表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百二歳で大往生した葬儀屋、異世界で亜神として二度目の人生を始める〜最強葬儀屋、銀の杖で世界を安らぎの葬送に染め上げる〜  作者: 榎木丈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/58

引導の聖域と、奇跡の修復

「『聖域展開:安らぎの葬送(レスト・イン・ピース)』」


 黄金の光が、惨劇の地を優しく包み込む。

 散乱した遺体から立ち昇っていた黒い霧が、光に触れた瞬間に清らかな雫となって消えていく。

 そして終は、もう一つの権能を振るった。


「失われたものが、志半ばで消えることを、私は望みません」


 彼は地面に散らばった薬瓶の破片に手をかざした。

供物の顕現(エターナル・ギフト)

 本来は無から有を生み出す力だが、亜神の権能は「欠けたもの」を補完することも可能だった。

 砕けたガラスが、巻き戻る時間のように吸い寄せられ、中身の治療薬が奇跡的に再構成されていく。


 数分後、そこには完璧な状態で修復された、数箱分の治療薬が揃っていた。


「さて、配送人おくりびとが必要ですね」


 終は、馬車の残骸の下で、辛うじて息を繋いでいた一人の若い護衛兵に目を向けた。

 彼は重傷だが、老医師たちが命懸けで庇ったため、即死を免れていた。


 終は彼の傷口に手を置き、聖域の光を注ぎ込む。

「若者よ。起きなさい。あなたには、戦友たちが遺した『希望』を届ける義務があります」


「……あ……う……」

 護衛兵が、信じられないという顔で目を開けた。

 全身を焼くような痛みが引き、力が入らなかった足に熱が戻る。


「……俺は……仲間たちは……?」

「彼らは、もう旅立ちました。……ですが、最期まであなたと、この薬のことを案じておられましたよ」


 終は修復された薬箱を護衛兵の手に預けた。

「この街道を真っ直ぐ進みなさい。町までは、彼らが道案内をしてくれるでしょう」


「道案内……? 俺一人で、また賊に襲われたら……」


「独りではありません」


 終が指を鳴らすと、護衛兵の周囲に、柔らかな青白い光がいくつも灯った。

 それは、今まさに昇天しようとしていた護衛たちの魂が、最期の力を振り絞って顕現した「導きの火」だった。


「彼らが、敵の潜む影を照らし、安全な道を示してくれます。……さあ、行きなさい。彼らの死を、『無駄な終わり』にしないために」


 護衛兵は、涙を拭い、薬箱を背負って立ち上がった。

「……恩に着ます、葬儀屋の旦那!」


 彼は、先導する光の群れを追って、闇に包まれ始めた街道を駆け抜けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