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琥珀の森の異変
結城 終が辿り着いたのは、一年中、黄金色の葉が雪のように舞い散る「琥珀の森」の麓にある村だった。
木々は陽光を浴びて宝石のように輝き、風が吹くたびに、硬質な葉が触れ合う鈴のような音が響く。一見すれば楽園のような美しさだが、村に足を踏み入れた終が目にしたのは、怯え、肩を寄せ合って暮らす人々の姿だった。
「……お困りのようですね」
終が村の広場で声をかけると、村長を務める初老の女性――セシルが、縋るような思いで彼を迎え入れた。
村の悩みは、森の奥にある「守護の石像」だった。
代々、その村は森の精霊を象徴する石像を祀ることで、魔物から守られてきた。しかし数ヶ月前から、森の守護獣であるはずの巨大な銀狼が、その石像の前に居座り、何者も近づけさせないという。
「あの子は、父が遺した大切な守護獣なんです。でも、今は誰も……私でさえも、近づけば牙を剥く。まるで、何か恐ろしいものに取り憑かれたように」
セシルの瞳には、恐怖と、それ以上に深い悲しみが宿っていた。
終は、自らの銀の杖を静かに見つめた。
「取り憑かれている……。あるいは、何かに『縛られている』のかもしれませんね。葬儀屋として、その正体を見極めに行きましょう」




