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13話『美女とゴブリン』

【本作の表記】

名前「セリフ」 →登場人物の会話

???「セリフ」 →正体不明の人物の会話

「セリフ」 →主人公の会話


13話『美女とゴブリン』


[グラルト国 荒れ果てた町]


町中が酷く荒れている。

いくつかの建物からは火が上がり

焼け焦げたゴブリンや無惨にも

殺された人間の死体が辺りに

散らばっている。


変わり果てたこの町のかつての大通りを

国王はボロボロの身を引きずりながら歩いている


ユーリ(そこら中で火事が起きている…遺体も散乱している)


ユーリ(いや…違う。マートン、タルカス、ミキヤ、ルーチェル、アスカ、ナツキ、ミソラ、ケイ、トリトン、マツ皆、この国の…俺達の家族だった人だ)


ユーリ「すまない…皆…すまない…」


ユーリ「俺のせいだ!!!俺が判断を誤ったから!!!もっと早くに!!もっと早くに気付くべきだった!!!!

何か出来たはずなんだ…分からなくても…こうはならないための手段を…なぜ諦めてしまったんだ……どうして!!」


地に伏せ、己を呪い。そして後悔を吐露し懺悔する

ユーリ(あぁ…もう民は、誰も、ゴブリンでさえも俺には近付かないのか)


ユーリ(俺ももう立派なゴブリン…か)


スッ


ユーリ「?!」


ルナ「見つけた!!!!」

死角から飛び出してきたルナがユーリに抱きつく。

探知故か、気付くことが出来なかった


ユーリ「ル、ルナ?!何で!!グローリーはどうしたんだ?!」


ルナ「私、魔法使いだよ?あんなのすぐに……」


ルナがユーリの体に顔を埋める

そして服を強く握りしめる


ユーリ「?ルナ?」


ルナ「あの後ね…あの後、三人で逃げたんだけどね…ゴブリンに襲われて…2人が守ってくれてね………」


ユーリ「……そうか……そうだったのか」


ユーリが手をルナの頭に伸ばす。

しかしその手はルナに触れる寸前で止まる。


ユーリ「すまない……もう俺は君とは居られない」


ユーリが優しく、ルナを突き放す


ユーリ「俺はもう。俺では居られないんだ。

…この心もいつまで持つか」


ルナ「じゃあ私も!狂欲病に!!ゴブリンになるよ!!だからほら!!」


ルナが服の襟を破り、首筋を差し出す


ルナ「噛んで!!」


ユーリ「な、何考えてんだ!馬鹿!」


ルナ「2人だって!まだ生きてるよ!!だってあの2人だよ?!」


ルナ「だから…ユーリも生きようよ」


ルナ「狂欲病って一番強い欲が出るんでしょ!!だったら私はユーリと生きたい!だから人を襲うゴブリンになんてならない!!ユーリもそうでょ?!」


ユーリ「ルナ……」


ルナ「いつかしたあの約束。別荘の約束

覚えてる?今日からさ、町を出てどこか別のところで暮らそうよ」


ルナ「山でも洞窟でも何処でも…人が居ないところでさ。私、豪邸じゃなくても、ユーリとならどんな場所でも幸せだよ」


狂欲病は最も強い欲が肥大化し、狂い、そして実体化する病である。

王としての責務によって立ち続けた男は、今目の前の愛すべき人の言葉に

よって、ほんの一瞬、心が揺らぐ。


ほんの少し、たった数センチ余り飛び出した彼女と生きたいと言うささやかな

願いが、狂欲病によって一瞬で強く揺らぎないものに変わる。

今のユーリに、迷う心は何処にもない。


ユーリ「……あぁ…わかった…俺も…君と居られるなら、他の欲なんて捨ててやる…!だからゴブリンになんてならない……!最後の瞬間までずっと一緒だ」



[夢双病まで残り375年]



