25話『エルフの森』
25話『エルフの森』
[元帥室]
恐ろしく機嫌の悪いヴァルキリーが元帥室にやってきた兵士たちを詰めている
ヴァルキリー「馬小屋から馬が脱走しただと?…誰か説明しろ」
今回の馬の脱走事件の報告に来た兵士達がザワザワする
馬小屋の警備をしていた兵は顔色が悪く
皆が必死に責任から逃れようと考えている
ヴァルキリー元帥の顔にはただならぬ威圧感があり
若造達は足を震わせる。
そんな空気で一人の少女が手を上げ前へ出る。
この兵士たちの中では明らかに最も若く、
それでいて最も冷静な表情をしている。
少なくともその瞳の奥には他者に責任を押し付けようなどと言う
浅はかな考えは見えず、むしろ全ての責任を受け止めた上で
己で解決してやろうと言う覚悟さえ溢れて見える
??「はいでは…私が」
ヴァルキリー「君は確か…あぁコウアン部隊の新入りだね」
彼女の表情と、若くても物怖じしない姿勢にヴァルキリーの表情が和らぐ
??「公安所属、ミキです」
ヴァルキリー「はっはっは。真面目そうな可愛い顔だ、いいね。
それにその欠けた耳…君はエルフの末裔だったかな?」
ミキ「……はい。伝承にあるようなエルフ魔術は使えませんが、記憶力には自信があります」
ヴァルキリー「頼りになるね。アカリ隊長からも君の話は聞いてるよ」
ミキ「光栄です」
ヴァルキリー「それで?詳細は君が話してくれるんだろう?ゆっくりで良い。教えてくれ」
ミキ「…スゥー………」
ピリつく兵士の空気を飲み込み
静寂が生まれる。
兵士達が息を飲む中
ミキが語る
ミキ「結論から述べますと。犯人は」
ミキ「グラルトウルトです」
兵士達が再びざわつき出す
予想外の一言にヴァルキリーでさえも動揺を隠せていない。
一般兵士達にとっては聞き覚えのない名前であり皆が誰だ誰だと
顔を見合わせる。しかしヴァルキリーの動揺の理由はそこには無かった。
ヴァルキリー「……グラルトか……そうか…そうか!」
元帥の反応に勝機を見出した馬小屋の兵士が
愚かにも無知を晒す
馬小屋の兵士「…そ、そうです!!これは間違いなく誰かの介入!!そのグラルトと言う男!!いやもしかしたら
あのキチガイマンのオールーリスかもしれません!!
つまりこれは襲撃なのです!!」
ヴァルキリー「無知の癖して偉く饒舌じゃないか。」
ヴァルキリー「……逆にミキ、君は……その名をどこで聞いた?」
ミキ「…………ただの盗み聞きです」
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[エルフの森 東の泉]
グラルト「ここからはしばらく、このルートで森に沿いながら目的地を目指すことになるが…まぁ今日はここで足を休めよう」
アルピス「えぇ。………それにしても綺麗な泉ですね……」
森に流れる川と繋がる湖。
いくつかの川がこの地点で合流し、そこに出来た水溜まりがこの泉の正体だ
森に背を向ける良い感じの岩陰を見つけた二人は今夜の拠点を設営した。
グラルト「この湖、ガイドブックには乗ってなかったな…最近出来た物なのか」
アルピス「噂の水の国はもっと綺麗だったんですかね」
グラルト「かもな」
アルピス「…水浴びでもします?」
グラルト「後でな」
これまでの旅路でいくつもの景色を見て来た二人は
甘え方とあしらえ方を覚えたようで、
アルピスはすぐに何でも提案し、
グラルトはそんなアルピスを上手くあしらっている
[エルフの森 東の泉 夜]
静な森。泉の水面には月が反射している。
美しく揺らめき、景色達が情を与える。
アルピスが、泉を眺めながら座っていると、
そこにグラルトが側にやって来てアルピスを見下ろしている
グラルト「どうだ?初めて見る世界は。思ってたよりも綺麗だったか?」
アルピス「えぇ…本当に綺麗だ」
グラルトがフッと笑い隣に座る
アルピス「これから知る物が全て、こんな風に広大で美しいものだったら……」
グラルト「……俺もそう思うよ」
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[エルフの森 東の泉 朝]
二人が身支度を済ませ、馬にまたがる
グラルト「エルフとのトラブルもなく一夜を乗り越えた。
これなら無事に昼には森のエリアから離れられそうだな」
アルピス「油断はいけませんよ。いつ誰に見られてるかも分かりませんから」
グラルト「エルフは耳が良いからな、しかも魔術に長けると来た。すぐ気付いて襲ってくるかもしれねぇ」
アルピス「手早く行きましょうか」
グラルト「だな」
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[上空 600m]
