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1-1-25 伝説の魔法のデバイス

その晩、ヴェリルライト家では急遽、家族会議が開かれた。

サーラの名前が女王選定のリストに載っているという事実を前に、アリアもリアナも動揺を隠せなかった。


「こんな危険な戦いに、サーラを巻き込むわけにはいかない」


アリアは断固反対の立場を示したが、サーラもネフィリスも、諦める様子はなかった。

リアナも二人の意見を聞きながら、胸の奥に引っかかるものを感じていた。


結局、その場で結論が出ることはなかった。


翌日、リアナはエグバート先生のもとを訪れ、相談を持ちかけた。

先生の実験室に入ると、彼はいつものように書物を広げ、静かに魔法の研究に没頭していた。


「リアナ、何か相談かね?」


エグバート先生は顔を上げないまま問いかける。


リアナは少し緊張しながら、家族会議の内容と、サーラが女王選定に名を連ねていることを説明した。

すべてを聞き終えたあと、先生はしばらく黙っていたが、やがて静かな声で口を開いた。


「私は本来、中立を守るべき立場にいる。だが、知識の探究のためであれば助力を惜しむつもりはない。君の妹には……確かに、何か特別な才能があるのかもしれない」


その言葉は一貫して冷静だったが、どこか含みを感じさせた。


「ですが、先生……サーラが本当にその戦いに出るべきかどうか、私は……」


エグバート先生は静かに本を閉じ、リアナを見つめた。

その眼差しはいつも通り穏やかだったが、どこか重みを帯びている。


「リアナ。君は、なぜ次期女王候補が十二人に限定されているのか、その理由を考えたことがあるかね?」


リアナは一瞬戸惑い、答えを探した。

だが、何も思い浮かばない。


彼女は首を振り、正直に答えた。


「……いえ、考えたことがありません」


エグバート先生は微笑みを浮かべると、静かに立ち上がり、棚から一冊の古い書物を取り出した。

古びた表紙には、独特な模様と文字が刻まれている。


「この王国には、伝説の十二の魔法デバイスが存在する。

それぞれが十二星座をモチーフとし、かつて邪悪な女王を封じるために用いられた聖なる力を持つものだ。


これらのデバイスは特別な者にしか扱えない。そして、女王候補が十二人である理由は──

聖域に持ち込めるデバイスが、この十二個しか存在しないからなのだ」


リアナは息をのむようにして、その言葉に耳を傾けた。


エグバート先生は本のページをめくりながら、最初のデバイスについて語り始める。


「まず最初は──『白羊のはくようのたて』。

牡羊座を象徴する、防御のデバイスだ。


どれほど強力な攻撃でも、この盾の前では無効化される。

だが、防御に特化しているがゆえに、攻撃へ転じることは難しい」


先生は静かにページをめくり、次の項目を指先でなぞった。


「次は『金牛のきんぎゅうのよろい』。

牡牛座を象徴する鎧だ。


筋力と耐久力を極限まで強化し、持ち主をまるで動く要塞のようにする。

だが、その重量ゆえに扱うには相応の熟練が必要だ」


先生はページを進めながら、小さく頷いた。


「『双児の双剣そうじのそうけん』。

双子座を象徴する二振りの剣だ。


二本の剣は互いに補完し合い、素早く正確な攻撃を可能にする。

持ち主の意志に応じて形を変える、戦術性の高いデバイスだ」


さらに一枚、ページがめくられる。


「『巨蟹の腕輪きょかいのうでわ』。

蟹座を象徴する守護の腕輪だ。


受けたダメージを吸収し、その力を反射する。

だが、一度に大きな衝撃を受ければ、その負荷は持ち主に返ってくる。

慎重さが求められるデバイスだ」


エグバート先生は、少しだけページをめくる手を止めた。


「『獅子の剣(ししの剣)』。

獅子座の象徴だ。


勇気とリーダーシップを持つ者にこそふさわしい剣。

持ち主の勇気を倍増させ、その一撃に揺るがぬ力を宿す」


先生は静かに付け加える。


「誇り高き戦士でなければ、この剣は応えない」


リアナは次第に、その力の大きさを実感し始めていた。


「『処女のしょじょのしょ』。

乙女座を象徴する魔導書だ。


膨大な知識と呪文が収められた神秘の書。

だが、その知識を乱用すれば、持ち主は知識そのものに飲み込まれる」


先生は眼鏡の奥で目を細め、続きを読み上げる。


「『天秤のてんびんのくさり』。

正義と秩序を司るデバイスだ。


正しい心で使う限り、敵の動きを封じる。

だが、不正に使えば、その鎖は持ち主自身を縛る」


紙の擦れる小さな音とともに、次のページが開かれた。


「『天蠍のてんかつのゆみ』。

蠍座を象徴する弓だ。


矢に込めた力が高まるほど、一撃は必殺の威力を持つ。

だが、その反動もまた大きい。

使いすぎれば、持ち主の身体が耐えられなくなる」


先生は指先でページを送り、淡々と説明を続ける。


「『人馬のじんばのやり』。

射手座を象徴する槍だ。


遠距離攻撃と俊敏性を併せ持ち、戦場を縦横無尽に駆ける。

扱いこなすには高い技術が必要だが、極めれば戦況を一変させる力を持つ」


先生は一度だけ頷き、次の項目へと視線を移した。


「『磨羯の籠手まかつのこて』。

山羊座を象徴する籠手だ。


魔力を一点に集中させ、圧倒的な破壊力を生み出す。

障害物を一撃で粉砕するほどの力を持つが、消耗も激しい。

使いどころを誤れば自滅する」


そして先生は、ゆっくりと次のページを開いた。


「『宝瓶のほうびんのつぼ』。

水瓶座を象徴する壺だ。


どんな攻撃でも吸収し、蓄積したエネルギーを解放できる。

だが、力を溜め込みすぎれば、持ち主でも制御できなくなる」


そして──

先生は最後のページを開いた。


「『双魚のそうぎょのかがみ』」


「魚座を象徴する鏡だ。


この鏡は、未来を垣間見る力を持つ。

だが、その未来の解釈を誤れば、持ち主は自ら道を誤る」


説明を終えると、エグバート先生はリアナに優しく語りかけた。


「これらの伝説のデバイスは、ただの武器ではない。

それぞれが持ち主に力を与え、守ろうとする意思を持っている。


サーラも、もし選ばれれば、そのデバイスによって導かれることになるだろう。


だから──デバイスを、そして妹を信じるんだ」


リアナは先生の言葉に、かすかな希望を感じながら、静かに頷いた。


「さて、リアナ。

サーラは、どのデバイスに選ばれると思う?」


リアナは言葉を失った。


開かれた本の挿絵へ、視線が落ちる。

そこに並ぶ十二のデバイスを、彼女の目はゆっくりと辿っていく。


だが、どれ一つとして答えを示してはくれなかった。


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