ユーリは他の人と違ってた

見た目は少しずつ変わっていったし

年も取ったけど


それでもやっぱり違う


ユーリは心を失わなかった

グローリーさん達があの後生還した事を聞いた時も

ユーリは喜んでいた

でも会いには行かなかった


今は無きグラルト国の元王様として

ユーリは今、ゴブリン達を束ねている

彼には不思議なカリスマがある

それはゴブリンにさえ影響があったのか

それとも武力や衣食住を求めてか

私には分からなかった


[夢双病まで残り150年]

[とある洞窟]


人里離れた洞窟の中で、人の姿を止めぬ男が牢屋の前に立っている。

その中には少女の姿があった。



ユーリ「すまない、いつもこんな牢屋に閉じ込めてしまって」


ルナ「ううん良いの。気にしないで。

こうしなきゃ私、他の皆に襲われちゃうし」


ユーリ「やっぱり俺はもう…人間じゃないよ…

君を他のゴブリンから守るために…僕はゴブリンが

女性を拐うことを許している…人として最低な事だ」


ルナ「…もう。きっとそう言う次元の話じゃ無くなってしまったんだと思うな」


ユーリ「?」


ルナ「安心して!私だってユーリを倒そうとする奴が居たら殺してでも止めるから!」


ユーリ「ははっ頼もしいな…」


ユーリ「やっぱり君は特別だったんだな」


スッとユーリが懐から分厚めの本を取り出す。


ルナ「?今日も何か書くの?」


ユーリ「あぁ。グラルト国の歴史の全てと…君との日常…そしてあの日の出来事の全てを記そうと思うよ」


ルナ「思えば……もう数百年…私もユーリの血が混ざって、

ずいぶんと長生きになっちゃったね」


ユーリ「嬉しい誤算だね」


ユーリ(他のゴブリンは寿命が短いのに何で俺はこんなに長寿なんだ?…ルナの……血……?)




洞窟で、そうやって他愛もなく

時間ばかりが流れて行く


ある日。

奴らはやってきた。


[とある洞窟]


ユーリ「最寄りの国の軍隊が攻めてきた、くそっ」


ユーリ「早く逃げよう!ルナ!!」

遠く、遠くへ

2人だけで逃げて行く。


もうずいぶんと人間離れしたユーリと

歩けないほど弱った私。


2人で一緒にひたすら走った。



誰も知らない言葉を喋って

誰も知らない過去を背負って


現実から逃げ続ける


[深い森の中]


必死に逃げるうちにいつしか

見知らぬ森まで来てしまった。

足をぴくりとも動かせないルナを

抱えて、ユーリは必死に走っている。


その最中、背後から見知らぬ声に呼び止められる

???「見つけた!!!」


ユーリ「◇●*○◎◇&○◎§§#◎??!!!」


ルナ「†◇*§&@○♡☆○&&♡◇☆☆??!!!!!」


不意の声に思わず振り向く。

そこには赤い髪の女性が立っていた。。

取り乱す二人を見て赤い髪の女性も困惑しているようだ。


???「え?…あ、グラルト語か!じゃあやっぱり君が……月の女神のルナ?で良いんだよね。」


互いに見知らぬ言語で言葉を発する。


ルナ「ね、ねぇユーリこの女の人何て言ってるの?」


ユーリ「……知らなくて良い事だ」


???「対話は無理かなぁ…まぁ仕方ないか。えーどうしよう」


ユーリ「我、ゴブリンの王なり」


???「うわ!喋った、いや喋っては居たか」


???「正直信じがたいけど…君ってもしかして

ユーリウルトさん?…長生きだね。まるで女神みたいだ」


ユーリ「………要件を述べよ。まず名乗れ」


???「君には…えっと、何て名乗るのが良いのかな?

えっと…ミューズ国?いや別に私あんまり関係ないしな………あぁそうだじゃあ。」



???「月の女神、マヤ・セレーネです」


マヤ「よろしく」


[夢双病まで…残り一ヶ月]











[現在公開可能な情報No13]


『グラルト語』

300年以上も昔に滅んだとある国の言語。

今となっては読める人間は居なくなってしまった。

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