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ゲノム・グレムリン  作者: 大塚めいと
番外編 楽園追放
83/89

9 「女神の導き」

勝利の女神がほほ笑むのは……





「物心がついたとき」って言葉がある。



 それはたいていの場合生まれて4歳~5歳頃の子供が、自分が何者であるかということを意識し始めた頃を指すんだろうけど、私の場合は違った……



「女神メグジェシカ……このこの地上への顕現、こころより感謝申し上げます。私ども【楽園】の従者は、現人神であるあなた様の為にあります。どうぞなんなりと……」



 全身素っ裸で粘液まみれ。棺桶のような箱から目覚めた私は、目の前で跪く黒い服の男、ジョン・ブラックマン神父の演劇じみた台詞を聞いて『物心』がついた。



 私はその時すでに10歳くらいの年齢に達していて、言葉も文字も初めから遺伝子に刻み込まれていたかのように当たり前に理解できた。



 それまでの生活なんて初めからなかったかのように、それが当然とばかりに時間だけがあっという間に流れていった。



 女神メグジェシカとして崇められ、多くの人間にちやほやされる毎日。背筋を伸ばして悪趣味な玉座に座って厳かな雰囲気を作って、従者達から感謝の言葉を伝えられると、正直少しだけ気分が良かった。



 でも、どこか虚しくて……額縁だけの絵画を眺めているような味気なさが心の中で渦巻いていて、このまま大人になって私は一体どこに行ってしまうのだろう……? と考えるようになった。



 でも、あの日……



 新たなメグジェシカ教の信者が【楽園】入りしたということで、いつもの段取り通りにそれを歓迎する儀式に参加した。このまま形通りの挨拶をしてそれで終わり。そう思って臨んでいたのだけど……



 衝撃を受けるって言葉の真の意味を、私はその時初めて理解したみたい。



 新入りとして現れた少年、ダフィーの顔を見た瞬間、頭の中に埋もれていた記憶が、井戸水のように一気にブワッ! ってわき上がってきたの。


 メグという名前で平凡な生活を送っていた私。



 笑顔が素敵なママが大好きだった私。



 いじめっ子の股間に野球のボールを命中させた私。



 ネットの影響でパルクールの真似事をして足が擦り傷だらけになっていた私。



 そして、ダフィー・ノーツと図書館で待ち合わせをしていた私。



 女神ではなく、平凡な少女だった頃の私を思い出したの。



 だから……阻止したかった。



 ダフィー、あなたが【上の力】の人間に殺されてしまうことを。そして、ブラックマン神父によって再び記憶をいじられてしまうことを……



 それが怖かった……せっかく取り戻した過去の記憶……たとえそれがコンピュータの中で作り上げられた二次元の世界のモノであっても、尊い存在であることには変わらない。



 だから……今、こうしてキミと一緒に戦っている。



 キミと一緒に【楽園】の女神としてではなく、平凡なクラスメイトとして日常を取り戻す為に……








「ダフィー! しばらく私がアンタの目になる! 指示通りに動いて! 」



「わ、分かった! 」



 メグは負傷したダフィーの止血をしつつ、現状を見渡して把握する。



「前方2時方向に2体が左右に並んでる! 左腕で私たちをガードしつつそのまま突っ込んで! 」



「うん! 」



 血液で目を汚してしまい、視界が未だに戻らないダフィーだったが、メグの指示を信じて【機神象】を操作、脚部ジェットブースターを噴出させながら高速で走ってBMEの元へと突進する! 



