いざ、テルミルの森へ
「剣を貸してもらえて良かったですね。私もダイサクさんの武器までは気が回ってませんでした。ちょっと反省です」
「どう考えても俺が一番忘れちゃいけないことなんだよな。面目ないとしか言えないわ。次からは気を付ける」
「笑いをこらえるのに必死だったわよ。素手で戦うわけじゃなかったのね。普通自分が使う武器も用意しないで冒険者になりに来るやつがいる? 少しは考えなさいよ」
俺も装備自体は持ってるんだよ。あまりにも高性能過ぎて俺の冒険者人生をイージーモードにしちまうんだよなぁ。俺の意思とは真逆なんだよ。まあ、武器のことを忘れたのは事実だし、何も言い返せないんだけどな。
「採集クエストでもモンスターに遭遇することはあるので気を引き締めていきましょう。基本的に戦闘は避けて、やむを得ない場合はミカちゃんにお願いするね」
都合よく進んでくれればいいんだが……。
何事も起きずに薬草を採集して帰る。凄い簡単なことだ。初めての俺でもできるレベルのクエストを用意してくれているあたり、冒険者ギルドの優しさを感じるな。
「それで、今回の目的地はどこにあるんだ? モリモリの森だっけ?」
「テルミルの森よ。ダイサクは記憶力が人間になれてないわね。人の話は聞くべきよ」
「悪い。どうも知らない単語は頭に入りずらいんだ」
「テルミルの森は東門からでてまっすぐです。距離が近いのも初心者向けのクエストとして扱われている理由の一つですね」
容赦のないツッコみをしてくるミカと優しく教えてくれるミレネ。この両者の違いは何なのだろうか? 俺のミカに対する態度が悪いのか? はたまた単に嫌われているだけなのか? ミカとももう少し仲良くなれるようにしなくちゃな。今のは俺が悪かったからただ反省するだけだな。
「ありがとうミレネ。ミレネの優しさは俺の心を癒してくれるよ。そのまま変わらずにいてくれ」
「はい。私は私のままでいますね」
「ちょっと何気持ち悪いこと言ってんのよ。ミレネに邪な感情を抱いてるんじゃないわよね? 私が許さないわよ」
「ミカはもうちょっとミレネを見習って俺に優しくしてくれ」
「はあ? なんで私がダイサクに優しくしないといけないのよ」
ミカからは速攻拒否されてしまった。
この態度を軟化させるまでの道のりはまだまだ長そうだな。
ミレネの指示に従い歩いていると、ほどなくして町の門が見えてきた。
「ここから出てしまえば後はまっすぐ進むだけです。初心者のうちはテルミルの森にはお世話になると思いますので道は覚えておいてくださいね」
「ああ、わかった」
この門になんか見覚えがあるんだよなぁ。そうだ!! 俺が町へ入ってきた門じゃないか。通りで見覚えがあるわけだよ。それじゃあ、俺たちが目指してる森って俺が転生したときにいた森か。だからあれだけ歩き回ってもモンスターに遭遇しなかったんだな。
「森に着いたらダイサクも警戒するのよ。モンスターが完全に生息していないわけじゃないんだから。戦闘になることも考慮しておくのよ」
「気を引き締めとく。俺も周囲を経過するから」
「先ほども言いましたがモンスターと遭遇した場合は、ミカちゃんが対応してくれるのでダイサクさんは私と一緒に後方支援です。ミカちゃんが遅れを取ることはないと思いますが、万が一の場合はダイサクさんにも頼るかもしれませんのでよろしくお願いします」
「任せてくれ。俺だって冒険者になったんだ。モンスターとの戦闘も経験しておかないとな」
何もしなくていいというのも退屈だな。モンスターと戦うのは冒険者の醍醐味みたいなもんだし、機会があれば俺も戦闘に参加しよう。
ミカがどれくらいの強さかわからないが、既に討伐クエストを受けていることから予想するに、そこそこの実力はあるはずだ。ミレネは後方支援で回復だから、ミカが一人で戦うことになるんだもんな。実力がなければ二人でパーティーなんて成立しないだろう。
「それでは、森へ入りますよ。これから先は気を抜かないようにお願いします」
「わかった。いつモンスターと遭遇してもいいように構えとく」
テルミルの森の目の前まで来た俺たちはそのまま森へと足を踏み入れた。
ついさっき歩き回ってあの一匹以外のモンスターに遭遇していない森なんだ。今回も遭遇することなく終わりそうだな。あ、そういえばあのモンスターについて聞くのを忘れてた。後で時間がある時に二人に聞いてみるか。
「今回探す薬草は木の根元に生えていますので、見つけたらどんどん採集していきましょう。目標の量に到達したら私が声をかけますのでそれまではどんどん集めてくださいね」
「ちなみにどれが薬草かわからないんだが、とりあえず教えてもらってもいいか?」
「もちろんです。うーん……ありました!! ここに生えているものが薬草です。偏に薬草と言ってもたくさん種類があるのですが、私たちが探す薬草は風邪をひいたときなどに飲む薬になります。頑張って探していきましょう」
ミレネに教えてもらった薬草を記憶し、周囲を探してみることにした。モンスターにも注意しながらってのは案外神経を削るな。気合いを入れていこう。




