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1話『I・RESTART』


【本作の表記】

名前「セリフ」 →登場人物の会話

???「セリフ」 →正体不明の人物の会話

「セリフ」 →主人公の会話


どうやら俺は死んだらしい。


確証がある訳じゃないが


目の前の女神様がそう言ってるので

まぁそうなんだろう。



本当に…



「つまんねぇ人生だったなぁ」




[日本 駅前広場 クリスマスの夜]


町を行く人は皆幸せそうで…そして羨ましい。

恋人と過ごす人も居れば、家族と過ごす人もいる


俺にはどちらも居ない


まぁ良いさ、そんな俺にも友達はいる。


今日は友達の一人、エイジが気まぐれに

友達をかき集めてクリスマスを過ごそうと計画したが、

残念ながら俺以外に暇な奴が居らず、

男二人の何とも悲しいクリスマスになった。


人々が幸せを握りしめ行き交う聖夜の駅前。

町行く人は皆同じ方向へ歩いていく。

それもそうだ、この先には有名なイルミネーションがある。

俺達も今からそこへ行く。



[日本 イルミネーション 月の夜]


エイジ「うわ!眩しいなこれ」

「お前なぁ……あ、いや確かに眩しいなこれ」


エイジ「他の奴とも来たかったんだが」

「…まぁ先約があったらしいし、仕方ねぇよ」


エイジ「何?!彼女か?!」

「デートだってよ」


エイジ「ちぇーっ…んだよ」

「案外ここに来てるかもな」


エイジ「よし。探すか」

「探すな」


エイジ「んじゃ探しに行くぞ」

「聞けや」


昔からエイジは、悪い奴じゃないんだが…まぁよく言えば素直で…

でも頑固さもあって……端的に言えば馬鹿な奴だ

今もこうやって、邪魔したいのか、素直に会いたいのか

この人混みの中で来てるかもわかんねぇ友達を探すために

走り出すんだもんな……

「…あれ?」

どこ行ったアイツ…?!


エイジの姿が消えた。

辺りを見回すが、人が多すぎて

見つけようがない


「はぁ?……マジか…マジかよ…はぐれちまった」

スマホで一言連絡を入れる


{どこじゃ}


「…変に探しに動くべきか…いやぁ……うーむ」

正直、この人混みで探すのはかなり骨が折れる。

まぁ……仕方ない

「探すか」





[日本 人混み]


人混みを掻き分けて、地道に進むが

エイジはまだ見つからない


さっきから目がチカチカする

人が多すぎる上に、イルミネーションが

眩しすぎるんだ


気持ち悪くなってきた…

完全に酔っちまったなこれ


「はぁ…」

ため息を漏らしつつ、

もう一度連絡を入れる


{その辺座ってる}


{見たら連絡くれ}


電話もしたが、やはり出ず、

全然既読も付かないので

仕方がなく近くのベンチで休む事にした


 [クリスマス ベンチ]


遠くからイルミの光がうっすら見える。

ここは比較的人が少なくて気が休まる。


風が心地良い、月も綺麗だ

………エイジはあんなだけど何やかんや感謝もしてる

アイツが居なきゃ、今日だって俺は家で一人だったんだ


変な奴だけど、あの気まぐれがなきゃ

俺の人生はもっとつまらなかっただろうな……


あー…らしくねぇことばっか考えちまう…


ダメなんだよなぁ俺、急に昔の事とか思い出したりして


何か…眠たくなってきた………



ふと、昔の事が脳裏を過る。

ありふれた、それでいて何気ない日常。


両親を亡くした、なんて聞けば誰もが俺を

悲劇の人だと思うだろう。俺自身も

そう思ってた。不幸ばかりが重なって、

俺が世界で一番不幸せな奴だと呪った事さえあった。


でもまぁ…それだけじゃなかったな


学校に通って、友達と遊んで、馬鹿やって

たまに怒られて


普通の人生じゃないが

……楽しい事もあったかな


いつかエイジと皆には礼を言わねぇとな

ま、照れ臭くて今は言えたもんじゃないが


正直…感謝してる



[星空の下]


??「起きてくださーい!はーやーくー!!」


誰かの…呼ぶ声がする



エイジかな??……



いや…



何か違う気がする…

綺麗な女性の声だ…凄く耳触りが良い……


でもなんで


あぁ…俺さっきベンチで寝てたから

親切な人が起こしてくれたんだ………



ゆっくりと目を開ける



目の前に星空が広がる




どうやら仰向けに眠っていたらしい




「んぇ?……ここは」

月明かりが心地のよい、そよ風が身を揺らす

星空は輝き、そして辺りは草原。

花は美しい………


ここはいったい……?