「メグちゃん! 大丈夫なの? 後ろにいるヤツほっといていいの!?  」



 ケイトの言うとおり、ダフィー達の後方には2足歩行で胸部ガトリング砲を構えたBMEが1体いる。【機神象】はそれによって損傷し、右腕を失っている。放っておくには危険と考えるのは当然だ。



「あのガトリング砲は一度使うと砲身が熱くなっちゃうから、冷却の為に連続でつかうことはできないの! だから、今のうちは大丈夫! まずは前方の2体が二足歩行形態にならない内に倒しちゃうことが先決! 」



「ええっ! なんで知ってるのそんなこと!? 」



「わからない! でもなぜか感覚で分かるの、前に一度戦ったことがあるような錯覚すらあるの」



「ひええ……」



 先ほどまで、女神と称されフォークより重いものは持ったことのないような雰囲気すらあったメグが、今ではうってかわって歴戦のソルジャーのような頼もしい目つきをしている。



 ケイトはその変貌ぶりに呆気にとられはしたが、今のメグこそが彼女の本質なのだろうと感じる部分もあった。



 なぜなら今、メグの顔はこれまで一番と言っていいほどに“イキイキ”としていたからだ。



「ダフィー、前方の2体が象牙の機銃を向けてスタンバってる! 牽制だろうからそのまま突っ込んじゃって! 」



「了解! 」



 メグの言うとおり、前方のBME2体は突風のような機銃を【機神象】に向けて乱射する! 



「ズガガガガガガガガガガッ!! 」



 むき出しになっているコックピットを守る為、【機神象】の左腕で覆ってガードしているものの、銃撃を弾く音はけたたましく、弾丸が腕の隙間を通り抜ける可能性や跳弾で命中する可能性だって十分にある。



 ケイトは「もうダメだ! 死ぬ死ぬ! 死んじゃうってコレ! 」とわめき散らかすが、メグとダフィは一切の迷いなく敵陣へと乗り込んで行く! 



「ダフィ、合図をしたら像の鼻を真横になぎ払って! 」



「了解! 」



 目は見えぬとも、メグの言葉さえあれば迷いなく地獄の底だって突き抜けられる。ダフィーの彼女への信頼は、かつて女神として崇めていたからではなく、一人の友人として共に約束を果たすために培われた確固たるモノだ。



 弾丸を弾き、火花を散らしながら敵との距離を詰めていく。2体のBMEはこれ以上【機神象】に接近を許すことは危険と判断。一度左右に分かれて分断攻撃に戦術を変えようと朽ちたコンクリートの地面を踏みしめようとする。



「今だよ! 」



 その瞬間をメグは見逃さなかった! 銃撃が止んだその瞬間、【機神象】は一文字に長鼻を振り払う! 



「ビシャアッ!! 」



 【機神象】に備えられた第三の手とも言える長鼻の鞭は、BMEのモノよりも強度も段違いであった。その一撃は2体の頭部にまとめてダメージを与えることに成功し、体勢を崩させることに十分な効果を発揮した! 


「ダフィー! まっすぐ左ストレート! 」



「うん! 」



 間髪入れず繰り出された【機神象】の左拳による一撃! それは1体のBMEの頭部を確実に粉砕させ、機能を停止させた! 



「そのまま9時方向に拳を振り回して! 」



 残るBMEは2体! 突き出した左拳をそのまま真横に振り、いわゆる“裏拳”をもう1体へと見舞い、これで1対1! 



 ……と行きたいところだったが、戦いにおいて最も恐れる要素“不慮のアクシデント”という魔物はいつだって潜んでいるものだ。この【機神象vsBME】においても例外ではない! 



「グワッシャアアアアッ!! 」



 コックピット内が夕日に照らされたかと思うほどに飛び散る火花と閃光と共に、ダフィーは【機神象】の機体が“軽くなった”感覚を覚える。



「嘘!? 」



 唯一【機神象】に残っていた左腕が、度重なる攻撃の負荷にとうとう耐えきれなくなってしまい、無惨にもちぎれ落ちてしまった! 



「ウオォォォォオオオオ!! 」



 BMEはその隙を見逃すかとばかりに、【機神象】に突進! そのまま仰向けに押し倒されてしまう。



「うわああああッ! 」



 衝撃で揺れるコックピット、メグも思わず悲鳴を上げてこの絶望的状況の突破口を見いだせずにいた。



「ヴオオオオオオオッ!! 」



 BMEは雄叫びと共にダフィー達に向けて象牙の機銃を向ける。命の終了まであと0コンマ5秒! 



