これならなんとか……
「ちょっと止まって、あそこいるわ」
先頭を歩いていたミカの一声で俺たちは静止する。
ゴブリンが出没するというエリアまで入ってからは隊列を組み、ゆっくりと進んでいた結果がでた。
「まだ向こうは気づいてないわ。もう少し近づいて先制するわよ。二匹だから私が1匹とダイサクが1匹で片づけるわ」
「ああ、俺が右の奴を倒す。左は頼んだぞ」
気が付かれないように小声で会話する。
さらに後ろを歩いているミレネは後方からの接近を警戒する担当だ。森の中の茂みを利用しているのでそう簡単には見つからないだろう。
「私の合図で行くわよ。ミスってもカバーするから気負わずに行きなさい」
さらに距離をつめ、ミカの合図を待つ。
ゴブリンとの距離は10メートルは切ってるだろうな。流石に気が付かれないかひやひやするがここはミカを信じるだけだ。
俺はいつでも飛び出す準備ができているが、この場合どうやって仕留めるべきだろうか? 剣で斬りかかるのは確定だとして、首を吹き飛ばす程の剣戟を繰り出すってのはやりすぎか? 確実に殺すという面ではありだが、実力としてはおかしいか。まっすぐ突き刺すとかの方が初心者っぽいかな。とりあえず今回はそれでいこう。
「いくわっ!!」
合図とともに駆け出す。
まずは、ミカが足音を抑えながら飛び出し、油断しきっているゴブリンめがけて剣を振った。
それを横目で確認しつつ、俺も負けじともう1匹のゴブリンに剣をつきたてた。
「ギギャーー!!」
ゴブリンの断末魔が響く。
まさか仕留めそこなったかと思ったが、目の前のゴブリンは力なく倒れこんだ。
「ゴブリンが集まってくる前に急いで離れるわよ」
ミカが討伐したことを確認し、すぐさま移動を開始した。
周囲にゴブリンがいないことはミレネが確認済みだ。俺たちはするすると木の間をぬい、その場を後にした。
「……はぁー、緊張したな。二人はこんなのをいつもやってんのかよ」
「相当うまくいったほうよ。下手したらそのまま戦闘になるもの。ダイサクもやるじゃない。正直な話、一発で仕留めるとは思ってなかったわ」
「後ろで見てましたが、ダイサクさんの動きもよかったと思いますよ。迷いなく、ゴブリンを串刺しにしてましたからね。とても初めての討伐クエストとは思えません」
「俺も必死だっただけだよ。もう一度同じことをしろって言われてもできるかどうか……それで、後3匹だよな?」
もうこのまま帰りたい気持ちもあるが、クエストはまだまだ半分も終わっていない。
またゴブリンを探すところから再開だ。
「3匹以上で行動しているゴブリンを狙うのはリスクが大きいので、2匹、1匹と狙うことになりますから実質あと2回同じことをする必要がありますね。根気よく行きましょう」
「私にもっと力があれば、こんなみみっちい真似しなくて済むのよね」
「ダメだよ。慢心がどんな結果をもたらすかわかってるよね? 確実にこなして行かないとダメ」
ミレネの言う通りだな。1回うまくいったからと調子に乗っているようではどこかで足元をすくわれるだろう。二人のことも考えると1匹ずつ確実に討伐していく方が良いに決まってる。
「わかってるわ。それじゃ、また探すわよ」
俺たちは軽く休憩をはさみ、ゴブリン探しを再開した。
「まずいわ……見てあそこ。5匹いるわ。気が付かれないように下がるわよ」
「マジか。ちょっと対応できない数だな。ミレネ、後ろは大丈夫そうか?」
「はい、見る限りでは前方の群れ以外はいないはずです。ゆっくり下がりましょう」
ミカの指さしたほうを俺も確認するが、確かにゴブリンが5匹見えた。
その中の1匹の手には、鈍く光る剣が存在している。
「おい、ミカ。あいつ剣持ってないか?」
「嘘でしょ?……本格的にまずいわよ。あいつはホブゴブリン、普通のゴブリンの上位種で私たちが相手にするには早いモンスターよ。急いで下がるわよ……なんで、こんなところにいるのよ」
表情からもわかるが、明らかにミカが焦っている。先ほどまでは、ただのゴブリンと思っていた相手が上位種だったというだけでここまで変わるものなのか。
俺たちは、ゆっくりと来た方向へ踵を返す。一刻でもあいつから離れたいという焦りが仇となってしまった。
「ギギィ?」
索敵が甘くなってしまっていたのか、単独行動していたゴブリンに見つかってしまった。
「ギャギャーー!!」
こちらをじろりと見ると、叫び声をあげた。
とっさのことに体が反応しない。こいつをすぐに仕留めなければほかに気が付かれることが頭ではわかってはいるのだが、体が動かなかった。
「うそ? くっ、やあっ!!」
いち早く反応したミカが俺とミレネの後ろから飛び出し、前方のゴブリンを斬り倒す。
肩から腰にかけて切り裂いた傷は致命傷だろうが、このゴブリンを仕留めたところで手遅れだった。
「ぎゃぎゃぎゃ」
俺たちの後ろには先ほどまでこちらに気が付いていなかったはずのゴブリンたちが立ちはだかっていた。
「おいおい、マジで言ってんのかよ」




