16話『奪う力。開く力』
【本作の表記】
名前「セリフ」 →登場人物の会話
???「セリフ」 →正体不明の人物の会話
「セリフ」 →主人公の会話
16話『奪う力。開く力』
何故だろう
赤子が意味も知らず手足を動かせるように
何となく理解できる
俺は今
ルナの記憶を見ていた
これは夢双病なんかじゃない
ルナが俺の血を飲んだ
だから互いに開いてしまった
俺の力は…!!
[ギルド一階 地下へと続く階段の前]
ヴァルキリー「おい!!!説明しろ!!何で君が魔王と同じ力を使えるんだ!!!」
元帥が武器を捨て主人公へ詰め寄る
ルナは力尽き倒れている
しかし死んだわけでは無さそうだ
ただ涙を流して倒れてる
「わからない……ですけど…何となく…出来る気がして」
どう言い逃れを…俺も答えを知らないのに説明なんか……
いや違うな…そうじゃない…話す必要はない……
俺に力の使い方はわからない
メモルヴァメモリー…オールーリスと同質の力なのか?
本当に未知数……だが
ただ体を委ねれば良い
そんな気もする
ヴァルキリー「…くそ!何て事を……」
スッ
ヴァルキリーの頭に手を伸ばす
「メモルヴァメモリー」
バチッ
・
・
・
「はぁ…はぁ……これにどれだけの意味があるかなんてしらねぇ…けど!!このままルナを軍に渡しちゃ…行けねぇ気がしたから……とっさだった」
[地図に無い洞窟]
ヴァルキリー元帥相手に未知の能力を行使し記憶を一部奪った。
これによって俺は誰の目にも付かぬまま、
吸血鬼を抱えて、街を出る事ができた。
ノープランで街を出た先で、とりあえず森に入って洞窟を見つけた。
吸血鬼と言うのは本当に不思議な生態をしているようで、
血を少し飲ませたら、首の傷が繋がってしまった
ルナ「………ガハッ」
喉に溜まった血液を吐き出し、目を覚ます
ルナ「………?」
「あ、おはよう」
ルナ「……君は……」
こちらを見つめているが、敵意はまるで見えない。
意識がまだ混濁しているようだ
「…ルナウルト?で良いんですよね?…グラルト国の」
ルナ「………そう…そうだ…私は吸血鬼で…それで…」
「すみません……正直俺もまだよく分かってないんですが……
魔王が鍵かけた貴方の思い出を勝手にこじ開けて覗いてしまいました」
…メモルヴァメモリー…ハッキリとはしないが俺には
記憶を消して、更に思い出させる力があるらしい。
…しかし一体どうして…?マヤさんから与えられた覚えも、他の
心当たりもない。俺は一体どこでこんな力を…
ルナ「………良いよ…良い…ちゃんと思い出せてよかった…」
「…ルナさん…魔王って悪者だと思いますか?…マヤさん…月の女神は…」
魔王……歴史書が言うには最悪の存在らしく
…どの資料を見ても簡潔に悪人と記されている
だが本当にそうなのか?
本当に絶対的な悪なのか?
わからないな……少なくとも今は
俺が一番の悪者に見える
ルナ「わからないよ……私は…私にはなにも」
「…そうですよね…すみません。」
………目的もハッキリとしないまま連れ出して…俺は何をしてんだか…
まぁこうなった以上…聞けそうなことは聞かなきゃ行けねぇ
「……ゆきなさんを何処に連れてったか教えて貰えませんか?…あ、ゆきなってのは、多分貴方と戦った人だとおもうんだけど」
ルナ「………ごめんなさい」
「?」
ルナ「………魔王様に…渡してしまった」
は…
「何…いや何で…?」
オールーリス目当ての人質?
