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17話『疑心暗鬼』

【本作の表記】

名前「セリフ」 →登場人物の会話

???「セリフ」 →正体不明の人物の会話

「セリフ」 →主人公の会話


17話『疑心暗鬼』


あの騒動から早数日。

夢双病で倒れていた街の人は目覚め

半壊したギルドの修繕も始まった。

壊れる度に大きくなるとは聞いていたが今回もまた

大きくなりそうだと受付のお姉さんが言っていた。


しかし、全てが元通りとは行かず

ゆきなさんは行方不明で

キチガイマンも所在不明

アルピスさんも怪我が酷く

アイリスも未だ眠ったままだ……


今回の騒動は

駆けつけたヴァルキリー元帥の活躍によって解決したと報じられた


[軍本部 元帥室]


コンコン


ヴァルキリー「入りたまへ」


アルピス「失礼します。元帥」

珍しく鎧を脱いで、松葉杖をついたアルピスが

元帥室へ入ってくる


ヴァルキリー「……怪我の調子はどうだい?」


アルピス「経過は順調です…まぁ足は折れてますが」


ヴァルキリー「骨折は自然治癒を待つしか無いからね…そうでなくとも君は回復魔法と相性が悪かったか」


ヴァルキリー「立っているのもなんだ、そこに座ると良い」

元帥室に設置されたソファーを指差し、アルピスは言われた通り席に着く

アルピス「ありがとうございます」


アルピス「…例の騒動、私達が力を合わせても倒せなかったのに…まさか一人で倒してしまうなんて。流石ですね」


ヴァルキリー「ハッハッハよしてくれ。君達が弱らせていてくれたお陰だよ…結局、吸血鬼を倒しはしたが逃げられてしまったしね」


ヴァルキリー「そう…逃げられてしまった」


アルピス「…?」


ヴァルキリー「そうだ、所でアルピス。今回はどんな話があって来たのかな?」


アルピス「…単刀直入に申しますと…ゆきなさんについてです」


ヴァルキリー「…行方不明なんだってね。報告書を読んだよ。全員が同時にやられて…目覚めた時にはゆきな一人が何故か消えていた…と」


アルピス「……」


ヴァルキリー「………裏がありそうだね…君が虚偽の報告をする程には…何か事情があるんだろ?」


アルピス「……先に聞かせて下さい」


ヴァルキリー「……?」


アルピス「……ニホンジンって…転生者ってなんですか?」


ヴァルキリー「……アルピス」


アルピス「女神とは?月の女神とはなんですか?…」


アルピス「……結局オールーリスって…いったい」


ヴァルキリー「アルピス!!!」


アルピス「?!!」


アルピス「……元帥?」


ヴァルキリー「それが。ゆきな失踪に関係したキーワードなんだね?」


アルピス「えぇ…」


ヴァルキリー「…………………君は本当に優秀だ」


アルピス「??」


ヴァルキリー「…虚偽の報告書を作ったのは正解だ。本当に良い判断だ」


アルピス「……まぁ…念の為です」


ヴァルキリー「本当に良かった……」


ヴァルキリー「君を失いたくはないからね」





[洞窟]


ルナさんの記憶は暁のヴァンパイアに関する物だけを消した。

記憶ってのは不思議な物で一部が抜け落ちると、自動的に

補修してくれるらしい。

今ルナさんの中で俺は、国王ユーリの死を伝え、遺書を渡し

そしてグラルト国の歴史を求めるただの歴史好きの友人になっているようだ。


正直、嬉しくはない。

俺を恩人だと勘違いしているんだ。

騙してるみたいで…会うたびに心が痛む…

でも知らなきゃ行けない事が山程ある。

グラルト国の過去…マヤさんの事…

ルナさんからはまだまだ聞かなきゃいけない事がある。


都合良くヴァルキリーさんの記憶を消して…英雄に仕立て上げて…そうやって匿って……なにもかも自分都合な自分が嫌になる。


何故かアイリスだけがまだ目覚めてない………

キチガイマンの現状も分からず

ゆきなさんの居場所…魔王城の所在が不明で…

今俺はこの異世界で再び頼りを失った。


なぁキチガイマン…あんた今どこに居るんだ

魔王城のある町、何か知ってるんだろ?なぁ


教えてくれマヤさん

貴方さえ純粋に信じられなくなった今


俺はいったい何を信じたら良いんだ?


ルナ「?どうかしました?」


「あ、…いやちょっと考え事を」


ルナ「そうですか…あ、そうだ」

「?」


ルナ「前に解読を頼まれてた…えっと水の国は食べ物が美味しい?って話が乗ってるって本ですが」

「!!何か分かったんですか!」

戦いの前、ギルドの図書館でレイジが読んでいたこの本。

当のレイジも自由すぎるあまり所在が掴めず

もはや解読不可能だと諦めていたが、古代語…いやグラルト語を

読める人が居る今、この本も立派な資料になりえる


ルナ「いえ…実はあの本、グラルト語ではなかったんです」


「…え?」


ルナ「あ、いや…見覚えはあるんです。…確かユーリが外国とやり取りする時に使っていたと思うんですけど」


「………ちなみに…その言語を使う国って…覚えてます?」


ルナ「あ、それなら分かります」


良かった…!だったら十分可能性が!


ルナ「ミューズ国の公用語です」

[現在公開可能な情報No17]


『夢の後始末』

夢双病事件はヴァルキリー元帥の活躍によって終焉を迎えた。

しかし失ったものが多く、アルピスは足を痛め、ゆきなは行方不明で

アイリスは未だ夢の中。ギルドの最高戦力たるキチガイマンの所在も掴めず。

事件の残穢は未だ残ったままである

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