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百二歳で大往生した葬儀屋、異世界で亜神として二度目の人生を始める〜最強葬儀屋、銀の杖で世界を安らぎの葬送に染め上げる〜  作者: 榎木丈


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砂塵の葬送と水の恵み

「あなたたちは十分に戦いました。……さあ、その重い甲冑を脱ぎ捨て、魂を潤しなさい」


 終は銀の杖を高く掲げ、アルビオンより譲り受けた白銀の宝珠を共鳴させた。極寒の霊峰で得たその力は、灼熱の迷宮において最高の供物くもつへと転じる。

具現化の儀(コンストラクト)忘却の泉(レテ・スプリング)


 迷宮の中央に、こんこんと湧き出る清らかな泉が出現した。それはただの水ではない。魂の渇きを癒やし、永きにわたる困憊こんぱいを洗い流す聖なる水である。数千の骸骨兵たちが、吸い寄せられるように泉へと集まった。彼らが水に触れるたび、乾ききった骨は光に溶け、怨念おんねんに満ちた気配が清らかな霊気へと昇華されていく。


「これより、古代帝国第一軍団、ならびに将軍ハザム殿の合同葬儀を執り行います。……最後の手向けは、あなたたちが愛した砂漠の星空です」


 終が鎮魂の歌を口ずさむと、迷宮の天井が透き通るように消え、そこには満天の星々が輝く砂漠の夜空が広がった。迷宮の閉塞感は消え去り、何千年も太陽に焼かれ続けた者たちは、ついに涼やかな夜の静寂せいじゃくに抱かれた。


 ハザムは最後に泉の水を一口飲み、終に向かって静かに敬礼けいれいした。その姿は、もはや朽ちた骸骨ではなく、誇り高き武人ぶじんの輝きを取り戻していた。

「……葬儀屋よ。……我らの喉を、数千年ぶりに潤してくれたこと、感謝する。……王の元へ、……我らもようやく、参れるのだな……」


 将軍の巨体が、柔らかな砂の粒子となって崩れ、風に舞い上がった。それに続くように、数千の兵士たちの魂が、無数の蛍のような光の粒となって、天空へと昇っていく。迷宮を支配していた殺伐さつばつとした空気は消え、そこにはただ、星の光を反射する清らかな水の音だけが残った。


 終は銀の杖を静かに下ろし、消滅しょうめつしていった軍団のために、最後の一礼を捧げた。

「お疲れ様でした。あなたたちの忠義は、この砂漠の砂一粒一粒に刻まれ、語り継がれることでしょう。死は終わりではなく、次の戦地への凱旋がいせんなのですから」


 砂漠の夜風が迷宮を吹き抜け、主を失った黄金の棺を優しく撫でた。終の心には、彼らがようやく手に入れた眠りの深さが、確かな手応えとして残っていた。

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