24話『自由な二人』
24話『自由な二人』
[秘密の隠れ家]
来る魔王討伐、ゆきな救出に向けグラルトとアルピスは
地道に準備を進めており、隠れ家には必要な物資が並べられている。
アルピスが小物類を机で整理していると、別の作業を終えた
グラルトが作業中の机に地図を広げる
アルピス「これは…魔王城までの地図ですか?」
グラルト「あぁ、現代の地図とガイドブックの情報を踏まえ作った俺特製の模擬地図だ」
アルピス「凄い…!ここまで正確な地図…軍でも中々見たこと無いですよ」
グラルト「…元帥室にも無かったか?」
アルピス「?まぁ…」
グラルト「そうか、ま、そんな事今は良い」
アルピス「…いよいよ明日出発ですもんね」
グラルト「あぁ。本当はもう少し時間が欲しいが…まぁそれは道中で済ませよう」
アルピス「地図を見るとやはり相当な距離があるようですが…どうやって向かうんです?」
グラルト「俺達は吸血鬼見たく羽はねぇからな、当然陸路がメインになる」
アルピス「…ですが徒歩では半月はかかりますよ?」
グラルト「だから最初は馬で行く」
アルピス「馬?持ってるんですか?」
グラルト「盗む」
アルピス「えっ」
・
・
・
[軍本部、馬小屋]
軍本部の最も警備が静かなエリアの馬小屋周辺。
ここで飼育されている馬は特殊な個体で特別気性が荒く、
大人数での警備が難しいことで知られており
グラルトは足の悪いアルピスを抱えてこの馬小屋が見える家民家の屋根に登って様子を見ている。
夜の馬小屋は警備は寝ている
グラルト「軍の馬は品種改良されていて長旅に向いている…これは前に君が教えてくれた事だったねぇアルピス君」
アルピス「…本気で盗むんですか?」
グラルト「これから世界の秘密盗もうって奴が馬くらいでビビってんなよな!」
アルピス「ぐぬぬ…」
グラルト「まぁ盗まずとも、たまたま馬がこっちに来たりして」
アルピス「?」
グラルトが馬小屋の方へ腕を伸ばす
グラルト「「「オールーリス」」」
アルピス「なっ?!」
馬小屋の扉がゆっくりと開く
この馬小屋は簡易的な施錠しか施されておらず、
オールーリスで容易に開くことが可能だった。
一つずつ順番に…全ての扉が開いていく
グラルト「ほんと不用心だよなぁ、ちゃんとした鍵閉めとかないと駄目じゃないか」
アルピス「うわぁ…」
グラルト「アルピス君。これなんだと思う?」
グラルトが懐から何かを取り出す
アルピス「…調教用の…鞭?」
グラルト「そう!!…ニヤリ」
アルピス「まさか」
グラルト「「「オールーリス」」」
アルピス「やっぱり!」
鞭がグラルトの手元を離れ、独りでに動き出して馬小屋の方へ向かう
鞭が馬小屋の中に入り。まるで誰かが握っているかの様に…鞭を大きく振りかぶり
馬を叩く
ベシッ
馬「ブルァァァッヒヒーーン」
1頭1頭順番に叩き起こされた馬達が、
パニックをお越し逃げ惑う。
あらゆる方角から街を目掛けて馬達が走ってゆく
ベシッ
ベシッ
グラルト「あれあれあれ馬めっちゃ逃げてんじゃん助けないと」
アルピス「人としての心って知ってますか?」
アルピス「……僕あの白いのが良いです」
グラルト「お前も楽しんでんじゃねぇか」
アルピス「仕方なくですよ!僕の馬は別の所に居ますし、僕の子が居なくなったら怪しまれちゃいますからね!」
グラルト「そう言う事にしといてやるよ」
馬達の混乱に兵士が飛び起き、必死に馬を制止するが
兵士「ちょ?!っとえ?!なんでなんでなんで!!!止まれ!おい!!」
兵士「誰かぁぁぁ!!」
抵抗は虚しく、馬小屋に残っていたわずかな馬達も
次から次へと町の方へ飛び出していく
グラルト「んじゃ勘づかれる前に回収して逃げるか」
・
・
・
[秘密の隠れ家]
馬を連れた二人が隠れ家に帰ってくる。
逃げ出さないように見張りながら二人が会話をしている
グラルト「出来る限り足がつかないやり方はしたが…まぁ
物理的な足跡は残るからな」
アルピス「探される前に、暗い内に町を出ましょう」
グラルト「今更だが…松葉杖引いてる奴がこんな長旅に参加して良いのか?…別にゆきな助けるだけなら留守番してても良いんだぞ?」
アルピス「…僕を24時間ずっと守るのが約束でしたよね」
グラルト「あれ、そうだっけ」
アルピス「それに…やっぱり知れることは全部知りたいですし」
アルピス「足の事はお気になさらず。もう治りかけですし今は馬も居ますから。何より、僕には頼れる護衛も居ますので!」
グラルト「…オールーリスで浮かせてやろうか?」
アルピス「そんな事も出来るんですか?!」
ズー…ズー…
足元から何かが引きずられる音がする
アルピス「!」
アルピス「なんだ、さっきの鞭か…」
アルピス「オールーリスでここまで戻したんですか?流石盗みのプロ!証拠は残さないと言う訳ですね」
グラルト「いやまぁこれは…」
鞭が独りでに浮き上がり。まるで誰かが握っているかの様に…鞭は大きく振りかぶり
ベシン!!とグラルトを叩く
グラルト「イデッ」
アルピス「?!!」
アルピス「何やってるんですか!」
ベシン!!ベシン!!ベシン!!
