12話『病は気から』
【本作の表記】
名前「セリフ」 →登場人物の会話
???「セリフ」 →正体不明の人物の会話
「セリフ」 →主人公の会話
12話『病は気から』
じんわりと。
目の前に広がっていく
それは一瞬の出来事の様な…それでいて…
自分自身じゃないような…
一人称か、三人称かもわからない
例えるならそれは夢のような感覚で
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[???国 ???城]
整った豪華な部屋
立派な椅子に座った国王らしき若い男と
その側に立つ側近兵が会話をしている。
ユーリ「流行り病?」
側近兵「えぇ、どうやら町の一部で変わった病に患った者が居るそうで…なんと言いますか、理性を少しずつ失いながら、血色が悪くなっているようと」
ユーリ「理性を失うとはどういう事だ?」
側近兵「何と申しますか…性や食の欲求を押さえられなくなるようで、今は拘束魔法で止めるのが精一杯のようです」
ユーリが頬に手を当て、少し考える
ユーリ「麻薬系の違法魔法の類いではないのか?」
そこへ誰かがやって来る
??「どうやら本当に病のようですよ」
ユーリ「!!ルナ!!もう動いて良いのか!」
ルナ「お陰さまで」
ユーリ「そうか!それは良かった!」
少女の様な幼さや無邪気さと国王の前に立つ程の
大人びた雰囲気を併せ持つ、そんな少女
ルナがユーリの元へやって来る
側近兵「…では自分はこれで」
側近兵は二人の間の空気を察したのか
少し微笑みながら、部屋を後にする
そんな側近兵をルナは不思議そうに見ている
ルナ「?」
ユーリ「でも本当に良かった…!君を娶りたいと言い出す奴が現れたかと思えば…あんな騒動にまで発展して」
ユーリがルナの方を見る
ルナ「ミューズ…でしたっけ」
ルナもユーリの目を見ている
ユーリ「あぁ。初めて聞く名だったが、その国、ミューズ国の王曰く、ルナの血はミューズの王族のもので、返して欲しいとか何とか…」
ルナ「私…元々孤児だったもんね…ユーリのお父様が拾ってくれなかったら…今ごろどうなってたんだろう」
ルナ「私が本当は王族の血筋何て…あ!でも!
だったら私もユーリと対等になれるって事じゃん!」
ユーリ「はっはっは!確かにな!でもルナ。
君は元よりウルト家の家族で」
ユーリ「グラルト国の現王、ユーリウルトの正妻であるぞ」
ルナ「そっか…そうだよね、えへへ。正直まだ実感無くてさ…でもユーリと居れて嬉しい」
ユーリ「国王の妻とあらば誰も手出しは出来まい!はっはー!」
グラルト国の王。ユーリウルトは私の幼馴染みで
今は夫です。派手な恋愛も、ありきたりなお見合いもなくただ日常の中で、私を守るために決まった結婚。
ミューズ国との争いも激化せず今は和解して
どうにか平和な世界を取り戻しました
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[グラルト国 ウルト城 国王の間]
ユーリ「まずいな…実にまずい」
何時にもましてユーリに余裕がない
肘を付き、口を手で多いながら
見るからに悩ましい顔をしている
グローリー「しかし国王。そう悠長なことを言っている余裕はないようです。もう数ヵ月も過ぎれば患者の数は倍に膨れ上がります!狂欲病と名付けられたこの病!恐ろしい速度で伝染し、対応策もないまま、死人ばかりが増えている!とても結界魔法だけでは押さえられません!」
グローリーが王に結論を急いでいる
ユーリ「分かってる!!」
グローリー「…やはり間引くしか」
苦しそうな顔でグローリーは言う
ユーリ「分かってるさ…でも駄目なんだ。
俺に民は殺せない…そんな決断できるはずがないじゃないか…」
右手で顔を覆う。その手は震えている
ガタンッ
部屋の外から何かの物音が鳴る
ユーリ「?!」
側近兵「誰だ?!」
扉の前に立っていた側近が扉を開けると
部屋の外から聞き耳を立てていた
ルナが転がり込んでくる
ルナ「あ…えっとごめんなさい!盗み聞くつもりじゃ…」