大きな翼が空を飛ぶ
ルナがヴァンパイアの翼で空を飛ぶ。
高速移動が得意な吸血鬼の羽を持ってしても
流石に両脇に二人も抱えながらの飛行では
安定させるので精一杯のようだ。
両脇に抱えられた二人がそれぞれ異なるリアクションで空の旅を味わっている
「うひゃぁぁぁぁ!!!」
「見ろ!!でっけぇ湖だ!!琵琶湖?ほどはでかくねぇけどすげぇ良い!!」
近くには森も見える…あっちもかなりでけぇな
ってか…空飛ぶってこんな感じなのか…
何か…気持ちいいな
マヤ「あばばばばばばば!!筋力増強筋力増強筋力増強筋力増強筋力増強筋力増強!!!回復回復回復!!!」
マヤが必死に自身の筋力とルナの羽にバフをかけている。
ルナの羽は流石に人間二人はギリギリの為、定期的に回復魔法をかける事で
どうにか保っている。しかし本人は気づいていないが焦りすぎて魔法がいくつも不発しており、更にマヤの魔法はそもそも乱発している為、不発になった所で既に過剰なバフが乗っている。
ルナ「あはは…ごめんねマヤさん。私の羽じゃ魔法でもないと二人も運べないからさ」
マヤ「ま、魔法は良いんだけど!私、私、自分でも知らなかったんだけど」
マヤ「高いとこ駄目だったみたい………あばばばばばばば」
バサ、バサと大きく羽を振り空を羽ばたく
今この空には雲ひとつない快晴で遠くの空までよく見渡せ、
すぐそこに大きな森がある為か鳥達が沢山が飛んでいる。
マヤ「…ほんと!落とさないでね!」
ルナ「大丈夫です!破れても羽は回復しますし」
マヤ「え?」
ルナ「瓦礫にでも当たらない限り大丈夫ですよ」
ルナ「嵐でもなきゃそんな物飛んで来ませんし」
マヤ「…あ」
「あ」
瞬間。現代の知識を有する二人は思い出す。空を制した現代世界において
唯一空の障害物になりうる存在を、
目の前に迫る唯一の脅威を
ルナ「?あ、鳥が飛んでますね」
「飛んでますね」
ルナ「こっちに来ますね」
マヤ「来てますね」
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鳥の群れがこちらを目掛け
真っ直ぐと飛んでくる
これは…空を制した人類に向けられた自然の強敵
マヤ・主人公「「バードストライク?!!」」
鳥達の群れと真正面から激突する
単なるすれ違いではなく、鳥達は明確にこちらに対し
攻撃の姿勢を取り突いてくる。
マヤ「だめだめだめ!!!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
ルナ「え、なになになに?!!!」
鳥に乱され飛行が不安定になる
姿勢制御が出来ない
「くっっっそ!!」
何か出来る何か策は?!!
記憶操作?!いやんな器用な事今出来るかよ!
剣も振れない!!ルナさんで夢双病?!いや鳥に効くのか?!
マヤさんが何か秘技を?!
いやこの人今テンパって使い物にならねぇ!!
ヤバイこれ…これ絶対
ブサッッッッッ
ルナ「あ、羽が」
羽が破れ
飛行が不可能になり
森の上空600メーター
三人が頭から垂直に落下する
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ルナ「ごめんなさぁぁぁぁぁい!!」
マヤ「あばばばばばばば!!!!!!!」
死ぬ死ぬっ!!数秒で!死ぬ!!
森に落ちたらワンチャンあるか?!!
いや無理だ!無理!!
空中で一番派手に落下しているマヤが
両腕を広げる。しかしこれは姿勢制御の類ではない。
遠隔発動
マヤ「「「ルミナス・グラビティ!!!」」」
「?!」
落下スピードが…心なしか和らいでいく
落ちることに変わり無いが
まるで葉っぱがふわふわと落ちるような
そんな風に落ちていく
マヤ「このまま森に落ちるよ!!!!」
「!!!勝機あるんですか?!!」
ルナ「行くしかないですよ!」
マヤ「あばばばばばばば!!」
あぁ……終わった…
さようなら。ごめんなさい女神様
いや女神はここか
ごめんなアイリス
ドゴォオォォン!!
ドサッッッッ
ゴロンッ
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[森]
森の中に、聞きなれない音が3つ連続で鳴り響く
???「何?…今の音…鳥でもふってきたの?」
ザッザッザッ
???「?!」
音のした方に恐る恐る近づくと、そこには
???「人間?!!!が…落ちてる……」
上空から落下し、見知らぬ人に見つかった。
この時俺達は皆気を失っていたが、
後でわかったこの場所の正体は
[エルフの森]