「ズドォォォォンッッ!! 」



 爆発音がコックピット内の空気を振動させる。硬質な物同士がぶつかり合う鈍い音の響きはあの世への旅路の合図ではなかった。一筋の希望はまだ残されていた。



「ダフィー君! はやくとどめを! 」



 その希望の音を奏でていたのは、ケイト・T・ヴァンデ。彼女の長い腕の中に携えられていたのは、その長身に全く劣らない大きさの大型ライフル。



 彼女の放った一撃は敵の頭部に命中し、戦闘不能に追い込むにはほど遠いものだったが、反撃の糸口をつかむには十分な時間を稼いでいた。



「うおおおおッ! 」



 ケイトの言葉通り、ダフィーは感覚で【機神象】の長鼻を使って目の前のBMEの首に巻き付ける! 



「おりゃあっ!! 」



 そしてそのままBMEの首をねじ切り、窮地を脱することに成功した! 



 これで残るBMEは1体! 



「ケイト! そんな物を隠し持ってたの!? 」



 タッチペンで精密な絵画を描く流麗なイメージとはかけ離れた、無骨なボルトアクション式ライフル銃を抱くケイトに、メグは眼球が飛び出るかと思うほどに驚きを隠せなかった。



「いやあ、はは……やっぱり女の子一人で知らない場所を旅するってのは危険でしょ? 護身用にと思ってパパが持っていたのをこっそり拝借して……」



「護身用ってレベルじゃないよその銃は……」



 まるで人喰い鮫と一戦交えるかと思うほどに長い砲身と、リップクリームを思わせるほどに大きな銃弾は明らかに“護る”為でなく“狩る”為に作られた兵器だった。



 その銃はかつてクジャク部隊が対BMEを想定した特殊な螺旋型弾薬を射出する為に作られた物で、ケイトはそうと知らずに“小さい銃だと自分の身体のデカさが際立っちゃうから”という理由で勝手に持ち出していたらしい。



「メグちゃんとダフィ君が頑張ってるのに、お姉さんの私が何もしないワケにはいかないもんね」



「……ありがとうケイト。あとは残り一体、一緒に戦おう! 」



「で、できる限り頑張ります! 」



 ケイトはぎこちない手つきでレバーを引いて排莢し、次弾を装填しながらそう言った。涙目で声も震えていたが、彼女が精一杯勇気を振り絞っている姿は、メグとダフィーの志気をより一層高めてくれた。



「メグ、ケイトさん! 気を付けて! 最後の一体が近づいてるみたいだ! 」



 二足歩行形態となったBMEはその胸部のガトリング砲で威圧しながら、【機神象】のすぐ近くまで迫っていた。砲身の冷却も終わった様子で、あとはそれを安直に砲撃さえしてしまえばダフィー達の敗北だ。



「ダフィー、目の調子はどう? 」



「だいぶ見えるようになってきたよ」



「それじゃあ、思い出して! 私がキミを助ける為に何をしたかを!」



 メグのその言葉で全てを理解したダフィー。先ほど朽ち落としてしまった【機神象】の左腕を長鼻を使って器用に巻き取った。



「何をする気なの? 」



 ケイトの質問にダフィーは「ブン投げる! 」とシンプルに返答、長鼻で右腕を掴んだまま【機神象】はハンマー投げの要領で一回転! 



「そりゃああああッ!! 」



 遠心力が加わり、大砲のような勢いで右腕が射出される! その的は天体望遠鏡のようなガトリング砲をこちらに向け、今まさに砲撃せんばかりの体勢のBME! 



