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百二歳で大往生した葬儀屋、異世界で亜神として二度目の人生を始める〜最強葬儀屋、銀の杖で世界を安らぎの葬送に染め上げる〜  作者: 榎木丈


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泡沫の葬送

「……私は、ただ……失いたくなかっただけだ。あの子が、灰になるのを見たくなかった……」


 司祭の杖が落ち、石畳に乾いた音が響いた。彼の瞳から、数百年分の凝固した涙が溢れ出した。

 終は銀の杖を高く掲げ、霊峰で得た白銀の宝珠を共鳴させた。

具現化の儀(コンストラクト)星降る海への引導アストラル・シー・フォール


 大聖堂の天井が透き通り、都全体が宇宙の海に浮かんでいるかのような幻想的な空間に変貌した。水槽の濁った水は浄化され、人魚たちの異形は、かつての月光を纏うような美しい姿へと戻っていく。


「これより、水の都レノーア、ならびに深海の乙女たちの浄化儀式を執り行います。……最後の手向けは、あなたがたが愛した本当の海の記憶です」


 終が鎮魂の歌を口ずさむと、都中の人々を縛っていた「永遠の若さ」という名の呪いが、光の鱗となって剥がれ落ちていった。

 数百年分の時間が一気に流れ込み、人々の姿は年相応に老い、ある者は静かに崩れ落ち、ある者は白髪の老人となって涙を流した。人魚たちは、終に向かって静かに尾を振り、歌声を合わせた。それは命の終焉を祝福する、この世で最も美しい挽歌ばんかであった。


「……葬儀屋よ。……ようやく、眠れるのだな。……潮騒が、聞こえる……」


 人魚たちの身体が、柔らかな泡沫となって弾け、宇宙の海へと昇っていった。それに続くように、都で限界を迎えていた多くの魂が、安堵の溜息と共に光へと溶けていく。

 大聖堂を支配していた腐敗の臭いは消え、そこにはただ、新月の夜のような深い安らぎだけが残った。


 終は銀の杖を静かに下ろし、泡沫となって消えていった命たちのために、最期の一礼を捧げた。

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