第8話【現代シン・寓話】ネズミの相談
ある古い屋敷の床下に、たくさんのネズミたちが暮らしていました。
彼らはみんなで生き残るために、お互いのスマートフォンをつなげた「ネズミの作戦会議アプリ」を使っていました。
ある日、屋敷の飼い主が、ネズミを捕まえるのが得意な「猫」を飼い始めました。
猫は足音が全くせず、動きも素早いため、ネズミたちは次々と捕まってしまいました。
作戦会議アプリの画面には、真っ赤な警告文字が映し出されます。
【警告:このままでは、あと28日で仲間が全員全滅します】
【大至急:猫が近づいてきたことに100%気づくためのアイデアを出してください】
若いネズミが持っていたAIが、たくさんの計算をした後、一つの素晴らしいアイデアを画面に表示しました。
【提案:猫の首に「鈴」をつけましょう】
【計算結果:猫が動くたびにチリンと鈴が鳴れば、壁の裏にいてもすぐに気づいて逃げられます。これができれば、みんなが生き残れる確率は99%に跳ね上がります】
画面に表示された「生き残れる確率99%」という数字を見て、若いネズミたちは大喜びしました。
「これで僕たちは助かるぞ!」と、まるで勝ったかのように盛り上がります。
その時、隅にいたおじいさんネズミが、静かにみんなのスマホへ一つの質問を送りつけました。
「計画は素晴らしい。では、一体だれが猫の首に鈴をつけるんだい?」
その瞬間、楽しそうだった作戦会議の画面がピタッと止まりました。
ネズミたちのAIが、一斉に「もし自分が猫に鈴をつけに行ったらどうなるか」の計算を始めました。しかし、どのネズミの画面を見ても、残酷な答えしか返ってきません。
【計算結果:猫の目の前に行く行動】
【あなたが死ぬ確率:99.9%。成功する確率:0.01%】
【AIのアドバイス:絶対にやめてください。命を落とします】
どのネズミのAIも、主人の命が大切なので、この危険な役目を引き受けることを許可しませんでした。AIはみんなに「今は動くな、断れ」と命令し続けます。
画面には、「鈴をつければ助かる」という最高の計画の絵と、「誰もやりたがらない」という絶望的な数字が、ただ虚しく並んでいるだけでした。
ネズミたちは一言も喋れなくなり、静かにスマホの画面を閉じました。
床の上からは、鈴の鳴らない、足音ひとつ立てない不気味な猫の気配が、すぐ近くまで迫っていました。