申し訳なさそうに謝るルナ。
ユーリ「いや…良いんだ。でもルナ、今町は病気が流行ってるからあまり部屋からでないでおくれよ。
俺達が必ず解決させて見せるから」
先程までの焦りを見せぬよう取り繕おうと
少し無理をしながらユーリが言う
グローリー「ルナさん!国王が全部片付いたら別荘で暮らそうってさ!」
そんな空気を察してか、グローリーが妙な事を言い出す
ユーリ「おい」
ルナ「本当ですか!!」
目を輝かせるルナ
ユーリ「ッ~あーそうだそうだ!一緒に家を立てよう!だから部屋で設計図でも書いて待ってておくれよ!」
頭をかきながらユーリは言う。
ルナ「うん!わかった!ありがとうユーリ!」
ルナは嬉しそうにしながら、手をふって
部屋後にする
側近兵「…様子を見てきます」
側近兵も部屋を出る
ユーリ「あぁ頼んだよ…ってかお前何変なこと言ってるんだよ」
グローリーに身体を向け、文句を言う
グローリー「良いじゃないですか、2人暮らし。こんなデカイ城は僕に渡して、夫婦仲良く暮らしてください。
それよりも今後の事なのですが」
ユーリ「いや待て、お前ちょっと、え?」
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[ウルト城 ルナの部屋]
ユーリとの約束の件で散らかしたのか
ルナの部屋にはいくつかの本が散乱している。
部屋を照らす魔法も消えて、ルナがベットに転がり
丸くなっている。
ルナ「ユーリはああ言ってたけど…この国は最近ずっと変だ…魔力の匂いも異常に感じるし…人の魔力の形が歪だ」
ルナ「うーん…そうだ!自分の目で見に行こう!」
ベットから勢い良く飛び起きたルナは
側近兵の目を掻い潜り、部屋を抜け出した。
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[グラルト国 隔離エリア]
グラルト国王の辺境に作られた隔離エリア
町には必要最低限の住居が立ち並び
その外側を透明な結界魔法で覆っている
ルナ「ここが……」
ルナが隔離エリアの前で
立ちながら中の様子を覗いていると
誰かが後ろの方から走ってくる
側近兵「ルナ様!!!!探しましたよ!!!!」
息を切らしながらやって来たのは、
ルナの失踪にいち早く気付き城を飛び出した
側近兵だった。
ルナ「え?!え、あ、兵士さん?!いやこれはあの!散歩!散歩ですよ?」
フラフラ歩くふりをしながら誤魔化す
側近兵「散歩で来るような場所じゃないでしょう!
それに私達の包囲網を掻い潜ったと言うことは…また魔力探知ですか」
ルナ「使えるものは使えと言う父の教えです!」
側近兵(前国王か…!ウルト家の人って皆おかしいと思ってたけど、血じゃなくて教えか…家族だなぁ)
側近兵「そんなことよりも。ここは危険ですから早く帰りましょう。結界で無理矢理町に不可侵領域を作ってるんです」
ルナ「?…あ、なるほど…少しでも感染を遅らせるために隔離してるのか…でもこれって」
ルナが隔離エリアを見ながら少し考える様な身振り手振りで話す
その言葉に側近兵は返す
側近兵「えぇ。結論を遅らせるための延命です。治癒魔法も効かず、原因もハッキリせず、それでいて増え続ける患者…いやもはや暴徒とかした民を現状救う手だてはありません…今は隔離領域に医者さえ入ることは」
隔離エリアをじっと見つめるルナが
側近兵に何かを伝える
ルナ「ねぇ、兵士さん」
側近兵「?」
ルナ「ここからはハッキリとは見えないんだけどね、子供の患者も…あんなに居るんだね」
側近兵「……子供?」
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[ウルト城 国王の間]
ユーリ「ルナ。この際だ、町に出たことは咎めない。何を見たんだ?あの結界の中で」
ユーリがルナの両肩に手を起きながら目をじっと見て話している
そんなユーリに対し素直に返事をする。
ルナ「うーん子供?ぽい子が結構たくさん居ました。何か町もちょっと荒れぎみで、やっぱり閉鎖空間にずっといると子供は退屈で暴れちゃうんですかね?」
