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葬儀屋の報酬
翌日、森の石像の前には、新しい小さな石碑が建てられた。
「琥珀の守護者、ここに眠る」
セシルは、終に深い礼を捧げた。
「ありがとうございました。父も、あの子も、ようやく本当の意味で安らげたのだと思います」
彼女は、村で採れた最高級の蜂蜜が入った瓶を終に手渡した。
「葬儀の費用としては、あまりに心もとないですが……」
終は、それを宝物のように丁寧に鞄に仕舞い、微笑んだ。
「いいえ。一人の父の想いと、一頭の戦友の忠義を見届けられた。葬儀屋として、これ以上の報酬はありません」
終は、銀の杖を突き、再び歩き出す。
背後で、琥珀の森が風に揺れ、祝福するように鈴の音を響かせた。
二十歳の若々しい脚取りで、百二歳の重みを知る男は、また次の町へ向かう。
鞄の中の蜂蜜が、歩くたびにトプン、と小さく音を立てた。
「……さて。次は、温かいお茶とこの蜂蜜が似合う、穏やかな場所だと良いのですが」
夕暮れに染まる街道を、黒いコートが悠然と進んでいった。




