
遠くから、誰かが走ってくる。
???「うぉいごらぁぁぁぁ!!」
叫びながら、こちらに来る
「?!」
何だ?!…誰かが走ってくるぞ
俺早速何かやらかしたのか?!
くっそ!!逃げるか?!逃げるべきか!!
あ、まずいっ
もう目の前に!!
???「お前挨拶しろやごら!!」
顔の目の前で立ち止まり、第一声が
眼前の挨拶要求……新手のヤンキー?!
「…?」
???「あ、俺がしてねぇな…」
男が一歩引き、頭をかく
???「俺ぁレイジ!!こんにちわぁ!!」
「こん…にちは…」
なんだ…何なんだコイツは!!
レイジ「見ねぇ顔だってこたぁ…はじめましてだな!」
「…あぁ…はい」
レイジ「てかお前の名前は……あ!!やっべ」
レイジがオーバーリアクションをする
レイジ「飯の時間じゃねぇか!!母ちゃんに怒られちまうよ!!わりぃ!じゃあなぁ!」
ダダダダダダダダダダダダダ
走っていってしまった
「なんだったんだ?…アイツ」
「急に…」
「…あ、いや違う…それよりも!」
俺は今アイツから
重要な情報を手に入れたじゃないか!
この世界の言語は…
「日本語だ……!」
言葉が通じるなら聞き込みが出来る!!
早速色々聞くぞ!!
魔王の事とか!!全部だ!
[広場 掲示板前]
手当たり次第に声をかけまくる
手段は選んでられない
出来る事なら一刻も早く魔王を倒したいからな
「すみません…魔王って…どこにいます?」
笑われてしまった。……流石に直球過ぎたな
「ここはどこですか?」
…またミスった。
掲示板の地図を指差されてしまった。
[出店前]
「すみません、これはなんですか?」
いや、リンゴじゃねぇか。分かるよ、なんで聞いた
「……日本って分かります?…」
……やけくそすぎる…
「あの……」
はぁ……
知れたこともあったけど、知りたい事は
何も聞けなかった
クマの着ぐるみ「………」
・
・
・
[河川敷 夕方]
河原で川を眺めて座っている
夕日が切ない。
グゥゥゥゥゥ
まぁ…そうなるわな…
はぁぁぁぁ…詰んだ…完全に行き詰まった…
転校生が初日で馴染めるわけ無いもんな、
そうだよなこうなるよ……
衣食住すらねぇのに…なにが魔王討伐だよ…
魔王城より先に生活だ
なんでも良いから仕事を探さねぇと……
ため息をつき、寝そべると
着ぐるみ「ジーーッ」
「?!」
視界いっぱいにクマが現れる
「うわっ」
「さっき風船配ってた着ぐるみのクマ!!!」
変なのと目があってしまった…
クマ「スッ」
クマが無言で風船を差し出す
「…あ、あぁどうも」
咄嗟に受け取ってしまう
風船って……えぇ…
俺の異世界の初アイテムがこれ…?
クマが無言で隣に座る
「?!」
なになになになに?!!
夕方の河川敷にクマと横並び。
誰がどう見てもおかしな光景だ
クマ「……君さっきから何してるクマ?」
「え?」
着ぐるみのクマが喋りかけてきた。
クマ「あ、ごめん。職業病」
「はぁ」
異世界って…変な人しか居ないのか?
ちょっと異なり過ぎじゃないか?
クマ「……住む場所無いの?」
「………いやぁ」
クマ「無いの?」
「無いです」
クマ「そっか」
気まずっ何これ気まずっ
……というか…ちょっとこもってるけど…女性?
の声がする気が……
川を流れる水の音が心地よく感じられるほどの
静寂……
その沈黙を…破る
クマ「君、日本人でしょ」
・
・
・
「………え」
言葉も思考も失う
この世界で、到底聞こえるはずの無い言葉
……日本……?
驚きか、それとも喜びか
この息の詰まる衝撃はいったい……
クマ「…君みたいな人見たのこれで二回目だよ」
……二回目?
「?…どういう意味ですか?」
クマ「昔もこうやって…君みたいに町中で変なこと聞き回って、ここで川見てる人が居たよ」
「なんだそ………いや…」
……まさかだが…他に…現世人が居るのか?