グラルト「いだ!いだ!いだ!」
アルピスが助けに入ろうとするが
グラルト「もう終わるから寄るな!!」
アルピス「!」
ぼとっ
鞭が地面に落ちる
アルピス「…そう言う趣味があったんですね」
グラルト「違う!」
グラルト「……せっかくだから見せたんだ」
アルピス「?…」
グラルト「今のは…オールーリスの弱点だ」
アルピス「!!!」
グラルト「言うなれば因果応報。この力を誰かを傷つけるために使えば、そっくりそのまま俺に返ってくるんだよ」
アルピス「…じゃあ今のって!」
グラルト「馬を叩いた分が返ってきたんだ」
アルピス「オールーリスにそんな弱点が……それじゃあまさか!…貴方が最近居なかったのって」
グラルト「…こないだのゴブリンを沢山殺した時の反動を捌いてた。あの量を一気に殺したのは初めてだったし、正直初めてオールーリスに殺されかけたよ」
アルピス「…よく生きてましたね」
グラルト「まぁそこは努力と工夫ですな!」
グラルト「オールーリスは便利だが万能じゃない。何かをすれば、必ず返ってくる。…弱点があまりにも驚異的な諸刃の剣だ」
アルピス「……最強と呼ばれるのも簡単じゃないんですね」
・
・
・
[平地]
必要な準備を全て終え、日が昇る前についに二人が街を出発する。
ウマの足はとても早く、ほんの数分でゴブリンと戦った丘を抜け
時刻は朝を迎え、二人が太陽を背に馬を走らせている。
出発から数時間と数キロ。
馬を休ませるべく一時的に岩陰に停泊している。
良い感じの岩の上に地図を広げルートの確認を行う
グラルト「この先、後数十kmもすりゃ森にぶち当たるが、
まぁ頑張りゃ突っ切ることも可能だろう。
ここを通れりゃかなりの短縮になるはずだ」
アルピス「じゃあ無理をしてでもここは通るって事ですか?」
グラルト「…いや、今のは単なる理想論、これはあくまでも、この森が今もまだただの森だったらの話だ」
アルピス「?」
グラルト「この付近の地図は、ガイドブックの情報を中心に整理しているんだが…いかんせん300年以上昔の地理だからな」
アルピス「?」
グラルト「当時はただのありふれた森としか記されていないが…前に一度軍の文献を読んだ時に気になることが書かれていた」
アルピス「…いや何サラッと軍の情報盗んでるんですか」
グラルト「この森にはほんの150年ほど前から」
グラルト「エルフが住んでいるらしいんだ」
アルピス「エルフって、あの長命種族の?」
グラルト「あぁ。ま、もはや伝説上の生き物だがな」
グラルト「あいつらは小さなコミュニティを築き生きている、それでいて数百年周期で住む場所を変えているんだ」
アルピス「確か彼らは外界を拒絶し生きている…全く違う時の中で生きる彼らにとって、外の世界の異物とも言える僕らは危険因子で」
グラルト「つまりは敵だってことだ」
グラルト「てかちゃんと知ってんじゃねぇかよ」
アルピス「まぁ規制されてない範囲の情報ですし」
グラルト「ほへー…」
グラルト「しかしまぁ、無駄なリスクを犯してまで行く道じゃねぇしな、流石に安全を第一に、迂回ルートで行くぞ」
アルピス「了解!」
・
・
・
[洞窟]
ルナさんとの必要な情報共有を済ませ、具体的な計画を練り始めている。
作戦さえ整えばいつでも出発できるほど物資の準備は万全だ。
マヤ「それで?グラルト国にはどうやって行くのかな?」
「それなんだけど、どうやらルナさんが手配してくれる?らしいんだよね」
マヤ「?」
ルナ「二人とも出発の準備は良いですか?」
マヤ「えぇ!バッチリです!」
「今更ですけど、無理についてこなくても大丈夫ですよ?」
ルナ「お気になさらず。貴方は私の恩人ですから!それに私だって、久しぶりに故郷に帰れるなら帰りたいですし」
「……」
記憶ってのは…本当に都合良く…悪い物で、
ルナさんは今、暁のヴァンパイアとしての記憶が抜け落ちて、その補正として記憶が歪み、瀕死だったルナさんを魔王が吸血鬼する事で助け、その反動でおかしくなりかけた所を俺が助けた事になっている…つまりは過程を失い結果のみ帰結したってわけだ
マヤ「結局、どのルートで行くんです?」
ルナ「私たちは」
ルナ「空路で行きます!!」
翼を開き、空を背に、二人を見つめるルナ。
本日の天気は晴天。
悪魔の羽で魔王城を目指す彼らは
転生者と女神達




