21話『女神の罪』
21話『女神の罪』
街で色々と用事を済ませていたら帰るのが遅くなってしまった。
時間は22時と言った所か、朝から動いていたからずいぶんと疲れたが
俺の仕事はここからだ。
ミューズ語で書かれた本の解読作業。
マヤさんの翻訳魔法なら解読可能らしいが、
本当に読めるかどうかって疑いは勿論として、
何より、俺自身が読むわけじゃ無いから
嘘の内容を教えられたら気づくことが出来ないのが懸念点…
と、まぁ色々と考えながらマヤさんと1日過ごしたけど、
正直怪しさなんて微塵も感じなかった。むしろ純粋に
街を楽しんだり、嬉しそうに食べ物を頬張ったり、
よくわからない所で躓いたり…女神なんて事忘れて
普通の人間としか思えない程、疑う余地が見えなかった。
とんでもない嘘つきか、とんでもない善人か…
少なくとも今の俺には後者にしか思えない
[アイリスの家 夜]
床に本を広げて、二人で囲んで覗き込んでいる。
マヤが解読魔法で内容を読み上げて、彼はその内容を聞いている。
「………つまり…水の国は水産資源が豊富で
魚料理が名物…と」
マヤ「温泉もあるみたいですよ」
「はぁぁぁぁ…これじゃただのガイドブックじゃねぇか!!!」
…まぁそりゃそうか、軍のお膝元のギルドの図書館の中で
レイジでもすぐに見つけられるくらい分かりやすい場所に
世界の秘密発見級の特大情報があるわけないよなぁ…
マヤ「まぁ…ガイドブックではありますけど、でも凄いですよ!町の歴史が何となく分かりますよ!」
「…まぁ確かにそれは…いいか」
歴史書物が全滅した今、唯一の過去を知る手がかりではあるのか
マヤ「お、各国王様に聞いてみた行ってみたい名所ランキング!ですって」
「何だそりゃマジでただの観光地紹介じゃ……」
マヤ「お、こことか良いじゃないですか!
グラルト国の酒場の泉!!…あ、でも私お酒飲めないんだ…」
「え?!」
マヤ「え?」
「あ、いや、…お酒飲めないんだなぁって」
マヤ「そうなんです!私女神ですけど19歳ですよ?
他の皆はもう三桁とかばーっかなのに」
「19?!!」
いや…まぁそれもビックリだけど…ビックリだけども!!
…いや他の皆…ってことは女神ってやっぱ複数人…いや違う!それもだけど!!
グラルト国の名前が出てきた…つまりこの本は本当にグラルト国があった頃の…ミューズ語で書かれた本なのか?
………この人今さらっと言ってたけど…グラルト国の人間と接触してたよな?…
俺に鎌でもかけてんのか?
マヤ「いやぁ…でもやっぱ文字の翻訳はしんどいですねぇ」
「…そう言うもんなんですか」
マヤ「頭の使い方がね、ちょーっと複雑で、
私の魔法は言語の自動翻訳なんだけど、
会話だと結構楽なんだけどね、文字だとさ
見る、頭で翻訳、もう一回見る、意味がわかるって
無駄に段階踏む必要があるんだよね」
「はぁ…」
マヤ「まぁミューズ語って、日本語で言うと古文とか漢文とかみたいな感じで、ちゃんと勉強すれば多分私も普通に読めるんですけど…てか構造と発音自体はほぼ日本語なので君でも読める様になるんじゃないですか?」
マヤ「まぁでも私は、君で例えるとレ点の打ち方すら学びたくないくらいめんどくさがりなので、ミューズ語なんて
どこで使うかもわからない古くさい言語学びたくないですよ」
マヤ「あ、て言うか君ミューズ語がそもそも何か知らないか」
「まぁ…はい。さっぱりわからないです。これそんな昔の言葉だったんですね」
マヤ「ミューズ語ってね、私も詳しくは知らないんだけど、この異世界で昔使われてた公用語の一つなんだよ。でも何でかある時から日本語に切り替わったみたいなんだけど…何でだろうね?進化したのかな、転生者?全然わかんないや」
おい待て待て!!1この女神食べクズみてぇにポロポロ情報落としやがるな?!
おいおいおい!!!マジで頭の処理が追い付かねぇぞ?!
本気で何考えてる?!…いや何も考えてないのか?……
まさかこの人…機密情報溢しまくるから女神クビになったんじゃないのか?
昼間も事あるごとに色々と…
いや…良い。整理は後だ。
一つだけ思い付いた事がある。
それは
メモルヴァメモリーでマヤさんの記憶を直接読むことだ
わざわざ聞き出そうとしたり隠さずとも力を使って仕舞えば一瞬で解決する。
ヴァルキリーさん相手に似た事を一回やって上手くいってんだ。
そもそも能力がバレても関連する記憶を消せば良い。
そうすりゃ安全にアイリスの鍵を開けられて
ついでに女神や魔王の情報が得られるんだ
それにそうだ。この先もし俺が口滑らせても記憶を消して回れば…………
それじゃまるで俺が悪者か…
少なくとも今はまだ…やるべき事じゃないな
言葉で聞ける事は言葉で聞こう。
当然リスクは踏む事になる。
でも今日1日、自分の目で見てきたマヤさんを信じてみよう。
メモルヴァメモリーは本当にどうしようもなくなった時の最終手段だ。
マヤ「わ、見てくださいデートスポット特集ですって」
「マヤさん」
マヤ「?…あ、一緒に行きます?なんちって」
「………ずっと聞こうと思ってたんですけど」
マヤ「?」
「どうして女神をクビになったんですか?……」
マヤ「…」
「そもそも女神ってクビとかあるんですね」
この程度なら…聞いても問題ないだろう…
自分で見た事だけを、この人自身から出てきた
言葉への疑問なら問えるはずだ
マヤ「…やっぱ気になるよね」
「まぁそりゃもちろん」
マヤ「いやぁ乙女の心を覗こうったなんて君もすみに置けませんなぁ」
「いやいやいや!流石に気になりますってそんな重要情報」
マヤ「………悪いことをしたんだ」
「…情報漏洩ですか?」
マヤ「違うよ?」
マヤ「あ、いや、違わないか」
マヤさんの空気が変わった。
マヤ「私の犯した罪は2つ」
マヤ「女神としての禁忌……裏切りをしてしまった」
「……」
マヤ「一つは。捕えるべき人を逃がしてしまった事」
「…!!」
逃がしてしまった?捕えるべき人………まさか
ルナさんの事か?…あの時まさか本気で
マヤ「そして2つ目は」
息を飲む
・
・
・
マヤ「君に」
マヤ「メモルヴァメモリーを与えてしまった事」
・
・
・
は………
マヤ「…見たかったら、私の中を見ても良いよ」
マヤ「…嘘じゃないよ」
マヤ「……私ね、ほんとは女神から逃げてきたんだ」
マヤ「ねぇ…お願い」
マヤ「私を守って」