クマ「その人、困ってたから私が助けたんだぁ」
「?」
クマ「その人も、日本人だった」
「!!」
疑いようもない、馴染みある言葉。
……先輩転生者の存在……
思い浮かぶ言葉が多すぎて…思考も言葉も詰まる。
この一瞬の間に
クマが被り物に手を伸ばす
ゆっくりと持ち上げる
髪が靡く…姿を現す
クマ「ふぅ」
乱れた髪…金髪の…整った顔…
「!!」
俺の眼前に
汗をかいた…ジト目の少女が姿を表した
クマ「私はアイリス。君も困ってるなら。助けてあげよっか?」
言葉か…少女の姿か…俺は今、どちらに気を取られているのか。
……二度と無い…このチャンス…俺から出た言葉は
「!!!ほんとうです…!……いや…駄目だ」
喜びと…疑心
怪しさもある、知らない人間の…いきなりの誘い。
正直飛び付きたいが、何より見知らぬ女の子の
世話になるのは…
アイリス「良いよ。別に。タダでとは言わないからさ」
「?」
アイリス「女だからとか、知らない人だからとか、色々考えてるかもですけど」
アイリス「この世界で君は全員と初めましてですよ」
ぐうの音も出ない……
「いや…全くもってそのとおりなんだけど……」
ん?この世界…?…やはりこの子は…
髪が靡く。静寂が生まれる
アイリス「……私は昔、転生者を名乗るお姉さんと
ある取り引きをしました」
「!!!」
やはり…いるのか!!先輩転生者!!
アイリス「お姉さんと私が知らない事をお互い教えあって」
アイリス「もし同じ様に困ってる人が居たら助ける」
アイリス「そう言う取り引きをしました」
取り引き…実にシンプルで分かりやすい…でも
途方にくれる日本人…転生者にとってそれは
どんな希望に映った事か………
それに…困ってる人が居たら助けるって……
じゃあこの子は今…その約束を守るために
俺を助けようと……
アイリス「…君も転生者なんでしょ?」
……今さら言葉を詰まらせる理由は……ない
「えぇ」
この子は今、俺が欲しい情報を握っている
「…だから教えてくれませんか?…そのお姉さんの事」
アイリス「…そっか……会いたいよね…もちろん」
「…俺にとって数少ない手がかりですから」
アイリス「行方不明なの」
「は」
アイリス「もう6年かなぁ…ずっと姿を見てないや」
「………」
俺にとって…間違いなく必要な情報を抱えた、必要な人材……転生者のお姉さん…
いや…違う。見誤るな
今俺に本当に必要なのは…
アイリスだ
彼女が今…俺に必要なんだ
アイリス「……それで、取り引きをしませんか?」
取り引き…!例の交換条件!正直嬉しすぎる提案だ…だが
「…俺からは何も…有益な情報は渡せませんよ?」
アイリス「それは期待してません」
「そ…か…だよね」
アイリス「私からは貴方に、衣食住と仕事を提供します」
「……俺からは?」
アイリスが立ち上がり、ジッパーを下ろし着ぐるみを脱ぐ
「えっ」
着ぐるみとは言え
女の子が急に服を脱ぐもんだから咄嗟に目を伏せてしまう。
ゆっくりと視線を戻すとアイリスは河川敷を歩き始めている
「え、ちょっと!…俺からは?!」
咄嗟に呼び止める
アイリスが振り向き、ただ一言
アイリス「私の協力」
「……んだそれ…」
協力…?何をしたら…もしかして
「…行方不明のお姉さんを探せば良いのか?」
アイリス「…あー…それもお願いしようかな…」
「?」
違う?じゃあ何を
アイリス「ついてきてください。家、行きますよ」
・
・
・
[アイリス宅]
お世辞にも広いとは言えないが、整った良い部屋を
している。
しかし彼女…いったいどういうつもりなんだ?……俺…一応男なんだけど…
俺は彼女に何を与えれば良いんだ?…今のところ俺が一方的に……
・
・
・
アイリス「明日、早速仕事をしましょうか」
「仕事?…ってやっぱり着ぐるみですか?」
アイリス「違います」
アイリス「冒険者です」
冒険者…!!異世界らしい…なんとも異世界らしい仕事だ!!…と言うかこれ…魔王城に一番近い仕事なんじゃ…!!
