28話『風まかせに月を眺める』
28話『風まかせに月を眺める』
戦いの後、俺達は負傷したルナとエルフの姉妹を連れた上でのこの森からの脱出を試みたが、あいにく方向感覚を失ってしまったので、
今夜は大人しくルナさんが目覚めるまで体を休めることにした。
もちろんエルフの姉妹は見張りながら拘束している。
ユカリ「……」
アカネ「あーもう!!苦しい!」
[エルフの森 座標不明]
一本の大木を背にしてマヤと二人で座ってい居て、
そのすぐ目の前には負傷したルナさんが眠っている。
拘束したエルフ達も同じ大木に縛り付けている。
「………目覚めないな…ルナさん」
マヤ「仕方ないよ。頭を強く打ったんだもん。強力な回復魔法で体は治せても、意識までは戻せないからね」
「…あの高さから落下した俺が、今も元気に立っているのは…マヤの…月の女神の力なのか?」
マヤ「うーん…まぁそうだね」
「ルミナス…グラビティ?ですっけ、落下の時と戦いの時に使ってた。」
「あれもオールーリスやメモルヴァメモリーと同じ様な力なのか…?」
マヤ「あ、いや…流石にその2つとは別格だよ。これは例えるなら…月の女神専用の魔法だね」
マヤ「能力はシンプルだよ。重力操作」
重力操作……重力弱めて落下速度を弱めてーってことか?
助かった理屈って
でもあの戦いはどういう事だったんだ?
マヤ「ちょーっと正確に言うと対象と対象の引力を操作する能力だよ。だから例えば君と私に能力を付与すると」
「?」
マヤ「ギュィィィンって近づく事も出来るんだ」
マヤ「ほらこんな風に」
マヤがゆっくりと側に近づき、肩に寄りかかる
「……どうしたんすか」
マヤ「別に……ちょっとね」
「女神って…ほんと不思議ですよね」
マヤ「…?」
「皆が理想や恨みを語ってるのに、実際話してみると
そのどちらとも違くて…知れば知るほど親しみがわいて来て……本当に人間らしい」
マヤ「あはは…なにそれ…」
「女神が本当に悪人だったとして…俺は全員が同じだとは思えないですよ」
マヤ「…」
「少なくとも俺が見てきた月の女神は、二人とも良い人でした。まぁ、ちょっと色々あったりもしたけど」
「本心から悪行をしようとした人は居なかった」
「女神も吸血鬼もゴブリンでさえも心はちゃんと人間の形をしていた…今は敵だけど
エルフだってきっと同じ人間です」
「きっとマヤさんから貰ったこの力は、こう言うことに気がつくきっかけだったんです」
「昔いた嫌な友達だって…確かに喧嘩はたえなかったけど、不思議とずっと一緒に居てたんです」
「出来るなら魔王も、他の女神もまずは会ってみたい。
それでダメなら次を考えます」
「少なくとも俺は、この目で見るまでは結論を出したく無いです」
「あ、今俺敬語になってた?」
マヤ「……良いんですよ」
マヤ「貴方はそれで」
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ユカリ「…?どうしたの?アカネ」
アカネ「………なんでもねぇ」
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大木を背に、肩を合わせて星を見る
夜空を見たところで、正座の事は何も分からないけど
ただ1つ。俺にも分かることがある。
今夜はとても月が綺麗だ
落ち着いた声で肩に寄りかかったマヤが囁く様に語る
マヤ「…女神の秘密。3つだけ教えたげる」
「え、気になる気になる」
マヤ「じゃあ1つめ……実はね、女神って普通の回復魔法が効かないんだよ」
「不便じゃない?それ」
マヤ「そう。超不便。だからね、女神は女神専用の強力な
回復魔法を発明したんだけど…何とそれが今度は強力すぎて、普通の人に使ったら腕まで再生しちゃったわけ」
「えげつねぇな…ん?でもなんでそれが普及してないんだ?…練度の問題?」
マヤ「うーん…わかんない」
「えぇ」
マヤ「じゃあ次二つ目ね」
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[見知らぬ広野 同じ月の下で]
森を抜けて少しずつ目的地へと迫るグラルトとアルピスが
風のふく丘の上に並んで座って、月を眺めている
グラルト「花鳥風月…」
アルピス「?なんです?それ。またことわざですか?」
グラルト「あぁ、まぁそんなとこだ」
グラルト「この世にある美しい物の例えだよ」
アルピス「なるほど」
グラルト「ま、これもゆきなの押し売りだがな…」
グラルト「花の様に鮮やかに…鳥のように優雅に…
風まかせも心地よく…そして」
アルピス「今日は月が綺麗ですね」
グラルト「……だな」
アルピス「…花鳥風月かぁ…この例え、どれも貴方っぽくないですね」
グラルト「うるせぇよ」
アルピス「ま、僕は最も自由な風の騎士ですから。風任せに生きていますよ」
グラルト「その足で何が騎士だよバーカ。大人しく回復魔法使って治せよ」
アルピス「僕は回復魔法が全然効かないんですよ」
グラルト「んだそりゃ」
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[エルフの森]
2つ目の話を聞きながら、その事について喋っている
「へー…花の女神ってそんなにいるんだ」
マヤ「えぇ。きっとお正月は大変ですね」
「なんだその視点は」
マヤ「えへ」
マヤ「…じゃあ最後です」
「今度はどんな雑学だ?まーた変な話だろ」
マヤが少し黙る
側には自分を含めて5人も居るはずなのに
今は不思議と森の音しか聞こえやしない
エルフ達は眠ったのだろうか?
マヤが息をのみ、話す
マヤ「…最後は…私が許すことが出来なかった…女神の罪の話です」
「!!…ッ………………」
ルナ「zzz」
ユカリ「……」
アカネ「……」
マヤ「女神は…人々の欲を増長させ、怪物に変えて行きました」
マヤ「ありふれた三大欲求から、長生きがしたい、誰かと過ごしたい、そんな…当たり前の欲を…願いを…狂わせた」
マヤ「この……欲を狂わせる恐ろしい病の名は」
マヤ「狂欲病」
マヤ「これが女神の罪の名です」