??「あ、やっと起きた」


肘を付き、ゆっくりと起き上がる


辺りを見渡し

綺麗な声の主を探す


後ろから、声がする。

??「おはようございます」


声の方を振り向くと

そこには



信じられない程屈強なマッチョマンがいた



「?!!!」


最強の眠気覚まし、

優しい女性のつもりで振り向いた先に

信じられない程屈強なマッチョマン…

いや、多分別人だ!



辺りを見渡す


しかし、見渡す限りの大草原

他に人は誰も居ない

??「え?…どうかしました?」


マッチョマンからあの声がする


…普通に怒らせたら怖いタイプのマッチョの顔だ…

いや、容姿で判断しちゃ駄目だが、確かな恐怖と筋肉の圧を感じる。


下手な事は言えない…でも

声と…見た目の、あまりの衝撃に



「ブッフォッ……あははははははははははは!!」

笑いが止まらない


美しい情景、美しい声、ムキムキのマッチョ

もう俺の中で何かが吹っ切れる


??「え??え?どうしたんです?!」

マッチョが困惑している


??「大丈夫ですか?!」


ふぅぅ……


よし。死んだな俺


「本当にすみませんでした」

渾身の土下座で謝罪

マッチョはオロオロしている

??「…あまりよく分からないのですが」


「正直に申しますと見た目と声のギャップが厳つすぎて笑ってしまいました。

煮るなり焼くなり好きにして下さい」

頭が上げられない。


??「しませんよ……女神なので」

……??何を言ってるんだ?


「め、女神?……どこに」

ゆっくりと顔を上げるが

やはりマッチョしかいない。


??「こんな可愛い顔してるんですから!私が女神に決まってるじゃないですか」

マッチョがふと自分の体を見る


??「なんじゃこりゃ!!!」


??「あ!あぁ!!!」

マッチョが取り乱す


訳が分からない

「なにがどうなって…」

「!!!!!!」


突如


ピカッと閃光が走る


それは確かに眩しいのに


月明かりのような…暖かさを感じる



??「ごめんね!魔法が切れてなかった」

魔法?……


目が慣れていく


うっすらと


姿が


見える


そこには


??「それじゃあ改めまして」

長い髪…綺麗な服…美しい声


??「私はマヤ!マヤ・セレーネ!」

月明かりに照らされるその姿はまさに


マヤ「月の女神です!!」


さっきまでのは夢か幻か

今俺の目の前に居るのは

本当に女神と見紛うほどに美しい


月夜の女神の姿

「女神…さま?」

マヤ「えへへ、私はまだ新人ですけどね…」

自分の事を女神なんて言う奴…普通は信じないよな

…でも信じたくなる程に…さっきから変な気分なんだ


意識はハッキリしてるのに、妙な浮遊感がある

夢でも見ているかのような…そんな気分だ


ここは何処だろう

何故星がこんなにも綺麗なのだろう

辺りは草原で何も見えない

これが明晰夢って奴なのか?

何もかもわからない。無茶苦茶だ。


あぁ……でも


そんなことより…今はただ

目の前の月が美しい。

この状況を…今だけは夢として受け入れたい。


マヤ「ほんとは話したいこといっぱいあるんだけど」


マヤ「…時間がないので要件は手短に」

「?」


マヤ「今話した所で、貴方はきっと忘れてしまうから」


マヤ「あ、メモはポッケに入れといたよ」

「…さっきからどういう」


マヤ「あのね。3つだけ忘れないで欲しいことがあるんだ」

「……?」


マヤ「1つ目。君は死んだ」



「………死んだ?!!」

なん…いや…どうやって?!死ぬ要素無かったでしょ?!だって俺…俺……

ただ…ベンチで寝ていただけだ

今だって……


ほっぺをつねる


痛みを感じて…

痛み…?……じゃあ…

本当に…夢じゃないのか?

マヤ「二つ目は……」  


「……」

空を見上げる

………実感がまるでわかない…ベンチで寝てただけで

死んだだって?それを受け入れろと?…

事故でもなんでもない、そんな静かに人は死ねるのか?