「ウォォォォォォーーーーッム!!!! 」



 その直後、悲鳴に似た騒音を発して膝を付くBME! ガトリング砲から発せられた弾丸は前方ではなく、足下の地面を抉るだけに終わった。



「突っ込んでダフィー! 」



「おう! 」



 ダフィーが【機神象】を操作して放り投げられた左腕は、BMEの“股間”部分に見事に命中! そこが急所かどうかは分からないが、敵の体勢を崩すことに成功したのは確かだった。



「うおおおおおおおッッ!!」



 そのまま【機神象】を走らせてBMEとの距離を縮めるダフィー。あとは最後の一撃を放ち、この戦いに終止符を打つ! それだけだった。



「グロォォォォオオオオ!!!!」



 しかしこのままで終わるBMEではなかった。瞬時に体勢を整え、ガトリング砲の標準をダフィー達に向け直した! 



「やばい! 」



 ダフィーはその危険を察知し、すぐさま“攻撃”を“防御”へとシフトさせる! 



「ガッシャァァァァアアアアッ! 」



 まさに危機一髪。【機神象】の長鼻は悪夢のガトリング砲にガッチリと蛇のように絡ませてその起動を押さえ込んだ。(BMEのガトリング砲は、砲身が回転しなければ弾丸が発射されない仕組みになっている)



「ちょっとマズイよ! 」



 最悪の攻撃は免れたものの、ケイトの言葉通りこの状況はダフィー達にとって好ましいモノではない。なぜならBMEはこちらの【機神象】とは違い“両手”が健在なのだから。



「ウオオオオオォォォォッ! 」



 ガトリングを封印されたBMEは、当然のごとく残った両手と長鼻を使ってダフィー達に襲いかかる! 



「ケイトさん! 頼む! 」



「うわああああッ! 来るな! くるなぁぁぁぁ! 」



 ケイトは焦りながらも、コックピットに進入しようとするBMEの巨大な手をライフルを使って迎撃するが、これでは防戦一方。こちらが長鼻を使えるようになるまで反撃する手段が一つもないのだ。



「ねえダフィー」



「どうしたメグ!? なにか作戦が? 」



 危機的状況にも関わらず、メグは一切動揺することなくダフィーに耳打ちする。



「うん。私が今からあのガトリングを止めてくるから、そのスキに長鼻を解いてヤツに攻撃して」



「止める!? ど、どうやって!? 」



「その方法聞かせたら、きっとキミはダメだ! っていうから、もう行くね! 」



 そう言い残し、メグは颯爽とコックピットから飛び出し、【機神象】の鼻の上を綱渡りのように渡り出してしまった! 



「え? ちょ、ちょっと! 」



「メ……メグちゃん!? 何やってんの!? 」



 ダフィーとケイトの声も聞こえていないとばかりに、メグはアクション映画のスタントマンのような身のこなしで、鼻からBMWのガトリング砲の上へと降り立った。こうなったらメグの言葉を信じるしかない。



「ケイトさん! あと少しだけ持ちこたえてください! この後BMEに隙が生じます! そこで一気に叩きます! 」



「ふええええ!? それってどれくらい? もう弾もなくなっちゃうよぉぉぉぉ! 」



「多分スグです! メグを信じましょう! 」



 ケイトの銃撃で飛び散る火花を浴びながら、メグはガトリングの砲身を伝い、BMEの内部まで進入。彼女の狙いはそこにあった。



 やっぱりあった! これだ! 



 メグが探していたモノ。それはガトリング砲へ弾を送り込む為の“ベルトリンク”だった。



 ガトリング砲や機関銃の多くは銃弾をベルト状につなげて弾を弾倉に送り込む仕組みになっている。それは装弾数を大幅に増やせるという利点があるが、泥や異物がこびりついてしまうと弾詰まりを起こして射撃、砲撃が出来なくなってしまうという弱点もあった。



「これで【楽園】とはオサラバね!  」



 メグは自身の髪に厳かに飾りつけられたティアラを取り外し、それをベルトリンクの隙間に差し込む。ティアラ本体は青銅製、飾り付けにダイヤモンドが散りばめられて簡単には壊れない! 



「ダフィー!! ビシッとブッ倒しちゃって!! 」



 ダフィーはガトリングの砲身上に立ちながら、こちらに握り拳を突き上げるメグを確認。彼女の言葉を信じ、ガトリング砲を押さえつけていた長鼻を解き放った! 



