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友達は悪魔野郎  作者: pauel
日本編
2/23

この悪魔野郎!

 次の日は祝日だったので飛鳥を駅に届けるついでに、三人で買い物に出かけることになった。母さんは息子が増えたとはしゃぐ。



 母の愛車で百貨店に出かけ買い物に数時間付き合わされる。ああ、つかれた。


 飛鳥は疲れた素振りを見せず、母さんの買い物に愛想よく付き合っている。

 

 俺は買い物袋を大量に持っている。つまり荷物係りだ。


 買い物の所々で飛鳥が寂しそうな表情をちらちら見せる。


 あら飛鳥さん、そんな顔しちゃダメよ? いつでもうちに遊びにおいで~。


 母さん、こいつは言わずとも勝手に来るよ。


 フフンと鼻で笑いながら、さあどうでしょう? と両手を広げておどける。


 あら飛鳥さん、涼に似ちゃダメよ。


 母さん……


 飛鳥はとても楽しそうだった。その表情からは先の寂しそうな表情はみてとれない。



 買い物を終え駅へ向かう途中、車の中の俺は居眠りをしていた。



 ザザッサァーーー


 ん……寝ぼけて目を擦る。



 飛鳥……どうしたんだ。その格好似合いすぎてるぞ。


 目の前に紺のスーツを着て淡いネクタイを締めている飛鳥がいた。イケメンにはスーツがよく似合う。



 あれ……どこだここは。



 涼……実はお別れだの時間なんだ。悲しいけど。



 何を言っているんだ?



 俺は飛鳥と向かい合った状態で立っている。白い空間だが他には何もない。


 君らはもうすぐ死んでしまう。



 お前らしくないジョークだなと軽口を叩くが、飛鳥は悲しそうな表情のままだ。


 まてまて説明しろ。誰がいつどこで何で死ぬんだ。そもそも死ぬってどうなるんだ! なんだこれは! お前はなんだ!


 僕は悪魔なんだ。君らは今日死ぬ運命にあるようだ。次の瞬間、対向車線のトレーラーが横転事故を起こす。


 君ら親子はそれに巻き込まれる。


 おいおい、ネタ動画でも録ろうというんじゃないだろうな? 隠しカメラは? ドッキリでも怒らないから真実を話せよ、な? と嫌な予感しかしない俺は話を濁そうとする。



 飛鳥は困ったような表情を浮かべ、ちょっと待っててくれ、と姿を消す。



 俺は白い空間に一人取り残された。


 さっきまでは車の中にいたはず。どこだここは?


 コーヒーを思い浮かべると、テーブルの上にコーヒーが現れた。カップにはアスカと名前が書かれている。なんかシュールだ。



 びっくりするが反射的にカップを手に取る。


 豆を惹いたときの香りがする。ひきたてか。一口、二口と飲むが普通にうまい。


 まじか。これは夢ではない。これだけリアルなのだ。コーヒーの味もしっかりとしている。


 ありえない。何で死ななければならないんだ。


 母さんは一人手で苦労しながら息子を育て、今まさに死に、さらにその息子も死ぬ。


 俺の母さんの人生がそんな糞みたいな人生だと。


 ふざけるな! 俺は何も返せていない!


 それに俺はまだ人生楽しんでいない。やりたいことは山ほどあったのだ。それがこんなバカな。



 涼……と声をかけられた。何時の間にか飛鳥がそばに立っている。


 彼女と話したよ。


 母さんと?



 詳しく説明している時間はないんだ。現実世界は少しずつ時間が進んでいる。


 ここは仮想現実か? そんなことより母さんだ!



 冷静になれ……くそ、意味不明だ。この状況を何とか打開するんだ。しかしやれることは限られているはず。


 ベストは夢おちだ。しかし俺が望むことでで夢オチになるわけではない。



 こういう時は基本に立ち返るんだ。やれることをやるしかない!



 飛鳥さん、我々はそろそろ家に帰りたいんだが、と俺は爽やかな顔で飛鳥に言う。



 涼、話を聞いていたの?



 ダメか、少なくとも夢オチではなさそうだ。



 飛鳥さんよ、貴方に食べてもらおうとカスタードプリンを冷蔵庫にいれてあるんだが、早速食べに戻らないか?



 いいねぇ! さすが涼だ気が利く~。これが終わったら早速食べにいこう!



 だめだ、釣れない。こいつは全てを終わらせてから食べに行くつもりだ。



 飛鳥せんぱ~い、もうっ勘弁してくださいヨ~ あとで肩揉みするからん。とナヨナヨして、意表を突く。



 飛鳥はピクッと眉を動かして考え込む。うっすらと笑っているような……恐ろしい。


 ここか、このあたりがツボなのか? やっぱお前あっち側の住人だろ! と突っ込みを入れようとしたところで彼はいい放った。



 君の母さんと契約しようと思う。ただし涼が許可が必要だ。



 どういうことだ?



 これで涼は無事になれる。



 それはありがたいが……



 その代わりに涼の母さんはしばらく戻ってこれない。



 お前の話は分からない、何もかもがだ!



 涼……もう本当に時間がない、あと五分程度だ。だから簡単に現状を説明しておくよ。



 1.君ら親子は死ぬ運命にある。死に方ははさっき説明した通り。

 2.僕は悪魔だ。君の母さんと契約し、母さんはしばらく戻れない。涼は事故を乗り越えられる。母さんもだ。

 3.この空間は僕が作り出した仮想空間で現実より時間がゆっくりだ。しかし数分後には我々は現実に戻る。そしてトレーラーが突っ込んでくる。契約をしないと数分後に死んで終わりだ。

 5.君らを助けることで僕もペナルティを受ける。その時は助けてもらうことになる。



 わかったかい?





 なるほど、わからん。とにかく母さんはどうなるんだ?


 しばらく戻ってこれないが用事が済んだらまた戻るよ。



 しばらくだって? いったいどれくらいーー



 ビシッ



 白い空間に亀裂が入る。



 この空間が完全に崩れた時が丁度君ら親子の寿命のときだと考えてくれーー


 パリッパリッと白い空間から破片らしきものが剥がれ落ちていく。


 くそっ、本当だろうか。飛鳥が嘘を言っている可能性もある。しかし飛鳥が悪魔だと? なんてこった、なぜ高校生の姿をしてーーだめだ、いま考えても仕方がない。最悪なのは俺も母さんも死んでしまうことだ。


 わかったと頷く。そもそも選択肢がないじゃないか。全くふざけた奴だ。



 では成立~っと。



 涼、心を落ち着けて目を閉じて~リラックス、と飛鳥がいう。


 ムカつく奴だ、この悪魔野郎!



 じゃあそのままゆっくりと目を開けて。びっくりするから落ち着いてね。



 え?



 目を開けるとフロントガラス越しにトレーラーが横転したのを見えた。こちらに向かって。



 うわああああああ!



 轟音、衝撃、そして静寂ーー




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