10、急遽、代打のカケルさん
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
~前話あらすじ~
私は課長に仕事を教わりたいのに、課長は元彼のハル君に任せてもいいと思ってる?
新人と社長じゃ違いすぎる。
カケルさんに励まされても私に自信なんて持てない。
「ダメよ」
「えっ、カケルさん?」
「そんなの許さないんだからね」
「カケルさん、どうしたんですか?」
「私は杏ちゃんを認めてるの。一緒に働きたいのは、杏ちゃんなら私と一緒に女性を助けてくれると思ったからなの。だから自信を持っていいのよ」
カケルさんは必死に私に伝える。
私への想いを。
「私、自信なんて持てません。カケルさんだってハル君だって、私から見たら雲の上の人で。私と住む世界が違うんだと思うんです」
「同じよ。今だって一緒にデカ盛りチャレンジしてるでしょう? 私は雲の上の人なんかじゃないわ。ちゃんと地に足をつけてる杏ちゃんと同じ人間よ」
カケルさんが私に対してお世辞を言っているようには見えない。
本心なんだ。
「カケルさ、、、」
「私だって、杏ちゃんみたいに新人の時があったわよ。怖い思いもしたわよ。後悔した時もあったわよ。失敗した時だってあったわよ。だからこそ、今の私がいるの」
「カケルさ、、、」
「心配しないで。杏ちゃんは皆に頼られる立派な人になるわ」
「もう! カケルさん!」
カケルさんのマシンガントークが終わり、やっと話せるようになった私は強く言う。
「杏ちゃん? 怒ってるの?」
「はい。だってカケルさんが私に言わせてくれなかったんですもん」
「えっ、だって」
「カケルさん! 私はカケルさんの言葉を信じます。もう少し自信を持とうと思います」
「うん。そんな杏ちゃんなら残りのデカ盛り天丼も全部、食べられるわよね?」
「それは任せてください」
私は食べるスピードをあげた。
大丈夫。
自信を持てばハル君との案件もうまくいくはず。
『杏、明日ヒマ?』
カケルさんとのデカ盛り天丼チャレンジをしたその日の夜にハル君からメールがきた。
『日曜日だから仕事はお休みだけど。何? 仕事の話?』
『いいや。ちょっとだけ付き合って』
『何に付き合えばいいのよ?』
『ちょっとだから。杏って食べるの好きだよね?』
『うん』
『好きなだけ食べていいからさ』
『クレープがあるなら行く』
『あるよ。それに高級チョコレートもある』
『それなら行く』
そして私はハル君の甘い誘惑に負けた。
だって私の大好きなクレープとチョコレートだよ。
ハル君は私の好みを知っているから困るよ。
そして次の日、私はハル君の甘い誘惑に負けたことを後悔した。
だって、、、。
「ハル君、これは何?」
「ちょっとしたパーティーだよ」
「何がちょっとしたよ。ちゃんとドレスコードがあるのに? そんなパーティーなんて私は初めてよ」
「そんなに怒るなよ。せっかく綺麗なドレスを着て可愛いんだからさ」
ハル君は私をなだめる様に頭を撫でる。
ハル君が用意してくれたドレスは淡いピンクで、キラキラ光る色んな色の宝石みたいに見える石が散りばめられている。
ハル君は普通のグレーのスーツに見えるけど、何か高級感がある。
ハル君が社長に見えてきたかも。
昼間からワインやお酒が並ぶ。
そして肉料理にパスタやお寿司など美味しそうな物も並ぶ。
そして私の大好きなクレープとチョコレートが輝いて見える。
「ハル君、食べていいの?」
「いいよ。でも後で少しだけ俺に付き合ってよ」
「うん」
私は食べ物にしか目がいかない。
ハル君が言ったことなんて、なんとなくで聞いていた。
食べる物、全てが美味しい。
幸せすぎる。
カケルさんにも食べさせてあげたいな。
「あれ? 杏ちゃん?」
えっ、今、カケルさんの声が聞こえたような気がする。
「杏ちゃん? その食べっぷりは杏ちゃんよね?」
やっぱりカケルさんだ。
私が振り向くとカケルさんがいた。
カケルさんも、パーティーにお呼ばれしたのかな?
「カケルさん、どうしてここに?」
「働いているのよ」
「働く? カケルさん仕事の掛け持ちをしているんですか?」
「今回は急遽、代打よ」
カケルさんは色んな職種の代打ができるんだ。
「杏ちゃん。あそこにいるイケメンでキラキラしている男性は要注意よ」
「どうしてですか?」
「あの人、女性好きなのよ。あの顔だからモテると思うんだけどね、人の物を奪うのが好きみたいよ」
「分かりました。注意します」
「社長と一緒にいるのが一番安全よ」
「あっ、ハル君と来てるの知ってたんですか?」
「ここは社長の集まりだから分かるわよ」
カケルさんはウインクをして仕事へ戻っていった。
私は気を付けようと思いながら食べ物の物色を続ける。
「ねぇ、キミって、あの社長と一緒に来たよね?」
私は声をかけられ振り向くと、カケルさんが言っていたイケメンの女性好きの男性がニコニコしながら私を見た後、視線を遠くにいるハル君に向ける。
「あっ、はい」
私はハル君を見てから言った。
ハル君の周りには女性が集まっている。
ハル君は高身長だし顔はベビーフェイスでイケメンだし、そりゃあ女性がほっとかないかな?
「彼は忙しい様だから俺と、ちょっと話をしない?」
「私は食事のために来たので大丈夫です」
「えっ、食事? そうだね。さっきから食べ物しか見ていないようだし」
クスクスと笑われた。
でも、いいもん。
好きな物をお腹いっぱい食べられるから。
「少しお酒でも飲んで休憩しようよ」
男性は私の背中を押し、お酒が置いてあるブースへ行こうとする。
私はお酒になんか興味はないから、動きたくはないのに、男性の強い力で押すから足が勝手に動く。
どうしよう。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
~次話予告~
私が男性に声をかけられて困っていたのを助けてくれたハル君。
そしてハル君と昔の思い出話から課長の話になり、、、。