「ウオオオオオッ!! 」



「ギャアアアアッ! 」



 凶悪なガトリングの砲身を目の前に向けられて悲鳴をあげるケイト。このまま砲撃が始まったら肉片すら残らない血しぶきと化すことは必至。



「大丈夫ですケイトさん。女神がこの勝利を導いてくれました」



 BMEのガトリング砲は再びその轟音を発することはなかった。「ガッ! 」とスチール缶を踏みつぶした時のような音を響かせるだけで、凶弾はその砲身から飛び出さずに刹那の静寂を生み出すだけに終わった。



「うおおおおおッ!!!! 」



 ダフィは裂帛の気合いを込めて【機神象】を操作、長くしなやかな象の鼻を大槍の如く突き出し、黒い巨象の顔面を鋭く貫いた。



「ウオオオオォォォォーーーーッッッッ!!!! 」



 BMEは周囲の空気が爆発するかのようなけたたましい断末魔を上げ、全身から火花を上げ始めた。



「メグーーーーッ!! 」



 ダフィーは素早く【機神象】の鼻をBMEのガトリング砲の上に残ったメグへ向ける。



「ダフィーーーッ!! 」



 メグはその鼻に飛びつき、間一髪BMEが崩れ落ちる際の巻き添えを喰らわずに済み、再びコックピットへと舞い戻った。



「すごいよ二人とも! やったね! 」



 ケイトは飛び乗ったメグごとダフィを抱きしめ、死闘を乗り切った喜びを発散させた。



「ケイトがライフルで守ってくれたおかげだよ……って、ちょっと痛いよ」



「あ、ごめんね。ついつい力が入っちゃって……でもすごいよ! 10体もいたBMEをやっつけちゃったんだから! 【アースバウンド】に現れた時は、一体倒すだけでも一苦労だったって聞くよ」



「いや、【機神象】とブラックマン神父の教え……そして女神の導きのおかげですよ」



「ダフィー! もう女神と言うのはやめてって! 」



「ご、ごめん……はは! もうティアラも無くなっちゃったしね」



「あんなのいいの、どうせ似合わなかったし。それよりダフィー、頭の血は大丈夫なの? 」



「あ、そういえば……まだ止まってないのかな? 」



「見せてみて! 深い傷だったら大変だから」



 そうしてダフィーの傷に再び止血を施すメグ。そんな二人の健気な姿にしばし見入っているケイト。



「いいねぇ仲良くて……それに引き替え……」



 ケイトは未だにコックピット内の隅で寝息を立てているジーツを頬をペチペチとさわって起こそうとする。しかし、その反応は一切ない。



「はぁ……ジーツ君。キミは一体いつまで寝てるのかな? パパが言ってたよ。キミ、彼女がいるんでしょ? それをほっぽり出してこんなところでおねんねタイムだなんて、ダフィとメグちゃんを見てよ。思い合う男女ってのはああするべきなのよ。ハァ……私だってホントはこの子らみたいにイチャイチャしたいのよ……身体ばっかりデカくなっちゃって、心はミジンコなのよ! だから憧れのあの人に…………」



 それとなく聞き流していたケイトの一人ごとが突然止まったことに、ダフィーとメグは揃って違和感を覚え、同時に胸騒ぎも走った。



「ケイト、どうしたの? 」



 メグの言葉に、ケイトは黙ってコックピットの外を指さす。その先を目にした二人は、自分たちには安息はまだまだ訪れないことを悟った。



「BMEの援軍か……」



 目視で10体……いや、20体を越える数のBMEが、このホームセンターへ向かって地響きを上げつつ向かってきている。今度こそマトモに戦っては勝機はない。



「ダフィ……諦めないよ私は……絶対だからね」



「うん、ぼくも同じだ。絶対に逃げ切ってキミとの約束を果たす! 」



 

心が負けない限り、敗北は訪れない。

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