でも…妙な納得感はある。確かに…さっきから記憶があやふやで…………

マヤ「……あの、聞いてます?」


どうやら俺は死んだらしい。


確証がある訳じゃないが


目の前の女神様がそう言ってるので

まぁそうなんだろう。


ベンチで寝ていた。それだけだった。

…まるで…本当に意味が分からねぇ…


本当に…


「つまんねぇ人生だったなぁ」

マヤ「?」


「本当に……つまんねぇ……まだ何も出来てねぇじゃねぇかよ」


「何も…何も出来なかった…!不幸だから何だ、特別じゃないから?!…違うだろ…出来たはずだ…簡単な事だ」

らしくない…今日は本当にらしくない事ばっか考えてしまう。

後悔してるのか?…不幸だった、孤独になりかけた

でも………それだけじゃなかっただろ


マヤ「…?あのぉ…」


「誰の恩も返せなかった…!」

マヤ「……」

情けない…何も過去も事情も知らない人の前で

みっともなく…


不幸だったけど。死にたいなんて一度も思わなかった。

毎日、明日を楽しみに…誰かと馬鹿やって

そうやってありふれた日常を過ごすことだけが

どんな過去の後悔よりも、俺にとって大切だった。


だから皆には感謝してきた。

いつか何かで恩返しが出来る事を夢見て、

なのに……それなのに……


マヤ「事情は…分かりませんが……私に出来る事があれば言ってくださいね…」

「すみません…話を遮って…でも、俺ホントに死んだんですか?」

「…正直…実感無くて」


マヤ「……はい」

気まずそうな顔をさせてしまったな……


女神が、ゆっくりとこちらに歩み寄り

俺を優しく抱き込んだ

「?!」

「め、女神様?!」


他意なんて無い。ただ純粋な包容

暖かい光のような……

マヤ「…私も死因は知りませんが、貴方の気持ちだけは…なんとなく…わかる気がします」


マヤが手を俺の頭の後ろに当てる

マヤ「これが…いつか貴方の勇気になるように……」

「……マヤ…さん?」


ゆっくりとマヤが離れる。

優しい笑顔でこちらを見つめる


でもその顔には何処か哀愁を感じる

マヤ「……」


一瞬。空気が揺れる

いや


風が止んでいる

「?………!!」


再び光に包まれる…いや違う今度は目が冴えている


まるで魔法陣の中心にいるかのように


地面から光が溢れてくる


マヤ「…あちゃぁ…時間切れか」

「?!…え、これは?!」


成仏?!うっそだろ?!もうなのか!!


神様お願いします!今度もまた人間に…!出来れば同じ俺として!! 



風が一気に吹き荒れる。

月明かりよりも眩しい光が

渦を巻く


雑音の中でマヤの声がする

マヤ「…ねぇ!2つ目!!聞いて!!」

「!!!」


体が軽くなる…少しずつ浮かんでいく

…これじゃあホントに


風が舞う…天へ昇る


女神が叫ぶ

マヤ「人生をやり直そう!!!」


「え?!!」

上手く聞こえない。だが、何となく。意味はわかる


マヤ「!!3つ目!!」

駄目だ…意識が……また……薄れて…



マヤ「私の事は…忘れないでね」


消え行く意識の中、ハッキリとしない俺の視界が

最後に見たのは…月夜の女神の姿だった


再び目覚めた時


俺はまた見知らぬ所にいた。


また空が綺麗だった。

「…?」


ここが天国……か??


いや…違う気がする


無意識にポッケに手を入れる



グシャッ

中には覚えのない、小さなメモが入っていた


堅苦しい説明だとかは何もない。

謎が解けるわけでもない


何故死んだとか、ここは何処かなんて

ハッキリと記されちゃいない


たった一言、シンプルな言葉がそこにはあった


それは希望のようで


俺の新しい生き方だった



『『『異世界にて魔王討伐!!!

      報酬は現世への帰還!!』』』



あは…あはははは……


実に分かりやすい…分かりやすくて助かるよ…

女神様!!

いや…何もかも分かってねぇけど…

分かるしかねぇんだ


つまりここは…異世界だ…!!


そして俺の目的は



「魔王を倒して現世に帰る事!!!」





























[現在公開可能な情報No1]


『主人公の目標』

魔王を討伐して現世に帰還する事!!!

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