確かにナンバー2のゆきなさんが
捕まればキチガイマンは動くだろうが
ルナ「彼女は……転生者だった」
「あーなるほど」
「ん?」
「え」
「え?!」
ルナ「知らなかったの?」
「いや全く……」
ゆきなさんが転生者??…あーいやでも
だとするとキチガイマンが現世の事知ってそうなのも
筋が通るか…
ルナ「魔王様はね…転生者を集めてるの」
「……もしかしてそれが今回の騒動の」
ルナ「…半分正解…でももう半分は私の復讐」
ルナ「ユーリを奪った、私達をこんな目に逢わせた
ミューズ国への復讐がしたかった……転生者も…女神の被害者だから…救いたかった」
ルナ「でももうわからないや…理由なんて忘れて…吸血鬼として増長された悪意で物事を判断して…結局私がやったことは大昔に私がされた事だった」
魔王の目的が読めないな……冒険者を集めて何になる……
それに女神被害者??確かにマヤさんには謎な所はあったが…
いやそもそも女神ってのは何なんだ?
最初はもっとフワッとした物だと思ってた…血筋?とか
なんとか話がどんどんややこしくなってきやがる
俺はどうしたら良いんだ?…何を信じれば………
魔王やキチガイマンなら何か知ってるのか?……軍の検閲にもなにか…
頭が痛くなってきた
シンプルに考えろ!今出来そうな簡単な事!!
………そういえばあの本…古代語の…ゴブリンの王の…いや違う…ユーリの遺書だ
あれが結局グラルト語で書かれた事なら
…もしかすると
「えっとルナさん……よかったらで良いんですけど
この本…俺の代わりに読んでくれないですか?」
本を受け渡す
ルナ「これは…」
「実は…グラルト語で書かれてるっぽくて…多分ゴブ…ユーリさんの書いたものだと思うんですが」
ルナ「!!!」
ルナが本を受け取り、一つずつページをめくり始める。静かに…そしてゆっくりと
「おそらくはグラルト国の歴史が記されてると思うんですが」
ルナ「うん…うん…本当に…詳しく書いてある……」
「その本…後で良いので内容を教えて貰えませんか?」
ルナ「…構わないよ…もう誰かに奪われてしまったと思ってたのに…残ってたなんて」
「……国や命は奪われようと…思いだけは繋げなきゃいけない……俺はそう長くない人生でそう学びました」
歴史の多くを奪われたミューズ国で…文献を漁る度に
痛感するよ…本当に
「そうだ…その本、途中までは字が丁寧なんですけど、
最後のページだけかなり走り書きで……
もしかしたら何か…書いてないかな……なんて」
ルナ「!!」
ルナがページを捲る
大きく…力強く文字の書かれたページ。
「…………」
ルナの肩が泣いている
顔は見えない
内容もわからない
でもルナは嬉しそうに笑っている
『この本を拾った人へ。もし貴方が
この文字を知っているなら
ルナと言う少女を探して伝えてほしい言葉がある』
『愛してる』
かつて存在した大国の
今はもう一人しか読めない言葉で
綴られた一言の思い
・
・
・
俺が殺してしまったから…俺のせいで
彼女は恋人を失い…そして吸血鬼として人を襲い
不必要な不幸を味わった
これは…俺だけに出来る…エゴによる償い
魔王は悪魔にもなれる力で…ルナさんの思い出を守った
俺の力は魔王と同質の…悪魔になれる力だ
閉じる力、与える力の魔王と
開く力、奪う力の俺…
表と裏…二つで一つ…
メモルヴァメモリー…
魔王はきっとこれを求めている……
俺は…俺に出来ることは
「ルナさん。今から貴方の記憶を消します」
「暁のヴァンパイアとして人を襲った記憶です。」
「この罪は、貴方が背負うべき物じゃない」
「貴方はもう何も苦しまなくて良い」
「罰があるならそれは俺が受けるべき物だ」
「この戦いの事、夢双病…転生者……魔王…
嫌なことは全部忘れて良い」
「ゆきなさんだって俺達が勝手に救いに行くからさ」
ルナ「……ありがとう」
「………メモルヴァメモリー」
これで救われる訳じゃない……
何かを取り戻せるわけでもない。
ユーリさんが死んだ事は
抱えたまま生きることになる
これは彼女が望んだ事だ
やっぱり…理屈じゃないらしい…
楽しい事ばかりじゃないが……
この本が彼女の支えになることを願う
[現在公開可能な情報No16]
『ユーリの遺書』
かつて存在した大国の歴史から、ある事件の詳細、
何気ない300年余りの日常、そしてある人に向けた
ささやかな願い。この全てをもう誰にも読めない言葉で記した書物である