その言葉に、ユーリの表情が曇る
ユーリ「……」
グローリー「ルナさん。落ち着いて聞いて欲しいんだけどね。あの結界の…いや感染者に」
グローリー「子供は一人も居なかったんだ」
ルナ「え?…いやでも確かに!」
ユーリが手を離し、席に戻りながら話す
ユーリ「町を隔離して以降…新規の感染者は0になった。しかし…隔離施設内で感染者同士が子を作った。それも沢山…」
グローリー「隔離を始めて1年…すぐに成したとて
子供は皆数ヵ月にも満たないはず。妊婦の感染者も記録にない」
ユーリ「つまりだ。走り回れる程の子供なんか居るはずが無いんだ」
ルナ「じゃ、じゃあどう言うこと?!」
ユーリ「わからない…」
グローリー「だが確実に人体や…子供に対しこの狂欲病が何らかの作用を引き起こして居るのは間違いない」
ルナ「誰も、誰も中に入れないんだもんね」
ユーリ「あぁ。正直最新のデータが欲しい時期だ、
それに結界も張り直さないと」
グローリー「だが誰が行くんだ?恐らく中に入れば速攻感染。つまりは使い捨てになるわけだが」
ユーリ「もしもの時は…俺が行くよ」
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[ウルト城 ルナの部屋]
ルナ「あれから…もう1月?かな…やっぱりずっと屋内は寂しいな」
ルナがベットに横になりながら天井を眺めていると
血相を変えたグローリーが息を切らしながら
部屋の扉を開く
グローリー「ルナさん!!ルナさんは居ますか?!」
ルナ「グローリー?!どうかしたの?」
咄嗟の事に驚きながら、ルナがベットから
飛び起きると、グローリーは
息を整えながら、そしてルナの目をハッキリと
見ながら言う
グローリー「大変です!!ユーリさんが…国王が
狂欲病に!!」
ルナ「え…」
グローリーの言葉に、ルナの思考が止まる
しかし、グローリーの言葉は止まらない
グローリー「それだけじゃない!!町の結界が破られたんです!!!この一月で子供が異常な数に増えていて!!
耐えきれなくなったみたいなんですが!…とにかく逃げましょう!!貴女を逃がすよう国王より命を受けました!
さぁ早く!」
グローリーがルナの腕を掴む。
だがルナは抵抗する
ルナ「い、いや!ユーリは?ユーリは?!」
目を見ながら訴えるルナ、数秒の沈黙の後
目をそらしたグローリーが言う
グローリー「狂欲病は…その人の欲が最も反映される病…彼は今。国を守る王としての責務で立ち続けています。
本当に狂ってる」
だがすぐにルナの方を向き直し、前向きな言葉を
投げ掛ける
グローリー「でも大丈夫です!必ず治せるようになる!町も元に!!」
その瞬間、城の外から
ドゴォォォォォォォン!!!
と、爆音が鳴り響く
グローリー「んな?!」
部屋の外から、側近兵がやって来る
側近兵「何をしているんだ!!早くしろ!!住民が次々やられてる!!あのちっさい民…いや!チビのゴブリンに!!」
側近兵「くっそ!どうなってんだ?!狂欲病ってかこれじゃ伝承のゴブリンじゃないか!」
側近兵は取り乱している様で、現状を理解している様子だ。
グローリー「外は…ユーリはどうしてる…民は…本当に皆」
グローリーの声が揺れる。そんな彼を鼓舞するかのように側近兵は叫ぶ
側近兵「もはや国の話はどうだっていい!!俺も立場は捨てる!!今は個人の!俺達の命と!そして信じたいと思えた男の!守りたいもんを守る!」
グローリー「お前…」
側近兵「この城も限界だ!今すぐ行くぞ!」
側近兵がルナの手を引き、城を抜け出す
ルナ「ユーリ…!」
ルナ(ユーリなら大丈夫…きっと。だってユーリはいつもボロボロで、それでも必ず帰ってきた…必ず)
この日私が見たものは
民が魔法で抵抗し
暴力が行き交い
そうして壊れていく町の景色
[夢双病まで残り…375年]
[現在公開可能な情報No12]
『夢血開錠』
ルナに噛まれた主人公が夢の世界へ誘われた。
これは本当に夢なのか?それとも誰かの記憶なのか?
数百年分の夢旅行




