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11話『夢血解錠』

【本作の表記】

名前「セリフ」 →登場人物の会話

???「セリフ」 →正体不明の人物の会話

「セリフ」 →主人公の会話


11話『夢血解錠』


[ギルド 一階 地下階段前]


天井を貫き、現れたルナが口にした…

目覚めの要求


ルナ「転生者……ゆきなちゃん?」


アルピス「テンセイ?さっきから何を言っているんだ」 

アルピスが首を傾げる


アイリス「…」


呆れ気味に、それでいて小馬鹿にするようにニヤリと笑い、アイリスを見つめる

ルナ「あー君は知らないのか…でも隣の子は知ってそうだね」


アイリスを見るルナの視線に合わせ

アルピスもアイリスの方を向く


アルピス「アイリスさん?」


アイリス「……昔転生者のお姉さんと会ったことがあります。でも、私が知ってるのは彼女だけです」


ルナ「…可哀想…女神の被害者がまだいたなんて」


アルピス「ゆ、ゆきなさんは何か知ってるんですか?……ゆきなさん?」

咄嗟にゆきなに視線を向ける

ゆきなはルナの方を見ていた。


ゆきな「……どうして私を疑うのかな。私は日本なんて知らないし、マヤなんて知り合いもいないよ」

珍しく表情を殺している


ルナ「理由を知りたいの?じゃあ教えてあげる」

嬉しそうにルナが語る


ルナ「ゆきなちゃんさ。魔力持ってないでしょ」


アルピス「!!そんなわけがないでしょう!現に貴女はさっきゆきなさんの魔法を受けたばかりのはずです!」


アイリス「…!」


ルナ「やっぱり君は勘が良さそうだね」


妖艶な幼女の様に、ルナが口元に手を当てている

ルナ「私はね。人の魔力が見えるんだ。壁越しでも離れてても魔力で存在や性別が見えるし、魔法の起こりも認識できる」


ルナ「でもね。見えないんだ。ゆきなちゃんの魔力だけが」


アルピス「魔力なんて個人差が」


ルナ「大小あれど0なんてあり得ない。この世界の人間なら…ね。」


アイリス「…ゆきなさん?」


アイリスがゆきなの方に視線を向ける


ルナ「さっきの魔法だって、起こりは見えなかった。熟練魔法使いでもなきゃこんなのあり得ないのに、攻撃はどれも雑な弾幕ばっかでさ」


ルナ「だから私は考えた。もしかしたらゆきなちゃんは外付けの便利な魔道具で魔法を使ってるんじゃないかって」


ルナ「例えば…君がさっき使った爆風と同じように」

指を刺しルナからアルピスに視線が送られる


アルピス「!!…あれは私が作った魔道具…だが」


ルナ「そう!でもねぇ?…ゆきなちゃんのはもっと特別そうだなぁ……ねぇゆきなちゃん」

妖艶な視線がゆきなに向けられる。その表情はまるで勝ちを確信した

子供のようでもある。


ゆきな「……」

表情を殺すが、眉を少し顰めている


ルナ「その魔道具は“誰に貰った“のかな?」


アイリス「もう良いでしょう!!」


アイリスがルナに飛びかかる


しかし


簡単に弾かれてしまう


ルナ「君には聞いてないよ」



ルナ「マヤかな?スズかな?それとも戦いの女神かな?」



ゆきな「………これは拾ったの」

目を合わせずあからさまな嘘をつく


ルナ「そっか」



アルピス「ゆきな…さん?」

ルナ「アルピス…だっけ?ずいぶんと可愛らしい顔をしてるよね!」

不意にアルピスににじり寄り、顔を見つめる。

アルピスの顔に手を当て、目尻の辺りから指先で頬をなぞり、

そして手をパッと放す。

突然の出来事にアルピスは抵抗や反撃に動けず、ただただ困惑している


アルピス「ぼ、……私を馬鹿にしているのか!!」


ルナ「うーんまぁ良いや興味ないし」

すぐにそっぽを向きフラフラと歩くルナ


ルナ「答えるのが遅すぎるよ。ゆきなちゃん」


ルナ「はぁ…いやだなぁこう言うの」


アイリス「ゆきなさん!!ゆきなさん!!」

未だ立ち尽くすゆきなに必死に呼びかける

当のゆきなの表情はよく見えない。


ルナ「3分経過。タイムリミット。交渉決裂」

ゆっくりとルナが武器を取り、構える

アイリス、アルピス共に臨戦態勢へ


アルピス「時間を無駄にした…いや」


アイリス「正直…寿命が3分伸びただけのような気もしますね」


ルナ「最後に良いことを教えてあげる」


アイリス「貴女の殺し方?だったら大歓迎ですよ」


三者が睨み合う。アイリスとアルピスは

力強く地面を踏み締め、ルナは軽い姿勢で立っている。

明らかに隙だらけのルナに対し二人が同時に動き出す。

ゆきなは未だ臨戦体勢ではない。


ルナの目に今の二人の動きはあまりに鈍く見えている

だから彼女は向かいくる二人に対しゆっくりと煽るように

冥土の土産を告げる


ルナ「月の女神はね」


ルナ「最も戦闘向きの女神なの」


刹那


ルナの攻撃が再び二人を襲う


向かいくる二人の間を縫う様に

再生した翼による高速移動で一気に間合いを詰め


抵抗の余地はおろか二人の認識が追い付かない程に素早く


首筋に刃が……


届く



その瞬間


ルナの攻撃が寸前で止まる。

