26話『月の重力』
26話『月の重力』
[エルフの森 南部]
上空600メートルからの
バードストライクによる墜落から
1分を待たずしてマヤが目覚める
マヤ(うぅ…ここは…あぁ…森…?…)
ゆっくりと目を開け体を起こす。
当たりを見渡すと近くに彼が倒れているが
どこにもルナがいない
ふと見上げると
ルナが木に引っ掛かって気を失っている
マヤ(あちゃあ…まぁそうなるよね)
マヤ(回復魔法一応かけとこう)
マヤが遠隔で回復魔法を施す
マヤ(これでよし。多分ルナちゃんはすぐに目覚めるはず…)
マヤ「はぁ……」
不思議なことに全員に大きな怪我はなく
落下の直前にマヤが放ったルミナス・グラビティが
衝撃を緩和したようだ。
マヤ「それにしても…なんだろうここ」
マヤ「森にしたって明らかに魔力が濃い」
???「動くな」
マヤ「?!」
彼に回復魔法を施す為に座り込んでいたマヤの背後の
方角から不意に見知らぬ声が聞こえる
マヤが咄嗟に構え、辺りを見渡す。
しかしマヤの四方八方あらゆる方角から声の主を
視覚で捉えることが出来ない
マヤ(何?!誰?!まさかこんな所に人が居るの?!)
敵か、味方か、声の主がひたすら語りかける。
しかし声のする方角が安定せず、マヤを中心に円形に移動しながら
まるでこちらを観察しているかの様に観察しながら語りかけている様だ。
マヤは相手の位置が掴みきれず、魔力濃度が濃すぎるこの森では
魔力による探知も機能していない。無理に動かずその場で全方位に注意を向ける
???「貴女…どこの人??」
マヤ「…ただの旅人です。木登りしてたらよろけちゃって…はは」
???「嘘。木から落ちてこんな音するはずがない」
マヤ「……」
マヤ(この森…魔力が濃すぎて、居場所が探知できない…)
???「不思議な追い方をするね。人は木を透けないよ」
濃すぎる濃度を逆手に取って、人体と空間の魔力差から
居場所を見つけようと、木や物陰に目を凝らしていた
マヤの動きに気づかれてしまう
マヤ(この雰囲気…この木…この気配…これはきっと)
???「それにさっきの魔法。あれ普通の回復魔法じゃないでしょ」
マヤ「…鋭いね」
???「……貴女、女神でしょ」
瞬間
マヤを目掛け上空から大量の矢が降り注ぐ
マヤ「?!!」
ババババババババババ
決定打にはなり得ない、しかし数本刺されば確実に機動力を
失うレベルの矢の雨に対し、マヤが咄嗟にドーム状の傘を刺す
???「バリア系の魔法?」
マヤ「ご名答!……エルフさん……敵って事で良いのかな」
エルフ「やっぱり鋭いね。女神」
矢の雨はマヤのバリア魔法によって全て弾かれる。
弾かれた矢はマヤを中心とした円形に散らばり、地に突き刺さっている。
マヤ(エルフが居る…ってことは…この森は今エルフの森になってるって訳ね)
マヤ「攻撃は今のだけ?エルフなら物理じゃなくて魔術で来なよ」
エルフ「もうやってる」
マヤ「!!」
地面に刺さった矢から魔力の光が発生する。
マヤ(さっき弾いた矢?!)
その光はツタのように素早く伸び
マヤの手足に絡み付く
マヤを中心に弾かれた矢は発光し
ツタを伸ばしていくつも交差する。
それはまるで魔方陣のように
マヤを捕える
エルフ「拘束魔法」
マヤ「これで押さえたつもり?」
マヤの表情から一つ余裕が消えて汗が滴る、
しかし諦めや油断はまだ存在せず、次の一手を模索する。
エルフ「ドレイン系の拘束魔法だよ。貴女が魔法を使えばその魔力を吸い取って強化される」
エルフ「この森は…魔力に溢れてるから、何もしなくても勝手に吸い上げて強化されるよ」
マヤ「ぐっ…」
少しずつ締め付けが強くなる拘束にマヤはさらなる自由を失う
ザッ ザッ ザッ
エルフの足音がすぐ側までやって来る
マヤ「へー…流石エルフ……結構綺麗じゃん」
ついにエルフが物陰から姿を表し、顔を見合わせる。
それはまるで勝利宣言をするかのように……
ドレイン系拘束魔法は魔術を操るエルフが
対魔術師用に作った、エルフ専用の魔法体系の一種。
当然魔力量の多い女神の天敵となり得る必殺必中
だが
ごく稀に例外が存在する
ギギギギギギギギ
エルフ「??」
エルフから見て、今のマヤは最後の力で無駄な足掻きをする存在。
突破不可能な拘束魔法を必死に解除しようとしている様に見えている
エルフの認識は間違いではない。
しかし
ただ唯一
突破不可能だと言う点を除いて
ブチィィィィィィ
マヤは女神必殺のドレイン系拘束魔法を真正面から引きちぎる
圧倒的な豪胆さ
エルフ「??!!!!!!」
エルフ「なんで……まさか……!!」
エルフ「月の女神?!!」
月の女神は
最も戦闘特化の神の娘である
そして
ドレイン系拘束魔法唯一の弱点は
圧倒的な豪胆さ、物理攻撃による内部破壊
エルフ「そんなっ」
ついに姿を表したエルフにマヤが飛び掛かる
反撃を予測していなかったエルフは一手遅れを取る
飛びついたマヤがエルフにまたがり
右手で瞬時に口を塞ぎ
エルフはその腕を掴み、足でもがく。
だが振り解く事が出来ない
ついに生まれたエルフの隙に
月の女神、マヤが唱えるは
マヤ「「「ルミナス・グラビティ」」」
瞬間
木々の上から突然何かが落ちてくる。
それはマヤによって遠隔で魔法を付与された
目覚め直後のもう一人の月の女神
ルナ「うっ」
ルナ「うぅ…何が………あ!!」
エルフ(?!悪魔の翼?!)
マヤ「これでニ対一だね。エルフさん」
ルミナス・グラビティによって増援を呼びつけた
マヤによって、この戦場に天敵たる月の女神が並び立つ。
これによりマヤはエルフ相手に確実な勝利を掴みとる事に成功する




