クエスト受注
「あ、ダイサクさんに言うのを忘れてましたが希望すれば上のランクからスタートできる試験もあるのですよ。メルも伝えてくれれば良かったのですが……どうしますか? 今からでも受けるようお願いしてみますか?」
「いや、やめとく。俺は自分の力でコツコツ上がっていくほうが好みだ。それに、俺なんかが試験を受けても合格できるはずないしな」
本当は余裕で合格してしまうのだろうが、ここで変に実は強いアピールをする必要はまったくない。むしろ、後々面倒なことになるに決まっている。俺はこの力には頼らないって決めてるんだ。
「ミレネも性格悪いわね。ダイサクみたいな奴が試験を受けても意味ないでしょ。惨めな思いするだけよ」
「こればっかりはミカの言う通りだ。俺は実力が伴ってないからな。努力で強くなろうと思う」
「ダイサクさんは真面目ですね。その気持ちがあればきっと強くなれますよ。ですが、今日受注するクエストは採集クエストですからね。はじめから討伐クエストは危険です。私たちもつい最近になってやっと討伐クエストに行き始めたんですから」
妥当なところなんだろうか? 採集クエストと言うと何かを集めてくればいいってのはわかるが……具体的なことはまた後で説明してもらえるか。
「ちょっと、なんで私たちが採集クエストなんて行かないといけないのよ。報酬も少ない上に、三人で分けたりしたら微々たるものになっちゃうわ。私がいるんだから大丈夫よ。討伐クエストに行きましょう。ねぇ、ミレネ」
「ミカちゃんだって、まだ数えるほどしか討伐クエスト行ってないよね? ダイサクさんのカバーまでできるって断言できる? 無理だよね。頑張って薬草を集めれば報酬も上乗せされるから大丈夫だよ」
二人を俺の初クエストのために行きたくもないクエストに連れていくのは流石に気が引けるな。
でも、ミレネは行く気満々だし、後はミカが折れてくれれば解決なんだが……。稼ぎを目的として冒険者をしているのなら当然クエストの報酬も大事になって来る。それが少ないんじゃ行く気が起きないのもわかるんだよなぁ。
「俺のことは気にせずに、行きたいクエストを選んでもらって構わないぞ。俺だって冒険者になったんだ。自分の身くらい自分で守れるって」
「言うじゃない。でもナイスよ。ほら、ミレネ。ダイサクもこう言ってることだし、今日行く予定にしてたゴブリンの討伐クエストに行きましょうよ」
「え? だけど……やっぱり危ないよ。ダイサクさんもモンスターがどれだけ危険な存在かわかってないからそんなことが言えるのですよ。下手を打てば命が危険に晒されるのです」
ミレネが不安のそうな表情を浮かべ俺のほうを見てくる。
そんなに俺は頼りなく見えるのだろうか? それとも、初クエストに討伐クエストは無茶だという単純な心配からくるものなのだろうか? どちらにせよ、俺が危険な目に会うことは100パーセントないって断言できるんだよなぁ。むしろ、実力を隠すのが大変というか……。
「前衛で私が戦うし、もし怪我してもミレネの回復魔法があれば平気よ。よっぽどへっぽこでもない限り、ゴブリン相手に即死するような攻撃をもらうことなんてないわ」
ミレネは回復魔法が使えるのか。見た目は神官とか僧侶みたいだなって思ってたけどまさか正解だったとはな。対してミカは前衛。腰に差してある剣から想像するに、剣士ってところだろう。
「私にも治せない傷はあるんだよ。やっぱり無茶だってぇ……」
ミレネの表情がさらに曇る。
ここまで心配されると過去に何かあったんじゃないかって思ってしまうな。何かミレネが心配になるようなことがあったのかもしれない。
「俺はミレネが心配だって言うんなら採集クエストでもいいんだ。でも、ミカが報酬が少ないって言うから討伐クエストがいいのかなってな」
「ちょっと私が駄々こねてるみたいな言い方しないでよ」
「そういう意図で言ったわけじゃないんだよ。俺も手伝ってもらう身として二人に気を使わせないように考えてるんだ」
「ミカちゃんはどうしても討伐クエストに行きたいの?」
「わかったわよ。今日は採集クエストだろうが何だろうが付き合ってあげるわ」
ここでようやくミカが折れた。ミレネが折れて討伐クエストに行く流れかと思ったが意思が強かったのはミレネのほうだったな。しっかし、俺も報酬は結構死活問題何だよな。今日を乗り切るだけの金が稼げなければ飯抜き、野宿が確定してしまう。流石に何か食べれる程度の金は手に入ると信じているが、俺には予想もできないからな。
「ありがとうミカちゃん。クエストは私たちがよく行っていた薬草の採集クエストにしますね」
クエストボードの前へ移動した俺たちはお目当てのクエストを手に取り、受付へと向かった。
「こうしてクエストを受ければいいんだな。大体わかったよ」
一連の流れが終わり、無事にクエストを受注することができた。
受付でクエストの紙を渡すだけという簡単な作業だったが、これもしっかり覚えておかないと次から困るもんな。
それと、丸腰なのを心配されて誰かが忘れていったという片手剣を貸してもらった。完全に失念していたが、俺の装備は使えなかったんだよな。素手でクエストに挑むことになるところだった。俺は素手で戦う拳闘士じゃないからな。
「それでは、薬草を探しにテルミルの森に行きましょう」
ミレネに先導され、俺たちは冒険者ギルドを後にした。