アイリス「私からのお願いは、一緒に冒険者になって貰うことです。」
「?それ…だけ?…それくらい一人でもやれば…」
アイリス「冒険者は原則2人パーティが必須なんです」
アイリス「………私…友達とか…いなくて…」
「……………」
断る理由が更に減っちまったな
「もちろん良いですよ。そんなことで良いのなら」
アイリス「…!!ありがとうございます…!」
「礼を言うのはこっちの方ですよ」
[翌朝 冒険者ギルド]
アイリス「着きました!!ここが冒険者ギルドです!!!」
「うぉ………これが」
秘密基地の様にゴテゴテとした様相。
とにかくデカさとロマンが伝わってくる。
彼女曰く、壊れる度にでかくなってるらしい…
アイリス「♪」
二人して中に入っていく
中もずいぶんと広く、入口付近は酒場のようになっている
しかしそれ以上に気になるのが…
「女性ばっか…と言うか女性しか見えないんだけど…場違いじゃないですか?…俺」
間違えて女性専用車両に乗ったみたいで不安になってきた
アイリス「あぁそれはですね。極端に男性が少ないんです」
「?それは…見れば分かるけど」
アイリス「男性冒険者はすぐにカッコつけて前衛やって死んじゃうので、結果的に少ないんですよね」
アイリス「だから君は貴重な男性冒険者になりますね」
「…なんだそれ」
アイリス「あ、でも、一人だけ強い男性が居ますよ」
「?」
[ギルド 受付]
受付でアイリスと受付嬢が会話をしている
アイリス「私。遂に来ましたよ」
受付嬢「待ってたよ。アイリスちゃん」
「あ…どうも」
場違い感を感じながらも無難に会釈をする
受付嬢「じゃあ二人共、今日から冒険者って事で」
アイリス「はい!」
受付嬢「頑張ってね!」
……ん?
「……いやこれだけ?!あっさりしすぎじゃありません?!」
アイリス「本当は必要な書類とか…手続きとか…
めんどくさい講習とかいっぱいあるんですけど」
受付嬢「アイリスちゃん。ずっと前から通いつめて、その辺の事全部済ませちゃったんですよね」
「え」
「でも書類なら…俺のもいるんじゃ」
アイリス「男性冒険者は要りませんよ」
「なんで?!」
受付嬢「すぐに死ぬか、軍の引き抜きがありますので」
「言い方が!」
アイリス「冒険者は元々軍のお助けボランティアから始まったので、男の人は軍、女の人は冒険者!みたいな時代があったんですよ」
受け付け「流石アイリスちゃん!詳しいね」
受付嬢「男性の間口を広く開いておくことで、
入隊前の肩慣らしにも出来るってメリットもあるんですよ」
「なる…ほど?」
男性は基本ギルドじゃなくて軍に所属するものなのか……
・
・
・
[ギルド掲示板]
掲示板には軍からの依頼が掲示されている
主に討伐や探索、後は捜索やイベントスタッフ…バイトなんかもある
「異世界っぽさと現実味が混在している…」
アイリス「これにしましょうか」
「…ゴブリンの討伐?」
アイリス「…はい」
「?」
・
・
[ギルド 酒場]
男女が二人、酒場の隅でくたびれている。
???「…あー…あー…疲れたぁ…ゆきなぁ…代わりに後の依頼行ってきてくんない?」
ゆきな「あんたが一人で行きなよ…私も酔ってるよ?行けないって」
???「ゔぇ………」
・
・
・
[ギルド 冒険の始まり]
武器は無難に剣を選んだ。
アイリスは片手剣とナイフを用意しているようだ
……現代人の俺が戦える自信は正直全くないが
それが逃げる理由になるか
ようやくスタート地点に立ったんだ
ここから地道に進んで行くしか道はない
必ず…必ず強くなって、帰ってやる
[現在公開可能な情報No2]
『転生者のお姉さん』
昔アイリスが出会ったとされる転生者。
「知らない事を教え合い同じ様に困った人を助ける事」
を約束した。しかし6年前から行方不明である。