まるで時でも静止したかの様に

高速で移動していたルナの動きが

急停止する。


ルナ「なっ」

これは、ルナの情けではない


アイリス「?!」


咄嗟によろけ、立ち直すアイリス、

直ぐに反撃には移さず、再び間合いを取り

アルピスも同様の動きをする


普段の2人であれば即座に反撃に移していた


だが二人は、起こるはずもない現状に驚き

敵味方共に一手遅れる


ルナの静止

武器がカタカタと震え、必死に動かそうとするが

まるで本当にその場に固定されたかの様に、

ルナは己の武器に拘束された


この現象を現実にする最強の男は今この場にはいない



ゆきな「「「「オールーリス」」」」


アイリス「こ、これって」


ルナ「馬鹿な…」


アルピス「オールーリス…!!…でも彼はどこにも」



ゆきな「私に許されたたった一度きりのチャンスだよ」

盤上を覆す想定外の一手。その場にいた全員の思考は、肉体と共に静止した。

アイリスとアルピスでさえもオールーリスで武器ごと止められてしまっている。


ゆきなが歩く。歩み寄る。

まっすぐとルナの前へ


ゆきなが右腕の袖を破り捨て


ルナの口元に腕を差し出す


ゆきな「夢双病になれば抵抗できないでしょ?それが証拠。だから私一人を連れてく代わりに、他の皆は助けてあげて」



ルナ「……!!あはっ…!ハハハハ!!良いね!!良いよ!!素敵だよゆきなちゃん!!」



アイリス「ゆきなさん!!!」


アルピス「くっそ!なんだこれ!!何で、オールーリスが!駄目だ!行っては駄目だゆきなさん!」

背後から二人の呼び止める必死な叫び声が聞こえる。

しかしゆきなは振り返らず、その表情を決して二人には見せない


ゆきな「あはは、ごめんね。でもやっぱ2人には死んでほしくないや」


ゆきな「この町は私を受け入れてくれた…彼なんか命がけで救ってくれた。今だってお守りのお陰で……」


ゆきな「黙っててごめんね。アイリス。」


ガブッ

ルナが、差し出されたゆきなの腕に噛みつく


ゆきな「私は…違う世界を知ってるんだ」


ルナの一噛みでゆきなが夢の中へ落ちる


オールーリスの効果の消失


三者が自由を取り戻し


アイリスとアルピスはルナに飛びかかる

[軍本部 元帥室]


ヴァルキリー「君は一足先に本部に向かっていてくれないか?もちろん私も直ぐに向かう」


「…分かりました」

もう一体の吸血鬼…ルナ様とか呼ばれてた奴、

おそらく…この事件の元凶で…馬鹿みたいに強いはずだ…


結局キチガイマンが吸血鬼にやられたかどうかはハッキリしてねぇけど…

でも可能性がある以上無視はできない…少なくとも軍は壊滅させたんだもんな…


くっそ!ビビるな!早く行くんだ!俺!!




[ギルド一階 酒場]



はぁ…はぁ……はぁ?


「ギルドが…ボロボロになってる…」


やっぱり吸血鬼が来たんだ!くっそ!中はどうなってる!無事で居てくれよ!



[ギルド 患者保護区域]


受付の人が倒れている。が、血の垂れた噛み跡があるためついさっき夢の中へ行ったのだろう。この3日間一人で患者を診てくれてたんだもんな……


「この人がやられたって事は…」

最悪の想定が鮮明に脳裏に浮かぶ


ギルドは奥に進むに連れてひどく荒れている


大きな建物なのにあまりにも静かすぎる

俺の呼吸と心音だけが響いているようだ


[ギルド一階 地下階段前]


荒れた扉を開けた先には……

天井が吹き抜けて赤い月が覗き込む


暁の月光が照らす先には


「!!アイリス?!アルピスさん!!」

ボロボロになり倒れ混む二人がいた

傷が酷い。しかし息はある。

アルピスさんは鎧が一部破損している


そして…よく見ると腕には噛み跡がある

アイリスも……体に噛み跡


「夢双病…!やられたのか?!……」


くそ!くそ!!じゃあどうする?!二人がやられたんだぞ!

俺にやれんのか?!ヴァルキリーさんがいれば…いや

キチガイマンがやられてるんだ!期待しすぎるな!


くそっくそっ


ふと周囲に目をやると違和感に気が付く


あれ…そう言えば

「ゆきなさんは?」


ルナ「ゆきなちゃんならさっき連れていったよ」

2人を抱き抱え、座り込んでいた俺の背後から

声が聞こえる。


ゆっくりと振り返ると女と目が合う


女には翼が生えている。牙が見える

そして服はボロボロで傷もある。


これは明らかな戦闘の跡



即座に理解する



コイツは吸血鬼だ

アイリス達はコイツと戦っていたんだ


そして……


この状況は…詰みだ


ルナ「君は…抵抗しないでね」


ルナ「転生者くん?」


女の甘い吐息が首元に迫る。



俺は夢の中へ……



扉の鍵を開いてしまった。







[現在公開可能な情報No11]


『転生者』


日本からやってきた人物の総称。

体内に魔力を留めることが出来ず、

魔法を扱う事が出来ない。

しかしそれ故に、魔力探知を

逃れる事ができる。

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