千歳の葬送
「……葬儀屋よ。我を、送れるか。我という巨大な存在が、どこにも壊さずに、この世界へと……」
「ええ。それが私の専門です。最高に美しく、壮大な旅立ちを演出いたしましょう」
終は銀の杖を高く掲げ、亜神としての権能を全開にした。
『具現化の儀:星霜の祭壇』
神殿の床から、数万本の純白の睡蓮が噴き出し、巨龍の身体を埋め尽くした。睡蓮の一輪一輪が、アルビオンがかつて守った命たちの輝きを放っている。終は鞄から、この日のために用意していた特別な香――|千年の記憶を呼び覚ます香――を取り出し、火を灯した。
香の煙が黄金の聖域と混ざり合い、天空へと龍の形をした雲を立ち昇らせる。
「これより、白銀の守護龍、アルビオン殿の除籍ならびに神格化の儀を執り行います。……参列者は、この山に住まうすべての命です」
終が鎮魂の歌を口ずさむと、吹雪は止み、雲の隙間から満天の星々が顔を出した。星々の光が巨龍の鱗に反射し、神殿全体が銀河のように輝き始める。アルビオンは、かつてない安らぎの中で、自らの魂が軽くなっていくのを感じていた。
「ああ……。我は、消えるのではない。……この風の中に、光の中に、還るのだな……」
巨龍の巨大な肉体が、端から細かな光の粒子となって崩れ始めた。それは崩壊ではなく、極彩色の胡蝶たちが舞い上がるかのような、神々しい飛散であった。終は銀の杖でリズムを刻み、龍の魂が迷わぬよう、天へと続く光の道を設営した。
「さようなら、偉大なる守護者よ。あなたの物語の最後の一行は、この上なく気高く、美しい」
アルビオンは最後に、一〇二年の知恵を持つ若き葬儀屋に深い敬意を込めた眼差しを向け、そして、完全に光へと溶け込んだ。
巨龍の姿が消えた後、神殿には静寂だけが残った。しかし、その空気はもはや極寒ではなく、新しい春を予感させる柔らかな温もりに満ちていた。




