砂漠の贈り物と次なる旅
儀式を終えた終が迷宮を後にすると、そこには驚くべき光景が広がっていた。出口の周囲、砂だけだった場所から、青々とした草木が芽吹き、小さなオアシスが誕生していたのだ。軍団の魂が解き放たれた際、その強大な魔力が大地を祝福した結果であった。この死の地は、今や旅人に憩いを与える生の拠点へと生まれ変わっていた。
「……死は、常に破壊を伴うものではありません。正しく整えられた死は、新しい生の苗床となる」
終はオアシスのほとりで、鞄から一冊の古い帳面を取り出した。そこには、現世から数えて旅の途中で見送った者たちの名前と、彼らから託された想いが記されている。ハザムの名を書き加えていると、背後で光の玉が、今度は南の湿地帯の方角を指してせわしなく踊り始めた。
『次は、水の都だよ。でも、そこにあるのは安らぎじゃない。……永遠を望んで腐敗した、人魚たちの悲鳴が聞こえる。早く行かないと、海そのものが死んでしまうよ』
「おやおや。今度は海を渡らねばなりませんか。……葬儀屋の仕事というのは、どうしてこうも出張が多いのでしょうかね。まあ、一〇二年生きてから始まった第二の人生、退屈よりは遥かに結構です」
終は独りごち、現世の林檎のパンに似た旅糧を一口齧ると、新しく生まれたオアシスの水を水筒に満たした。二十歳の瑞々しい身体に、一〇二年の達観を宿した青年は、明け方の涼しい風に背中を押されながら、次なる弔いの地へと歩み出した。その歩みは力強く、迷いは微塵もなかった。
亜神としての力を得ても、彼は決して英雄になろうとはしなかった。ただ、一人の葬儀屋として、誰かの最期を汚さないために旅を続ける。その静かな決意が、砂漠の砂に刻まれる足跡に宿っていた。
彼の葬送の旅は、この世界のすべての未練が晴れるその日まで、終わることはない。




