9、社長で神様のカケルさん
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
~前話あらすじ~
私の元彼は社長でした。
そして元彼は私と一緒にプロジェクトを成功させたいみたい。
新人の私には無理だと思うのに課長は断らず、私に選択を任せた。
「課長、俺がいるから心配するなとか言ってた?」
急いでカケルさんがいる給湯室へ行くと、カケルさんが洗い物をしながら訊いてきた。
「えっと、上司として見守ると言ってくれました」
「えっ、それだけ? 杏ちゃんにとっては初めての案件なんだよ? 不安なの分かっているはずなのに見守るだけなの?」
「ハル君がいるからでしょうね」
「社長さんね。そうかもね」
カケルさんは、そう言うけど納得はしていない様子だった。
カケルさんは、課長にも私の手助けをしてほしいんだと思う。
それからの私は大忙しだった。
毎日のように会議があり、ハル君の会社の言い分をどこまで受け入れるか等、課長や同僚が意見を出しあっていた。
「なぁ、光さん。社長と知り合いなら、こちらの意見を受け入れてもらえるようにできないか?」
えっ、そんなの公私混同じゃん。
仕事なんだから知り合いっていうのは一旦、忘れてほしい。
「それは光さんに失礼だよ」
課長が静かに言う。
空気がピリつく。
「でも、そうしないと平行線のままですよ?」
「それでも、新人の光さんには俺達が、どんな風に問題を解決するのか見せなければいけないんだ。俺達は光さんの見本にならなければならない」
「そうですよね。俺達が見本にならなければいけないんですよね。光さん、ごめん」
同僚は納得したようで私に謝ると、解決策を探そうとハル君の会社の情報が書いてある資料を読み出した。
私が課長を見ると課長が“ごめん”と口パクで言っていた。
私は首を横に小さく振って“ありがとうございます”と口パクで返した。
「あっ、課長。この会社って、、、」
同僚が解決策を見つけたようで、それから二回目の合同会議で話はまとまった。
良かった。
やっと合同プロジェクトが進むんだ。
「杏。お疲れ」
「ハル君。お疲れ様」
「なぁ、この後、少しだけ付き合ってくれないか?」
「えっ、でも後片付けとかあるのよ」
ハル君に会議終了後に言われたけど、カケルさんに任せっきりになっている後片付けを急いでしたくて断った。
「プロジェクトのことで、杏に手伝ってほしいんだよ」
「それなら課長にお手伝いをして良いか訊いてみるよ」
「課長? なんで?」
「だって上司だもん」
「それなら俺が言ってやるよ」
そしてハル君は課長を見つけると課長の元へ向かう。
「課長さん。杏をお借りしてもよろしいですか?」
「光さんをですか? そうですね、彼女はまだ新人なので一人での行動は認められていないので」
「それは俺がいるので一人ではありませんよ」
「いいえ。社長は会社が違いますよね? 私達の会社のルールなので」
そんなルールあったかな?
「課長さん」
「はい」
「俺は、、、」
ハル君が課長にだけに聞こえるように何か言った。
課長は驚く表情をした後、私を見てきた。
「杏、今日は帰るわ。また連絡するから、その時は付き合ってよ」
そうハル君は言って私の頭を撫でて帰っていった。
私の返事は聞かないの?
昔からハル君は自分勝手なんだから。
「光さん、もしかして社長と一緒に仕事がしたかったかな?」
「えっ、どうしてですか?」
「今回は光さんを社長に任せても大丈夫なのかなって思ったんだよ。仲が良さそうだし」
「ハル、、、彼と一緒にいたら仕事が進まなくなりそうです。彼は要領が良いですが、私がのろまで迷惑をかけちゃうと思うので」
「そう。でも、二人で仕事をするのは許可するから、社長と仕事を一緒にやってみたらいいと思うよ」
「はい、分かりました」
課長が変。
最初はハル君と一緒に仕事はさせないようにしていたのに、今は快く承諾するなんて。
私は課長と仕事がしたいのに。
私は課長に仕事を教わりたいのに。
初めての案件だから。
「社長といえば、カケルさんも社長なんですよね?」
私は休日にカケルさんとデカ盛りチャレンジをしている最中に言った。
今日は天丼のデカ盛りチャレンジ中。
「何? 私って社長に見えない?」
「そんなことはないですよ。社長って自分で考えて行動しなきゃいけないんですよね。私みたいに初めてだからって教わったりしないんですよね?」
「そうね。何? どうしたの? 社長になりたいの?」
「いいえ。私は課長の下でのんびりと仕事を吸収したいので」
「もしかして社長の彼のことを考えてるの?」
カケルさんにはお見通しのようだ。
「ハル君も大変な思いをして今の会社を大きくしたんですよね」
「そうね」
「そんなハル君と一緒に仕事をするのに新人の私でいいのかな?」
「何、言ってんのよ。社長とか新人とか関係ないんじゃないの?」
「えっ」
「一緒に仕事をしたいって思ったから杏ちゃんを誘ったのよ」
「でも、、、」
カケルさんに言われても納得なんてできない。
だって社長と新人じゃ違いすぎるよ。
「ねぇ杏ちゃん。それって私にも思ってるの? 社長とか新人とか」
「カケルさんとは、神様と僕と思ってます」
「何それ?」
「だってカケルさんは神様のように心の広い優しい方で、なんでも完璧ですもん」
「だから私と一緒には働けないの?」
「う~ん。カケルさんといると楽しくて一緒に働きたいとは思いますけど、今のままでも満足なんです」
今のままで、カケルさんと課長と一緒に働くのが楽しい。
でも、今の会社を辞めてカケルさんと一緒に働くとなると環境が変わってしまう。
だから動けない。
答えを出せない。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
~次話予告~
カケルさんが、私は必要だと教えてくれた。
ある日、ハル君に誘われたパーティー会場で急遽の代打中のカケルさんに会う。




